石畳に響く浅沓(あさぐつ)の音に振り返れば、衣冠束帯に身を包んだ天皇陛下からの勅使の一行で、彼らが担ぐ御幣物(供物)を収めたつづらは、金の菊の御紋を浮かべた絹に覆われていて、時間が一気に平安朝に戻った思いで、私の中にある日本人の血が何かに感応してざわめき立つようであった。
昨日靖国神社秋の例大祭にお招きをいただき、初めて参上した。数日前の台風に拭き清められてまだ大気は清浄で、秋の日差しが美しい。
それにしても、衣冠束帯は何と日本男子に映えるのだろう。皆が皆凛々しい美男子に見える。よく見れば違うのだけれど、と余計なことは言わなくていいのだが。
粛々と歩む神官たちの姿に、伊勢神宮の式年遷宮のさまは、さこそと忍ばれた。もろもろ毀れつつある日本だが、神道の儀式、約束事ある限り、それが守られる限り日本は残ると思った。
皇室の弥栄と、その内なる神事の守られて存続することを祈念する。
帰り、遊就館に立ち寄りここを訪れ、国へ親へあるいは幼き妹への思いが綴られた遺書を目にするといつも涙を禁じ得ない。その日は西洋人の姿が多かった。中国語も耳にした。
妙な話だが、儀式に参列の間、ここが爆破される可能性のあることが頭をよぎっていた。
しかし何事も無く無事、不穏の徒も見かけなかった。
「なんで日本人が参るのをとかく言われなくてはならないのだか」と行きのタクシーの運転手が嘆いた。安倍さんの不参内のことである。
「戦犯が祀られてるって言ったってねえ。負けたからこそで、勝ってれば戦犯じゃない。戦争すりゃあどの国のも戦犯はいる。なんで日本だけが」
と、普通一般の日本人の思いはこうだろう。靖国の中で、平和が祈念されていることなど中韓の彼らは知りもしないし、知ろうともしない。
いずれどの国に何を言われようと、決然として首相が参拝しなければならない時はあるだろう。言われたところで結局何がどう変わるというものでも実は無いと思う。短期、かの国々がヒステリックに何か喚き立て、それに付随する行動があるかもしれぬが、永遠に続くわけでもない。世界に幼稚を示すだけのことである。安倍さんも長期政権を目指しての安全運転へ早々とギアを入れ替え、物足りず思う人もたくさんいるだろうが、私も心情的には時々そう思う。
靖国だけには実のところいらして欲しかった。諸般の事情は汲み取りながら、無理に来る時期ではないと表には言いつつ、しかし安倍さんの今後の政治における精神性の基幹であろうから、そこは守りぬいて欲しかった、と実は思う。それは韓国や中国の理不尽な言いがかりをいかに、はねつける気概を見せるかどうかということにもかかって来るのだから。
その気概にややもすると首を傾げることもあるゆえに、今この時期に無理に行かなくてよいと言いつつ、矛盾したことを言ってしまった。
自分では、うまく口に出せないことを表現してくださっている感じです。
私も、平均寿命の半ばを少し(?) 過ぎますと、若いときには考えも及ばなかった想いを理解することができるようになってしまいました。
安倍総理の外交はスマートだと思います。
国際社会での日本人の保護などの点を考えてみても、やはり、自分の気持ちとは違うこともおやりにならなければならないのだろうと、それは頭では理解しているつもりなのですが。
国内向けに、もう少し踏み込んで、なにかしらの言動と言いますか、メッセージのようなものが欲しかったなと、個人的には思っています。
>国内向けに、もう少し踏み込んで、なにかしらの言動と言いますか
そうですねえ・・・・。竹島の日国家主催であるとか、他威勢のいいアドバルーン魅せられて熱狂的に支持した人々が大勢いますのでね(私は、実はこんなものだろうと、醒めていましたが)、彼らのためにも納得できる何か発信が必要であったかもしれません。
ただ靖国参拝だけは、なさらぬだろうと九割九分思いつつも、万一を僅かに期待してはいました。
橋下さんが急速に人気を集めていた当時、阿倍さんを評価しているというので、注目を浴び、
そこから今の状況(総理)になったと思っています。
「靖国に参拝しなかったことを後悔している」という言葉に、どれほどの国民が、期待を寄せていたか。
それを思うと、今回の選択は残念です。
余談ですが、
先日着物で銀座を歩いていたら、中国の方から撮影をと申し出られました。
中国や韓国の旅行客、割と着物に関心が高いですね、よく頼まれます。
スマホで隠し撮りしていた人もいました・苦笑
かの国で、私なんぞの写真を見ながら、ご近所さんや親せきの方たちと、どんな話をしているのだろうと想像することも少し楽しいのですが、
このごろ銀座を歩くと、日本語で話している人のほうが珍しい。
中国人もかなり洗練されてきています。
私たちなぞが想像もつかないようなセレブかしら、と友人と話し合ったことでした。
安倍さんの正確な言葉は、
「英霊に対し、手を合わせ、尊崇の念を表し、ご冥福をお祈りする。これは、私は当然のことであろうと」
「第1次安倍政権の任期中に参拝できなかったことは、痛恨の極みである。私が申し上げた気持ちは、今も全く変っていない」
この言葉を引いて「痛恨の極み」だとは言っているが、行くとは明言していない、と擁護している人がいました。
まあそうだけど・・・・と苦笑したのですが。
真榊料を出しただけで火病を起こされると、
それくらいならいっそ、行ってれば、と
感情的にもなり・・・・笑
安倍さん自身は韓国の顕忠院を参拝しているだけに。自衛隊の訓練生もお参りしていますね。
靖国神社の例大祭のあの清明さをリアルに知っているだけに、残念な思いが募ります。
>中国人もかなり洗練されてきています。
上流はそうでしょう。
靖国でも中国語のグループを見かけ、内心
やや身構えたのですが、穏やかでした。
韓国もそうですが、国の嘘にひきずられない知識層は僅かながら、増えて来ているかもしれません。
今回の伊勢神宮の遷宮、次の20年後には、できるかどうか、危うい状況とのこと。
人がいない、材料がない。
20年に一度の遷宮で食べていくことはできないので、
その点が一番の問題だと。
すでに日本では手が足りず、中国産のものも一部ですが、使用されたそうです。
和裁をしている方が、「最近、糸が細くなったのよ」とおっしゃってましたが、染がどうの、折がどうのという前に、おかいこさんがいない。
国が支援することも不可能な状況なので、
(文化庁に頑張ってほしいところですが)寄付に頼ったけれども、赤字があるので、引き続き寄付を募っているそうです。
私もささやかですが、寄付をしようと思いました。
国民ひとりひとりの、意識がこの国を支えるのだと、いまさらながら自覚した次第です。
またそのこととは別ですが、
水面下で、国宝級のお茶器、そのほかの品物がひそかに海外に流れているのだそうです。
もう、日本ではこれらの宝物を持ちきるだけの人がいなくなったのでしょうね。
かつては、いっぱしの大人になれば、男性でも茶道を習うのはたしなみであり、教養でしたけど、そのようなゆとりもない世の中になってしまったことが、
寂しいと思います。
宮中で皇后陛下がおやりになられているのですが、宮中内の伝統さえほそぼそとして来ていて、次代につながるのやら、皇后陛下も心細い思いを口になさっていますね。