maidoの”やたけた”(ブログ版)

ジジイの身辺雑記。今日も生きてまっせ!

正直者探し又は嘘つき探し・其の一

2015-02-03 16:04:59 | 支離滅裂-迷想迷夢-正直者探し

なるべく共通語に近い大阪語で書く心算では居りますが、ひょっとしたらお読み辛いかと思います、その際はご勘弁ください。
また、実在の地名店名に似たものが出てまいりましても、虚構中の偶然の一致、全く他意、悪意はございません。
どのみち、妄言ですよって、其処のところはお目こぼしをお願いします。
と逃げを確り打っといて、ボチボチ行きまひょか?

正直者を探すのはいかにに難しいか、昔から笑い話で良く言われとりますが、

ある男、(別に女でもエエんですが、女言葉を打つのんは慣れてないから此処は男で行きまっさ)
周りの人間共に騙されて、自分も人間である事を棚に放っぽり上げて、人間不信に陥りましてね。
まぁ、しょっちゅう騙されるというのは、本人にも騙される素地があるというか、自分勝手に都合のいいように思い込んで、相手の考えと違ってたら「騙された!」と騒いでいることも往々にして有るんですがね。

広い世間やから、どこぞに正直者ばっかりが住んでる所がある筈と旅に出たんですなぁ。
こういう事を考えるのが、そもそも「正直者」で無ければ「嘘つき」と単純明快に割り切れるという薄っぺらな考えで、片面印刷のスーパーのチラシを見てるように世の中を眺めてる証拠。
人間という融通無碍、変幻自在、善悪虚実を内包した玉虫色のシャボン玉を判って無いのか、判ろうとせんのか。

天満橋を朝立ちして、これも日本橋でも、思案橋でもエエんですが、土地鑑がないから天満橋。
お初天神、中津の渡し、三国の渡しを越えて、能勢街道を何の当てもなく歩いてきたんですわ。
これ又、別に東海道、山陽道、南海道でもエエけれど、手近な所で間に合わせただけでおます。

天竺川の土手を歩いていると、京街道との分かれ道に程近い服部は浜までやってまいりました。
浜という地名は今でも残っておりますが、この頃の天竺川は今より水量があったんでしょうなぁ、水運に使われてたそうです。
ふと見ると、道端に可愛い祠のお地蔵さんが、見れば旅の災いからお守りしてくれる有り難~いお地蔵さんやと書いてある。
あても定めもない、心細い気持になってるところやから、「これは丁度エエ、何処まで行かんならんか判らん旅や。怪我や病気は願い下げにしたいなぁ。まして 追剥、盗人(ヌスット)、山賊、お化けユーレン、物の怪、納豆、何んかに出会いとうないし、狐狸(コリ)にたぶらかされるのも風(フウ)が悪い。ヨシ、お 賽銭奮発しょ、頼んまっせ!確り守っとくんなはれや、お賽銭のタダ取りしたら、罰(バチ)が当たりまっせ」

罰当たりな事を言いながら、ドサッ!とまでは出さんけれど、チャリ~ンと澄んだ音のするのを上げて、一応は神妙にお願いしよった。
お地蔵さんに一体誰が罰(バチ)を当てられるんか?
菩薩、観音、如来といえども仲間内に罰(バチ)を当てたというためしは無いで。
充分念を入れたから、これで安心、と立ち上がったら、お乳母日傘で育った町方で足が頼んない、オットとよろめいた拍子に、小さいお堂のひさしでアタマをゴンッ。
罰当たりな事を言うもんやから、天網カイカイ、水虫痒い痒い、因果報応、イングリモングリ、きっちり自分に罰が当たった。

「ア痛イタタタ、旅の災いから守ってくれる言うから、お賽銭まで上げたのに、早速災いに出喰わしたがな。賽銭タダ取りか、いっこも守ってくれてへんやないか!エエ、お地蔵さんまで人を騙すか、さっきの賽銭どうしてくれるねん?」
契約違反は倍返しが通り相場やけど、其処まではいわん、せめて出しただけでも取り返えそうと、賽銭箱から取り戻そうにもがっちり固定してあって、逆さにして振る事も出来ん。
アホが止めときゃエエのに、木の枝を探してきて、賽銭箱に突っ込んで、何とかして取り戻せんかとゴソゴソしてたんですな。

急に後ろから頭を思いっきり張り飛ばされて、その弾みで、今度は賽銭箱の角へゴチン。
目出度くタン瘤で夫婦岩の出来上がり。

「誰や!何さらすねん?」
「何さらすやと?ようもそないなふてぶてしい頬ゲタ(セリフ)が叩けるこっちゃ。ワレどこのデンコ(チンピラ)や知らんけど、ウチのお地藏さんの賽銭をどうする気じゃい!」
「なにぃ?お前はこのクソ腐れ地蔵の身内か?ええとこに来くさった!さっきワシから騙し取った賽銭をまどえ!」
「又、盗っ人猛々しいとはオンドレのことやなぁ!口もきけんお地藏さんがどないしてお前から賽銭を騙し取れるもんか。賽銭泥棒の癖しやがって、大人しいに 謝ったら放してやらんでも無かったが、しょうもない言いがかりつけて、ワシから金をせびろうちゅうのんか。そういう了見やったら勘弁できん。そのど腐れた 根性を叩き直したろかい。オーイ」
川べりで船に荷を積んでた在所の若いもんが「オヤッサン、どないした!」ドヤドヤっと土手を駆け上がって来て、持ってた荒縄でギリギリまきに縛り上げてしもた。

「一寸の虫にも五分の魂」というけれど、五尺五寸の体の中を何ぼ捜しても魂の影も欠片も見付からんほどの、到って根性なし。
達者なんは口だけで、うるさいだけで何の役にも立たんデンデン太鼓みたいな男。
並木の松に縛られて、「正直に白状せんかい!」と取り囲まれただけで、座りションベンしてアホになるほどビビッテしもた。
それでも「賽銭は上げたけど、盗って無い、盗る気も毛頭無い。返して貰お思ただけや」と口ごたえ。
「ようもこの後に及んでまで、そんな白々しい嘘がつけたこっちゃ。正直に白状するまで許さんからそない思え。おい誰ぞお住持っさんに札書いてもろて来い」
「何の札?」
「お前もドン臭いやつやなぁ。『私は賽銭泥棒でございます。言い逃れをして白状せんので、こうして縛られて居ります』と書いてもらうのやがな。コッチも忙 しいのにこんなアホの見張りもしとれん。街道通る人がこいつの嘘に乗せられて、ひょっと縄でもほどいたら逃げられてしまうがな。此処で懲らしめとかんとこ いつは一生、賽銭泥棒の嘘つきで身を誤るで。可哀想でも本人の為や」
「おっさん判った、ほな行ってくるわ」と若い衆が土手下の松林寺へ飛んで行った。

これこれこうでと、若い衆がお住持っさんに説明すると、さすがは御仏に仕える身、「そんなくらいのことで人を曝しもんにしたらいかん。お地蔵さんは人を救 うのがお仕事、決して喜ばはりまへんで。どれひとつ私が行っていうて聞かせよかいな」と、わざわざ土手に上がって来はった。

「これこれ、こないに酷い(ムゴイ)事したらイカンがな。早よ縄を解きなはれ。アンタも泣きじゃくってんとワケを話してみなはれ」
「ワタイ何にも悪い事してまへん。悪いのんはこのクソ地蔵、オ~ィ、オ~ィ、オイ」
「このワロはまだそんな事をいいくさるか!」バシッ!脳天を思い切り叩かれた。
「これ、乱暴はいけまへん。なぁあんさん、ここは昔から奈良の春日さんの御神領。在の人は到って穏やかな人ばっかりや、それがこないに怒るからには何もしてないはずが無い。どないしましてん」

「そやから、騙し取られた賽銭を取り戻そうと・・」
「騙し取られた?それは穏やかでない。お地蔵さんがモノでもいいましたんか?」
「石のお地蔵さんが物いうかいな、ボンサンの癖に物知ら・・」ゴン!
こんどは拳骨でどやされた。
「オドレはどこまで根性が捩曲がっとるんや。お住持っさんにまで悪垂れほざくとは勘弁できん」
「まぁまぁ、待ちなはれ、あんたも乱暴な。そないにキツう叩いて、凹(ヘコ)がいったらどないしますねん」
「お湯に浮かべたら戻りまへんか?」
「ピンポン玉やセルロイドのキューピーやあるまいし、とにかく乱暴は止めなはれ」
「お住持っさんのお言葉やけど、どないもこないも、こいつは口でいうても効かん、身体で覚えささんとあきまへんねん」
「あんたも、此処はとにかく謝りなはれ」
「悪い事してへんのに、何を謝りますねん?」ボカッ!

「これ、叩きなはんな、というのに!見なはれ瘤と瘤の間に瘤が出来てつながってるやないか」
「ついでにマンベン無うどやしつけて、頭を一回り大きゅうしたら、瘤が目立たんようになりまっせ。」
「そんな無茶いうたらいかん。したか、してへんかはさて置いて、『李下に冠を正さず、瓜田に沓を直さず』と言いまっしゃろ、疑われるような事をしたあんたも悪い。謝って放して貰いなはれ。あんたらも、素直に謝ったら放してやりなはれや」
「なんですその『リカちゃんは無理を通さん、家電は靴を修繕せん』いうんは?」
「どんな耳してるねん?何でもエエから謝りなはれ」
「そら、最初から正直に素直にあやまったら、こんなことはしとう無いんでっせ。それを何のかんのと嘘をいうよって」
「嘘はいうて無い」
「まだいうんか」ベシッ!
「さぁさぁ、意地張ってんと、謝らんと頭が保ちまへんで」
「すんまへん」
「それだけか?『二度と盗人の真似はいたしません』といわんかい!」
「しやけど、やってない・・」ペチン!
「二度と盗人の真似はいたしません」
「声が小さいなぁ!」
「二度と盗人の真似はいたしません」
「最初から正直にそないいうたらエエのに、要らんいい逃れをホザクよってエライ目に遭うんじゃ。何処えなと行きさらせ」

ドツかれた頭は痛いは、口惜しいは、無理やり嘘はいわされるはで首うな垂れて差し掛かったのは住吉さん。
正直者を捜しに来たのに、出足から自分が嘘をいわんならん羽目になって、もうわやくちゃ。
何ぞにすがらんと、情けのうて足が進まん。
お地蔵さんはあてにならんが、神さんはまさか人を騙すような事は無かろう、と神前に拍手打ってお祈りをしたけれど、お賽銭は首尾よく験(ゲン)があってからの後払いと、せこい事。
足の神さんの天神さんにもお参りして、無事に正直者が見付かりますようにと、ここも賽銭は出来高払いの後払いでお願い。

岡町さして坂を上がって大きな池の土手を空き腹抱えてトボトボ行くと、ウドン屋がおました。
嘉兵衛(ヨシベェ)さんが土手でやってるから、土手嘉(ドテカ)。
モッサリした名前で、味も愛想もモヒトツでも何とかやってゆけるのは、一見さんの多い街道筋のおかげ。
知らんと一回食べるのはしょうが無いけれど、二回三回となったら、これは病気か物狂い。
「名代うどん、名物」の幟に引かれて店にはいったら、客の姿は一人も無く、イカツイおっさんが渋い茶色の前垂れでヌッと立ってるだけ。
よくよく見れば渋い茶色と見えたのは、よごれで端の方には在りし日の白い色が・・。
これはイカンと出ようとすれば、素早く出口を遮断しておっさんが仁王立ち。
「何しまひょ?」
「何が美味しおます?」
「どれでも美味しおます」
「中で一番は?」
「人夫々に好みがあるから、どれが一番とは言いかねますけど、シッポクなんかは人気がおます」
「ケツネより美味しおますか?」
「ケツネも美味しおまっせ」
「ほんならアンカケはどないです」
「それも美味しおます」
「オッチャンそれでは決められんがな、正直にどれが一番旨いかキリキリ白状せんかい」
「あんた酔うてるようにも見えんが、絡んでるのんかいな、ゴジャゴジャ言うてんと、なんなと決めなはれ」
「ほんなら・・・と、ケツネ!」
空きっ腹に不味いもの無しというけれど、人の言う事を鵜呑みにしたらイカン。
世間には有るんですなぁ、空きっ腹でも不味いものが。

この男、幸運というか不幸というか、その滅多に無い逸品に、盲亀の浮木、優曇華(ウドンゲ)の華が咲くまで待たんでも、見事に回り逢うことが出来ました。
このまま此処で一生を終えるかと思う程、待たされた挙句に威風堂々とお出ましになったのは、他所では先ずお目に掛かれん、凶暴かつ獰猛なる怪しの代物。

ダシはダダ辛(カラ)く、うどんはボワ~っとふやけて、今まさに溶け崩れるかという、春の淡雪の風情。
早う食べんと、何時何時(イツナンドキ)糊にならんとも限らんのをギリギリ寸止めの名人芸。
キツネというからにはアゲは何処、アゲ恋しやと尋ぬれば、尋ね来て見よ、信太なるあはれ葛の葉でも有るまいに、捜せど捜せど面影もなし。
アゲが無ければケツネや無い、ただの素ウドンやないかいな。
素ウドンならばまだ辛抱できるけど、箸にも掛からんこの面妖なる代物は一体何や?

「大将、わたいケツネを頼んだんやけど・・・」
「其処に出したがな、目の前にあるのんが見えんのかいな?」
「はて?目の前に出てるといえば、ひょっとしてこの醤油味の糊の出来掛けみたいなんがそうでっか?」
「それがキツネやのうて、何がキツネやねん」
「そないおっしゃっても到底そうは思えんのやが」
「はは~ん、難癖つけて金を払わんととタダ喰いしたろという魂胆か?」
「いや、例えお金を貰ろても、これだけはよう喰わん」
「何?喰えん?親子代々の味自慢のウドンに何処が不服でケチをつけるのや?」
「確かに珍しくはあるけれど、食い物とは到底お見受けしかねる」
「ようぬかしくさった。金は要らん、こうでもして喰らわしたら!」
丼鉢を持つが早いか、頭の上からぶっ掛けた。
「熱ツツツ!何をするねんな、是は又乱暴な!」
「乱暴も、三宝もあるかい、トットと去(イ)にさらせ。ウロウロしてたら湯掛けるど!」
瘤だらけの頭にウドンをブチマケられて、是がホンマのコブウドン、さながら枯れ山水の出来損ね。

て~事で続く。(やろか?これは収拾がつかんぞ・・)

2003/07/15


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