必要があって 「英雄伝説 HARIMAO」という昔の拙著を取り寄せようとAmazonを検索したら文庫本なのに、2万5千円の値がついていて
仰天した。
招待枠でアカデミー賞の授賞式に行った時、ハリウッドのホテルの一室で書き始めた作品であるが、たをやめぶりの作品が多い私には唯一の
ますらおぶりの小説で朝日新聞の書評欄で珍しく激賞を受け、松竹で映画化された。ざっと読み返してみたのだが、時間がない中の執筆だったにもかかわらず
文章も構成もみずみずしく張りがあり、これは若さゆえの特権であったかと感慨を抱いた。推敲もなくすっ飛ばして書いたのが、かえって勢いがあり
おそらく集中度もピークだった頃。自分で書いたような気がせず、これは要するに「降りて来て」書かせてもらっている恩寵の中にあったのだろう。まれに
そういう作品がある。自著を買いためておく習慣がないために、いくつかの本が稀覯本になってしまっているらしい。それでも手に入ればいいほうで いくつかの本はもう
永遠に手に入らない。 10冊程度は手元に置いて置くのだったと悔やんでも遅い。「英雄伝説」に関しては読んで頂きたい人が、いくたりかいらっしゃるのだが。それでも電波の空間に消え果ててしまうドラマと異なり活字は残る。この年令となっては墓碑銘に等しい。