
ドイツ軍/ソ連赤軍両軍の重戦車の激突!重厚な装甲と強力な主砲を搭載したティーガー2。VSティーガー1を凌ぐべく開発された重戦車IS‐2スターリン。両者が直接対決した1945年2月、東プロイセンでの「冬至作戦」での直接対決を中心に、戦車の進化の果てにたどり着いたモンスター同士の対決を検証する。
弾芯に比重が重いタングステン・カーバイドを使用することになっていたが、この素材は装甲素材を加工する工作機械にも必要な稀少金属であるため、結局は砲弾としての採用は見送られた。
1800年代から機関車製造メーカーとして知られていたヘンシェル社は、当然の成り行きとして、第二次世界大戦前から軍用車両をはじめ、トラックや航空機、砲などの開発と生産に重要な役割を果たしてきた。
砲塔と一体化した「バスケット状」のプラットホームは、砲塔の旋回に伴い内装と乗員も一緒に回転する仕組みなので、乗員にとっては安全で、かつ戦闘時の効率も維持できる。
この結果、居住性と操作性は格段に向上し、事故の原因も大幅に減らすことができた。
ティーガーⅡ諸元
★生産期間;1943年11月~1945年3月
★総生産数;493両
★戦闘重量;69.8トン
★乗員5名;車長・砲手・装填手・操縦手・無線手/機関銃手
★全長;10.286m
★全幅;3.755m
★全高;3.09m
装甲
★車体前部;150mm:傾斜50度
★車体側面;80mm:傾斜80度
★車体後部;80mm:30度
★車体上部;40mm
★砲塔前部;100~120mm:傾斜80~90度
★砲塔側面;180mm:21度
★砲塔後部;80mm:20度
★砲塔上部;40mm
兵装
■主砲;88mm戦車砲
■副次兵装;7.92mmMG機関銃×2
7.92mmMG対空機銃を搭載可能(5,850発)
主砲発射速度;5~8発/分
主砲砲弾携行数;88発
動力
■12気筒23リッター水冷式ガソリンエンジン
燃料;860リッター
燃費;路上・・・5.1リッター/km
不整地・・・7.2リッター/km
最大後続距離;路上・・・170km
不整地・・・120km
最大速度;路上・・・41km/時
不整地・・・20km/時
IS-2スターリン戦車の砲塔はバスケットと連動して回転しないので、砲塔にいる3人は砲塔の旋回に合わせて自分たちも移動しなければならない効率の悪さに耐えねばならず、吊り下げ式の座席で我慢していた。このような環境の中で重量のある砲弾を装填するのは重労働であった。
IS-2スターリン戦車 諸元
★生産期間;1944年4月~1945年6月
★総生産数;4393両
★戦闘重量;46.08トン
★乗員4名;車長・砲手・装填手・操縦手
★全長;9.83m
★全幅;3.07m
★全高;2.73m
装甲
★車体前部;120mm:傾斜60度
★車体側面;90mm:傾斜15度
★車体後部;60mm:49度
★車体上部;30mm
★防盾;100mm:円形
★砲塔側面;90mm:18度
★砲塔後部;90mm:30度
★砲塔上部;30mm
兵装
■主砲;122mm戦車砲
■副次兵装;7.62mmMG機関銃×3:同軸・車体・砲塔背面
7.92mmMG対空機銃を搭載可能(5,850発)
主砲発射速度;2~3発/分
主砲砲弾携行数;56発
動力
■12気筒水冷式ディーゼルエンジン
燃料;790リッター
燃費;路上・・・3.5リッター/km
不整地・・・4.3リッター/km
最大後続距離;路上・・・150km
不整地・・・120km
最大速度;路上・・・37km/時
不整地・・・19km/時
ティーガーⅡの装甲
貫通弾が命中したとき、戦車の装甲は内部への弾丸の侵入を防ぎ、弾き飛ばすために一定の硬度を持っていなければならなかったが、同時にその衝突エネルギーを放散して、装甲の形を保っていなければならない。つまり硬すぎて割れたりヒビが入ってはならないのだ。
ティーガーⅡはまず装甲を厚くすることで、進化を続ける対戦車砲に対抗した。胴体装甲は、クロムとモリブデンを加えて表面硬化層の厚みと抗堪性を増した均質圧延鋼板;RHAでできている。均質圧延鋼板は、品質が一定しているときにもっとも強度が増す。つまり品質にムラがあると、継ぎ目などに無理がかかり、そこから破断してしまうのだ。
ティーガーⅡの場合、胴体の傾斜装甲が150mm、防盾が180mmの厚さになっているが、このような厚さの均質圧延鋼板を製造する技術的困難は並大抵ではない。
戦争が長引くにつれて、モリブデン、ニッケル、マンガンや、結晶生成を抑制して均質圧延鋼板の剛性を増すために使用するバナジウムのストックが低下し、装甲の品質は悪化した。
ティーガーⅡの砲弾
弾芯の先端を覆う被帽は、高速飛翔時の空気抵抗を軽減すると同時に、命中の際には弾芯の貫通力に悪影響を及ぼさないほう配慮されている。
この砲弾が命中すると、まず弾芯が装甲板を破壊して内部に食い込み、次いで炸薬として充填されているアマトール;TNTが60%、硝酸アンモニウム40%の混合爆薬;が爆発する仕組みになっている。
スターリンが手を染めた赤軍大粛清で、有能な士官を中心に43,000名が処刑された影響で弱体化していた赤軍は、独ソ戦が始まった直後から兵士、装備の両面で破滅的な損害を被った。
パンツァー・ファウストやパンツァー・シュレッケなどの携行戦車兵器の成形炸薬弾は、戦車の装甲に命中して、爆発の威力が生んだ溶融金属ジェットを装甲に直接吹き付けて孔をあけることで戦車に致命傷を与える。
したがって赤軍戦車兵の鉄板や予備キャタピラー、金網などの即席追加装甲でも、成形炸薬弾なら金属ジェットを拡散させて、無力化できたのである。このような即席の外部装甲がない場合、戦車兵は「魔女の口づけ」と呼んで恐れる孔から吹き込んでくる高温ジェットで焼き殺されることになる。
歩兵は高い確率で身体的な負傷を被ったが、戦車兵は特有の危険と隣り合わせだった。
絶え間ない振動は膝や背骨の関節を痛め、ひどい場合は脊髄神経根炎を引き起こし、浮腫や筋肉の消耗症の原因にもなった。対戦車地雷や榴弾の爆発による衝撃は精神的な後遺症の原因となり、命中した敵弾が貫通しなくても、その衝撃で車内に飛び散る小片は銃弾と同じくらい危険だった。一酸化炭素が発生しやすい構造も問題で、もしハッチが開閉できない状態でこのような事態になれば、死を覚悟するほかない。
作戦中は、常時85dBを超えるひどい騒音に悩まされることになる。
主砲射撃音は140dBに達し、これが周囲の環境と作用しあうので、戦闘中は120dBから200dBの騒音にさらされ続ける。
■dB;デジベルは音の大きさを表す単位として用いられるが、一般に人間の感覚では10dB上がると、2倍の音として感じられるとされる。
地下鉄が80dB、ジェット機エンジン付近が120dB程度であることと比較すれば、戦車内の騒音の酷さがわかる。
およそ1,000km走行するごとに、エンジンを交換しなかればならなかった。
現代戦において、携行対戦車兵器の発展と急増は、戦車にとって死亡通知に等しいと解されている。