『 遠藤さんの青空 』
遠藤 崇昭さん 撮影
「ベランダにデッキチェアーを出して昼寝をすると涼しい風が来て
気持ちがいい。寝ながらぼんやり青い空を見ていると我が人生の
来し方が浮かんでくる。」
今年も終戦記念日がやって来た。この日が来るといつも思い出すのは、あの日の
じりじりした暑さ(今のに比べれば涼しい涼しい位なのかも)、蝉たちの大合唱、
音質の悪いラジオから流れる何やら聞き取れない音声(ちょうど今、私の難聴の耳で
聞くTVの音声のような)、そして「ギョメイギョジ」(御名御璽)という当時意味
不明の言葉だ。
あの日は朝から天気が良く暑い日だった。早朝から蝉の声が雨のように降っていた。
ちょうど今の耳鳴りの様だった。汗をかきかき疎開先の借家の庭で遊んでいたのだろう。
家には母と兄と3人だった。父は従軍画家だったからまだ外地だったのかもしれない。
母に呼ばれてラジオの前に座った。天皇陛下のお話があるという。
丁度そこへ、父の親友で地元の彫刻家のおじさんが訪ねてきた。国防服で背中に鉄兜を
背負っていた姿が目に残っている。もしこのおじさんが兵隊さんだったら、日本の軍隊は
きっと弱いだろうなぁと思ったものだ。
4人で玉音放送を聞いたのだろうが、あまり聞き取れなかったし、本当にその日の事態が
分かったのか、それからどうしたのか、どんな気持ちを抱いたものなのか、残念ながら
その辺の記憶はなくなっている。
今でも蝉の声を聴くと、ふとあの日のことを思い出す。