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昨日届いた『図書館雑誌』3月号の「窓」欄にビジネス支援図書館の活動にかかわっている豊田恭子さんが「人生を応援する施設」と題する美しい文章を寄せておられる。
50年以上も前の話だが、私は中学校のときに放送部と社会科クラブに属していて、郷土の伝説を調べて放送劇を作って演じるというプロジェクトを立て、そのとき先生の助言で生まれて初めて公共図書館を使ってリサーチを行なった。それが病みつきになって、その後も自分の好奇心の赴くままに天文学や物理学などの分野で具体的なテーマを決めて親しい友人と競いあってリサーチをした。この経験を通して私は、図書館利用の醍醐味はリサーチにあることを知った。以後、今も私はリサーチするために図書館を訪れ、リサーチしながら考える。というよりリサーチは考える行為そのものである。豊田さんがいうように、「ありとあらゆる情報を収集しながら、方向性を見いだそうとすることもある。人に話しながら、自分の考えがどこにたどり着くのかを見極めようとすることもある。思考の奥深くにひとり身を沈ませて、混沌としたアイディアが確信に結晶するのを静かに待つこともある」のである。
リサーチし、考えるという行為を通して私たちの知が活性化されるためには、図書館は「知のアフォーダンス」に満ちている必要がある。半田智久氏(『知能環境論―頭脳を超えて知の泉へ』NTT出版、1996)によれば「学習者にとって豊かで理想的な知のアフォーダンスとは、個々の学習者が必要としているものが常に十分に広く自由に開放されていて、そこでの活動に心地よい刺激と触発を受け、そこから先に知的な冒険をしてゆこうと動機づけられること、そしてそのときそれに応じられる環境があることである。」(p.216)豊田さんの言葉を借りれば、「図書館は、その施設があるからこそ人々を魅了する。そこには、古今東西の知見が背表紙となって並び、情報検索端末があり、ゆったりとしたソファーがあり、資料探しの手伝いをしてくれる図書館員がいる。書棚の間を徘徊しながら、図書館員と会話を交わしながら、人は自分だけの「解」探しをする。孤独なはずの作業が、図書館という空気に包まれることで、悲壮感から免れる」のである。
豊田さんは、図書館によるビジネス支援の第一の意味は、誰かに教えてもらえるような「解」のない問題を抱えて、ひとり悩み、苦しみ抜いて結論を出さなければならない「孤独な戦いを強いられている世の仕事人たちに、貴方たちは一人じゃない、というメッセージを送ることにある」という。図書館に救われるのは、もちろん「世の仕事人」にかぎらない。「自殺したくなったら、図書館に行こう」(虫賀宗博、『世界』2005年8月号)といえる図書館の秘密がそこにある。公共図書館であっても学校図書館であっても、図書館に一歩足を踏み込んだとたんに、建物や設備だけでなく経営と運営においても、そのことを明確に意識してデザインされているということが感じられる、そんな図書館が増えてほしいと切に願う。
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