愛犬の予期せぬ死ゆえ、ペットロスに打ちひしがれた夫婦。互いの心がすれ違い、ふたりの亀裂はしだいに大きくなっていった。そんなある晩、男は月明かりの中で仔犬の鳴く声を聞いた…(グッドバイ)、他四編。犬との出会いや絆をリリカルに描いた、希望と再生のストーリー。
本州にいたニホンオオカミと違って、エゾオオカミはハイイロオオカミに近い種で体核が大きく、主にエゾシカを食餌していた。明治以降、毛皮や食肉目的のエゾジカの乱獲で自然界のバランスが崩れた。そして開拓とともに牧畜産業が進むにつれ、オオカミによる牧畜の食害が問題視され、やがて駆除の対象となった。
「アイヌにとってオオカミは山の神だった。ホウケウカムイと呼んで彼らが神格化していたのはちゃんと意味があるの。アイヌたちは食物連鎖の頂点にオオカミがいなければならないということを、ちゃんと知っていた。でも、押し寄せる西洋文化の圧力の前には、なすすべもなかった」