
日本列島を人間の身体にたとえたなら、背骨のど真ん中にある巨大地溝がフォッサマグナだ。1500万年前に生まれた深さ6000m以上の「怪物」は、数々の火山や堆積物に覆われながら、現在もなお、日本列島に大きな影響を与えつづけている。それはなぜできたのか?なぜ世界唯一の地形なのか?長年の謎が、いまようやく解き明かされてきた!
序章 ナウマンの発見
第1章 フォッサマグナとは何か
第2章 地層から見たフォッサマグナ
第3章 海から見たフォッサマグナ―日本海の拡大
第4章 海から見たフォッサマグナ―フィリピン海の北上
第5章 世界にフォッサマグナはあるか
第6章 “試論”フォッサマグナはなぜできたのか
第7章 フォッサマグナは日本に何をしているのか
東西に長く延びている日本列島は、フォッサマグナ地域を境にして、地質的に分断されています。フォッサマグナ地域とその東西では、地層や岩石などの地質がまったく異なっている。
すなわち、フォッサマグナ地域の東西では1~3億年前の古い岩石が分布しているのに対し、フォッサマグナ内部は、2,000万年前以降の新しい岩石でできている。
フォッサマグナは地下6,000m以上もの溝。
この溝を覆い隠すのように堆積物が積み重なったのが、現在の中部日本。
トラフとは水深が6,000mより浅い和舟のような形をした地形のこと。
南海トラフの場合は底には2,000m以上の堆積物が存在するので、それを取り去ると海溝と同じ深さになる。
房総沖海溝三重点;日本海溝、伊豆・小笠原海溝、相模トラフが一点で交わる場所。
地球上で唯一の海溝三重点
海底地形図で見ると、房総沖には一辺100kmの巨大な三角形の凹地があり、その中心付近にはさらに凹みがある。これが3つのプレートが沈み込みあう特異なプレート境界、海溝三重点。
15Ma以降に、現在の位置の周辺にあったと思われる。その水深は9,200mある。
その周囲には広大な平坦面が広がっていて「坂東深海盆」と呼ばれている。
関東地方の陸上で削剥された堆積物は、最終的にはここに運ばれて堆積している。
中央構造線を発見したのも、ナウマン。
「秋田ーー新潟油田褶曲帯」;石油や天然ガスが産出する。
地層が厚いこと、石油や天然ガスがたまりやすい「褶曲」という地質構造が要因。
褶曲とは、大地を両側から押す力が加わって、地面が歪んだ状態。
急激に押すと断層ができ、ゆっくり押すと褶曲になる。
このとき、地面の褶曲は凸形の「向斜」と、凹形の「背斜」という2つの形状ををとる。
このうち背斜が、地層と地層の隙間に石油や天然ガスが溜まりやすい構造である。
■背斜では水より軽い天然ガスや石油が溜まる空間ができる。
こうした構造は、比較的年代が新しくきれいな地層が造山運動によって褶曲することでできる。まさに中東はそうした地層の宝庫。
日本も造山運動が活発だったが、度重なる地震によって地層がずたずたにちぎれてしまっているため、石油は溜まらない。
フォッサマグナの成因については、ナウマン自身が、日本で初めて東京帝国大学で地質学科の教授となった原田豊吉を相手に激しい論争を展開している。
男鹿半島では過去7,000万年前の環境の変遷を刻む地層が観察できる。
男鹿半島・大潟ジオパークは「日本列島のでき方がわかる」ことを売りにしている。
大和海盆には大和海嶺という山脈があって、水深236mの大和堆というひときわ高い山が形成されている。大和堆は火山ではなく、まだ日本海ができる前の225Maという非常に古い年代の花崗岩が採取されている。当時はそこが陸地であったことを暗示している。
日本海に地磁気の記録が見られない理由は、温度が高いからという考えもある。
磁鉄鉱は573℃以上になると磁性を失う。
三大深海湾と呼ばれる相模湾と駿河湾、そして富山湾は、フォッサマグナが形成された頃にはつながっていたようである。そのため、中部地方で生息する生物に興味深い事例がある。
岐阜県の瑞浪層群では、熱帯的な生物の化石がたくさん見つかっている。
このことから、黒潮のような温かい海水が流れていたと推定されている。
伊豆半島では明治時代まで金鉱山が稼動していた。
土肥(とい)金山は、佐渡金山に次ぐ生産量。
伊豆で金が豊富に採れるのは、マグマによってできた熱水が岩石の割れ目に入り込み、そこに溶け込んだ金が、熱水が冷えると沈殿して鉱脈となったため。土肥金山も伊豆半島ジオパーク。
ナウマンは何をもって世界に稀有な構造と直観したのかといえば、平坦な台地の向こうに、いきなり2,000m以上の山々が壁のように屹立している、その「落差」の大きさだった。
落差こそがフォッサマグナを世界に無二の地形にしている。
日本のフォッサマグナ候補①
別府ーー島原地溝帯
日本のフォッサマグナ候補②
北薩の屈曲;鹿児島県阿久根市の近く
仏像構造線
日本のフォッサマグナ候補③
琉球弧の前弧
日本のフォッサマグナ候補④
千島・日本海溝会合点
襟裳海山
カデ海山
世界のフォッサマグナ候補①
マリアナ海溝
地球上で最も深い溝;チャレンジャー海淵・・・10,920m
世界のフォッサマグナ候補②
チリ三重点
世界のフォッサマグナ候補③
東アフリカリフトゾーン
「巨大地溝」
人類発祥の地、東アフリカ大地溝帯
幅35~100km、総延長7,000km
「アファー三角地帯」
アラビアプレート、ソマリアプレート、ヌビアプレートの3枚のプレートが1点で交わっている。リフトの中ではホットプルームがマグマとなって、ケニア山やキリマンジャロなど、巨大な火山をつくりだしている。
世界のフォッサマグナ候補③
ニュージーランド