ことばと学びと学校図書館etc.をめぐる足立正治の気まぐれなブログ

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図書館にクレームをつけよう!

2005年11月01日 | 知のアフォーダンス

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 私が管理人の一人をつとめる学校図書館メーリングリスト(sl-shock)の有志が企画・実施して「学校図書館ジャムセッション」を何度か開いているが、その記念すべき第1回のテーマが「つかいたおすねん 図書館! 情報技術入門」(2002年8月 4日、千里国際学園中高等学校)だった。ということもあって、書店で『図書館を使い倒す!』(千野信浩著、新潮新書140、2005/10/20)という新刊を見つけたとき、まず、そのタイトルに近親感を持った。ネットではできない資料探しの「技」と「コツ」、という副題にも魅かれた。じつは、私は中学時代にふとしたきっかけで調べもののために図書館を使うことを覚えて以来、その魅力に取り付かれてきた。図書館に身を置いて、次々に目に飛び込んでくるさまざまな資料を追っていくと、不思議なことに漠然としていた頭の中がしだいにはっきりしてきて、考えの輪郭が明らかになり、広く深く調べる道筋が見えてくるものだ。だから、カバーの裏に書かれている次の一節にも共感を覚えた。

「ネットにはありませんでした」。この程度で調べものをしたつもりになってはいないだろうか? 北朝鮮の詳細な経済事情は? 非公開の行政資料を手に入れるには? 地元の近代化に尽くした偉人は? GoogleやYahoo!ではけっして探せない価値ある資料が眠っているのが、じつは図書館なのだ。

 さらに、この本の著者が図書館の専門職員ではなく、「週間ダイヤモンド」記者で「資料探しに精通する」利用者の立場から書いたものだということを知って、なおさら、この人の資料探しの極意を知りたいものだと思った。

図書館を使い倒す!―ネットではできない資料探しの「技」と「コツ」新潮社このアイテムの詳細を見る



 もとより共感して手にした本だから、あっという間に読み終えた。私にとって内容がとくに目新しかったわけではない。しかし、著者の職業柄からくる調べるテーマの面白さと資料の所在を突き止めるためのテクニック、そして、なによりも資料探しを楽しんでいる著者の文体に自分の経験を重ね合わせてワクワクしながら楽しく読めた。そして、改めて、このような技法は誰もが身につけておくべきことではないかと思った。大学ですべての学生に教えておくべき、いや、小・中・高等学校のときから学習を通じて自然に身につけておくべきだろう。

 図書館の活用を勧め、情報収集の方法を解説した本は比較的多い。しかし、本書には他の類書と決定的に違うところがある。最後まで読んだ読者は、それが図書館の批判(批評)を勧めていることに気付く。終章では、基本を忘れた図書館(員)の対応にクレームをつけることを読者に勧め、さらに「おわりに」では、追い討ちをかけるように「公共図書館はベストセラーに予算を使わないでほしい」と辛らつな注文をつけている。著者の論点は的確である。「重要なことは、貴重な文献がどんどん消えているという実態である。あるいは有益な情報が専門家による発見・分類をされないまま埋もれている現状である。次の世代に時代を正確に伝える義務があり、その責務を担うのが図書館であるならば、そこにこそカネも人も投入されるべきである。」「図書館に、ベストセラーは貸出用と保存用の二冊でじゅうぶんではないか。」尻馬に乗っていうなら、私も、国民の知る自由を保障する「図書館の自由」という理念を、ベストセラーを大量に購入するための言い訳に使ってもらいたくないと思う。

 最初に紹介した第一回目のジャムセッション「つかいたおすねん 図書館!」で会場を引き受けてくれた千里国際学園中高等学校図書館の司書教諭青山比呂乃さんは「皆さんで資料評価、コレクション評価をしてもらいたい」と語った。図書館をよりよく活用し、より活用しやすい図書館であってほしいと思うなら、利用者が図書館を積極的に批評し、改善を要望することも、また必要だろう。

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