たかたかのトレッキング

駆け足登山は卒業、これからは一日で登れる山を二日かけ自然と語らいながら自由気ままに登りたい。

思い出に残る山(25)乗鞍岳 (3026.3)

2018年02月28日 | 心に残る思い出の山
H6年10月23日

国民休暇村を過ぎると、ここから人家は途絶え

乗鞍スカイラインは急速に高度を上げて漆黒の闇に突入していく

疎らに点在していた町の灯りも次第に一塊となって眼下に見え隠れを始めた


やがてハイマツ帯の中を走るようになって辺りの変化に「おや?」と思った

山の上部が月明かりに白く光りハイマツの下の土が妙に白っぽい

「雪じゃない?」「まさか」そんな会話を交わしながら窓ガラスに顔を

摺りつける様にして外を見たが火山礫なんかじゃない

車を停め道路の端を照らすとやはり雪だった

車を発進させようとすると少しスリップした様である

アスファルトの道路はどうやら凍結しているらしい

4駆に切り替え200mほど進むとカーブを過ぎた所で先行者が立ち往生していたので

これ以上は無理と思い、ちょうど脇にテント二張りしてある空地が在ったので

其処へ停めて夜を明かす事にした

車止めの石を探して社外に出た途端、あまりの寒さに身が縮んだ

外は強風が吹き荒れテントが激しく音を立てている

シュラフに潜ったが中々寝つけず体を逆にして広大な空を眺めた

月明かりが強すぎて八ヶ岳の林道から仰いだ時の様な感動的な星空は無かったが

それでも輝度は家で見る数倍の強さだった


5時40分、ふと目が覚め外を見ると日の出前のオレンジ色の世界に

雲海が広がりそれを突き破って勇壮な山岳が群れている

「スゴイ」と思わず出た言葉に雄さんも目を覚ました

外は相変わらず寒風が吹きすさび、ひどく寒い

その寒さにも関わらず既にカメラマン達は、あちこちに大型カメラを構え

劇的な一瞬を待っている

私達も車の窓を開けシュラフにくるまって、その瞬間を舞った


次第に白さが増してくる

生唾を飲みこむ程の緊張が続く

やがて閃光が放たれると燃えたぎる固まりが輪郭を歪めながら

徐々にその姿を現し始める

凍り付いたハイマツは増々輝きを増し朝の光は深く山肌に差し込んで

澄み切った大気の中に全てが目覚め始めた

「腐っても鯛とはこの事か、成るほど・・」と雄さんが呟いていた

開発の手が山上近くまで及んでいる乗鞍は腐りかけてしまっているのだ

しかし、この一瞬、そして展望、スケールの大きさ、標高は

やはり一級の山という事なのだろう

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

勾配の増す林道を走り2700m地点の畳平に車を停めた

食堂や土産屋は店仕舞いだろうか、ヒッソリとしている


此処まで車で来られる事も有り畳平は観光地化してしまい

折角の一万尺の空気も何処となく汚れている様に感じられるのは私だけだろうか

特にトイレのモラルの無さには悲しくなってしまう程だ

生理現象はどうにもならずガードを乗り越えてドアを開けると

此処に記すのも恥ずかしい状態・・・○○○が山になっていたのだ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「さて、そろそろ引き上げるか」

「エッ? 登らないの?」

雄さんは「本当に登るのか?」という顔をした


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コメント (12)    この記事についてブログを書く
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12 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
乗鞍 (イケリン)
2018-02-28 20:04:22
たかさん こんばんは。
やっと私も行ったことがある山が出て来ました。
まだ、自家用車で登ることができた頃ですから、ずいぶん昔のことです。2〜3回行っていると思います。
シーズンは真夏と紅葉の季節でしたから9月下旬か10月初旬だったと思います。
残念ながらご来光は見ることができませんでした。たかさんの写真でご来光の素晴らしさを垣間見た気がします。

ご主人がおっしゃるように畳平あたりは乗鞍銀座の様相でしたね。今も変わらないのでしょうけれどね。
スカイラインは平湯から登りますので、たかさんが国民休暇村から登られた道は、多分乗鞍エコーラインと称しているの
ではないかと思います。紅葉の素晴らしい道です。当時はもちろん通り抜けもできましたけれどね。

続きを楽しみにしています (Blue Wing Olive)
2018-02-28 20:53:14
私たち高山市民にとって、乗鞍岳は特別な山です。
子供の頃、家族で仲良くお出かけなんていう雰囲気の家庭では無かったのですが、夏休みのある日、父と弟の3人で、乗鞍に行ったことがあります。畳平から登って眺めたその時の御来光のことを良く憶えています。
こんばんは、 (takezii)
2018-02-28 22:40:26
24年前、まだ 畳平まで マイカー乗り入れが出来た時代でしたか。
10月23日と言えば 3000m級の山は もう 冬山、エネルギーが有り余っておられたんですね。
「エッ!登るの?」
登られたんですか。
乗鞍でご来光を迎えたこと 1度も無くて 今頃 残念がっております。
大型カメラ無くても 素晴らしい景観、分ります。
なにもかも 想い出になりますね。
お早うございます (延岡の山歩人K)
2018-03-01 07:41:59
自分もそう思います
観光のための開発で 自然が犠牲になるのは
やめて欲しいです

山ほどの
ウンが向いてきたようですね\(^o^)/

イケリンさん、こんにちわ (たか)
2018-03-01 12:28:56
同じ山を同じ季節に行かれたのですねぇ。
今は尾瀬と同じ様に車の乗り入れが禁止されてしまいましたが
それでも日本のアルプスの中で誰もが手の届く一万尺と言ったら乗鞍でしょうか。
今、アルバムを見返してみましたら、イケリンさん仰る通り乗鞍エコーラインでした。
乗鞍銀座・・・そう言えば下山中、スカートで登って来た若い女性に仰天した事を思い出しました。
Blue Wing Oliveさん、こんにちわ (たか)
2018-03-01 12:59:28
私達が浅間山が特別な山で有る様に
高山市民にとっては幼い頃から親しみを込めて見つめてきたのが乗鞍なのですね。
そうした特別な山に見守られて生活出来る事の幸せは何にも代えがたいものですよね。
私が未だに果たす事の出来ない一つに「乗鞍山麓五色ヶ原ウォーク」が有ります。
事前の入山予約が必要と言う事に、二の足を踏んでしまっているのです。
雲海に昇る朝日 (越後美人)
2018-03-01 14:23:15
この光景はなんと形容したらよいのか、言葉にならない感動ですね。
高い山の頂きだけが見えているのも不思議な光景です。
何だか神々になった気分がします。

そんな神々しさも、汚れたトイレでいっぺんに現実に引き戻されてしまいますね。
水が流れなくなったのでしょうか・・・
私も万里の長城で似たような経験をしました。
takeziiさん、こんにちわ (たか)
2018-03-01 14:35:34
三月の声を聞いた途端、春一番の襲来でした。これで漸く待ちわびた春がやって来たと言う事でしょうか。
・2002年にマイカー乗り入れが禁止されたんでしたよね(?) ですからそれは私達が行った9年後という事になりますか。
ただその規制が敷かれた年は有料も解除された時でも有り漸く無料になったとマイカー族が喜んだのも束の間の時でした。これは少々汚すぎるやり方ですよね。
私の記録に通行料を支払った事が書かれておりませんので夜間に入ったので免れたのか支払を求められたのか今となっては記憶から消えておりますが
幾ら環境保護とは言えツアーの大型バスや公共のバスが頻繁に往復する中、果たしてどうなのだろうと言う
疑問も拭いきれません。
尾瀬も然りで群馬縁側の規制にも納得できないものが有りますよね。
延岡の山歩人Kさん、こんにちわ (たか)
2018-03-01 16:41:49
労せずアルプスが登山未経験者でも直に触れられるのが乗鞍岳ですね。 きっと私が初めて穂高の岩稜を目にした時の感動と同じ気落ちでしょうから
こうした誰でも来られるアルプスが日本に一つくらい有っても決して悪いとは思いませんが日本人のモラルは西洋人に比べると
かなり劣っている様な気がしてなりません。 韓国ですら踏み入ってはならない場所に一歩踏み込めば叱りはしませんが行き交う登山者が注意を促します。
日本人がどうかと言うと鏡池の様な御花畑が広がる場所が在ればズカズカと踏み込んで写真を撮り合うと言う余りにも常識のない一部の人達を偶に見かけます。
開発で汚された「腐っても鯛」の山が嘗て登山者の聖域だった乗鞍・・・もう今となっては戻す事も出来ませんね。
>山ほどのウンが向いて来た様ですね
    \(^o^)/ ケイさん 座布団二枚!
越後美人さん、こんにちわ (たか)
2018-03-01 17:11:40
凄いでしょう! これが標高2700mに有る駐車場から眺めた景色です。
雲海を初めて見た時(榛名の相馬山)私は大感激でした。次に見たのが北アの燕岳、その時は相馬山とは比べものにならない程の密度の濃さで
その遥か彼方にこれから目指す槍ヶ岳が見えた時にはテントをたたむのも忘れてしばし呆然と佇んでしまった程でした。
こんな美しく、そして澄んだ空気の中で、あの凄さです。人間の生理現象は抑えられるものでは有りませんから、この問題は一番に考えて貰わないと・・ねぇ。
あの事は一生忘れられない負の思い出となりました。今はどうなっているのでしょう!

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