
山を知るほど山はもっと面白くなる。650点の写真による解説。
第1章 北アルプスの成り立ち
第2章 北アルプスの名峰
第3章 地形からみた北アルプス
第4章 自然現象
第5章 生き物たちの世界
第6章 登山と観光
立山連峰と後立山連峰を分ける黒部峡谷も、一帯の隆起に応じて侵食を強め、1,500mも深く切れ込み、峡谷をつくった。山脈と峡谷形成は一体のものである。
礫岩の堆積した時期から、北アルプスの隆起が始まったのは70~80万年前頃と推測されている。
100万年前には北アルプスは存在せず、平凡な高原であったと考えられている。
北アルプスの特色の1つに火山の存在がある。
焼岳、立山の地獄谷などで噴気活動が活発であり、温泉の噴出も見られる。
立山の弥陀ヵ原や室堂平、雲ノ平、乗鞍岳などは、火山の大規模な噴出物で形成されたものである。乗鞍岳、焼岳、雲ノ平、鷲羽岳、立山など、北アルプスの火山は乗鞍火山帯に属し、だいたい北アルプスの西側沿いに南北方向に並んでいる。
■北アルプスでは、ユーラシアプレートと北アメリカプレートが東西から強く押し合っている。
立山カルデラ・・・陥没カルデラと考えられてきたが、常願寺川による侵食カルデラ。
日本一の落差350mの称名川;しょうみょうがわ。
白竜峡・・・下ノ廊下の核心部。花崗岩質の火成岩が、隆起と激しい浸食のため、深いV字谷をなしている。
剣大滝・・・音だけ聞こえて姿が見えないため幻の滝と呼ばれている。
「悪城の壁」と呼ばれる高さ500mの岩壁。
薬師岳の圏谷群は国指定の特別天然記念物
立山の雄山の山崎圏谷は国指定の天然記念物。
日本最大のカールである涸沢では、崖錘が数多く見られる。
崖錘とは、上部の岩場から削られて落下した岩屑が半円錐形に堆積した地形で、35度の傾斜で安定するという。
北アルプスは、日本で最も古い飛騨変成岩(片麻岩・結晶片岩)など多様な岩石から構成されている。
片麻岩は最も古く、かつてはユーラシア大陸の一部をなしており、20億年前に生まれた、何回も高圧・高温の変成作用を受けてきた岩石である。
片麻岩の分布は、黒部峡谷の下流、宇奈月温泉付近から剣岳西麓まで、ほぼ南北に延びている。
また、結晶片岩も変成を受けた岩石で、白馬岳、朝日岳周辺から、日本海の海岸にある親不知にかけて分布している。
北アルプスで最も分布範囲の広い岩石は、花崗岩類である。
黒部峡谷が非常に深く、狭い典型的なV字谷でありながら意外に明るいのは、この白い花崗岩が分布するためである。
また燕岳のように岩石がぼろぼろに風化され、砂になっているのも、この地域の花崗岩を構成する鉱物が、温度変化による膨張・収縮を繰り返し、鉱物1つ1つがばらばらになったためである。
穂高連峰から槍ヶ岳にかけての安山岩、笠ヶ岳付近の流紋岩。後立山連峰の針ノ木峠から爺ヶ岳、鹿島槍ヶ岳、五竜岳、さらに白馬岳北側の山頂部、立山連峰の薬師岳の山頂部も流紋岩である。
槍ヶ岳から穂高連峰の稜線を構成するものは、高温の火砕流物質から形成された安山岩質の溶結凝灰岩で、硬く、穂高連峰の険しさの理由となっている。奥穂高岳南面岳沢に、溶結凝灰岩の、材木を並べたような柱状節理が発達しているのを見ることができる。
■柱状節理;岳沢ヒュッテの奥、扇沢まで登ると、穂高安山岩のきれいな柱状節理が見られる。
生きている北アルプス
北アルプス周辺の断層は横ずれで、東北東ーー西南西の方向をもつ右横ずれ系のものを、西北西ーー東南東の方向の左横ずれ断層である。
前者は富山・岐阜県境の跡津川断層、牛首断層などである。
後者は富山・石川県県境の城端(じょうはな)--上梨断層、加須良(かずら)断層、岐阜県の下呂から中津川にいたる阿寺断層、中津川付近の根尾谷断層などである。
この2系列の断層は、1つのセットになっていると考えられており、お互いに直角に交わる断層のセットを「共役断層」と呼んでいる。
北アルプスでは、プレート運動により、東西方向の力が加わって大地に生じたひび割れが断層になる。力が加わっても、ある期間は歪みをためて耐えているが、ある限界を超えると、ずれ(断層)が生じる。
安政8年;1858年の飛越地震は、跡津川断層の動きによるものである。
■「噴湯丘」;高瀬川上流湯俣川左岸に形成されつつある。
炭酸カルシウムからなる温泉沈殿物が堆積したもので、「高瀬渓谷の噴湯丘と球状石灰岩」の名で天然記念物に指定されている。
■「跡津川断層の露頭」;右横ずれ断層
前者は