井沢満ブログ

後進に伝えたい技術論もないわけではなく、「井沢満の脚本講座」をたまに、後はのんびりよしなしごとを綴って行きます。

映画で考えた日本人の清潔感

2019年02月17日 | 映画

しばらく、のんきな暮らしなので出来るだけ映画を観ておこうと
思っていたのだが、気に入って行きつけの映画館がメインテナンスで
クローズしたまま、いつまでも開かない。

初めてTOHOシネマズのシャンテに出かけた。日比谷である。
演物は「女王陛下のお気に入り」で、たいそう面白かった。
観ながら、こりゃあ英国宮廷版「大奥」だなぁと
思ったのだが帰りに見たらポスターにもそのように
刷られていた。

が、日本の大奥ものより品格を備え重厚感があり、
心理劇としての深い側面もあり、傑作の部類であろう。
品格と言ってもダーティワードが飛び交い、おつに澄ました
上辺の品の良さではない。

冒頭、「ラ・ラ・ランド」の女優さんが馬車から突き落とされ
泥道に這いつくばるのだが、それが糞尿にまみれた汚泥の
道である。

といえば、日本が併合する前の李氏朝鮮時代の道を
想起する人もいるだろう。
18世紀のイギリスも似たりよったりであった。
違うのはイギリスのほうは、一方に宮廷文化が
きらびやかに花開いていたことで、ファッションも華美を競い、
男も美しくあらねばならぬということで化粧をし、
華やかな衣装をまとい、だが朝鮮では染料もなく、
白一色であった。馬車もなく、両班という貴族は
石炭を運ぶような二輪車での移動である。まともな車輪を作る
技術がなかった。

日本では江戸中期から後期にあたるが、無論厠はあった。
内厠は富裕層にのみであるが、どんな長屋暮らしの者たちも、
屋外に厠はあったのだ。
ロンドンもソウルも、糞尿で道と河が悪臭を
放っている頃、日本人が清潔を保ち入浴を好んでいたのは、
精進潔斎に見られる、不浄を厭う特有の神道的感性かも
しれない。

衣装もむろんカラフルで、とりわけ歌舞伎における衣装は、
色彩の意想外の組み合わせが現代に通じるアーティスティックな
感性で、民間でも茶とグレーそれぞれの明度に応じて、
幾通りもの名称が与えられていた。
もともと色彩感覚に秀で、美意識も高い民族なのだと思われる。

我が国びいきも度が過ぎるとみっともないが、以上は
単に事実を述べたまでのことである。
この文化を失いたくない、後世に能う限り伝えたく
思うものである。

 


3 コメント

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TOHOシネマズ (ももりん)
2019-02-18 20:10:17
こんばんは。
「女王陛下のお気に入り」面白そうですね!
週末に見に行こうと思います。

先月日本橋でボヘミアンラプソディーの胸アツを見たのですが、直後にメンテナンス中になってしまったので新宿で2回目の胸アツを見ました。

まだ熱気が冷めやらずです(笑)
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ももりんさん (井沢満)
2019-02-18 23:06:20
ボヘミアンは、凄過ぎですね、いまだ複数館上演です。
アカデミー賞ってもう決まったんでしたっけ。
もし受賞したら再燃しそうです。
いい映画は、自分の人生の一部に溶け込んでしまいますね。
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胸アツ行きたい💛 (ソマリ)
2019-02-19 12:57:43
フランスも糞尿にまみれた汚泥の道だったそうですね。
ベルサイユでさえ物陰に隠れて排尿していたとか。
お風呂もシャワーもほとんど使わないので、臭いを誤魔化す為に香水が愛用され、ハイヒールも汚泥の道を、ドレスの裾を汚さないために発明?されたのだとか。

日本人の綺麗好きは世界でも突出していたのではないでしょうか?
平安時代でも湯あみの場面や、髪の毛を洗った後、重くて乾くまで横になっていたという場面を描いていますし。

話は変わりますが、先生の大河ドラマ、平安時代か飛鳥時代で拝見したいです。特に天智天皇・天武天皇・額田王の三角関係?興味深いです。

前に仰られていた紫式部と清少納言の丁丁発止もぜひ歴史ファンタジーで!
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