村内まごころ商法 & 剛毅の経営

昭和53年に出版された本と、ホームリビングに掲載された記事でたどる、村内道昌一代記

新たなる挑戦へ(8)

2006年12月09日 | Weblog
八王子本店に併設された村内美術館への導入路に、直径五〇センチメートルは優に超える、太い原木の輪切りが三本置かれている。

長い年輪を刻みつけたその三本の、いかにも堂々とした風姿が、家具の売り場と美術館という、短絡にみれば関連性の薄い異空間を濃密に結び付ける。

道昌がカリモク家具販売に依頼していたもので、ナラとブナの原木輪切りだ。如何にナラとブナが日本に豊富とはいえ、これだけの径木は今や、手に入れることはなかなか難しかったに違いない。

真ん中にブナ、両端にナラが配されたその一角は木を主材とする家具売り場と、木々を光と影の巧みな陰影のなかで描き込むことが多かったバルビゾン派絵画のコレクションとして知られる同美術館との、まさに交歓の場でもあるようだ。

道昌はかねてから店や売り場はエンターティンメントの場であり小売業の本質はディズニーランドとなんら変わるところはない、と考えてきた。いつ来ても楽しい売り場、何回来てもワクワクするような新しい発見がある売り場作りをしていきたい--そうした道昌の血肉となった考え方が、ナラとブナの原木標示の背景にあることを知る人は少ない。