NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#179 クリーム「BBCライヴ」(ユニバーサル/Polydor UICY-1167)

2022-05-12 04:58:00 | Weblog

2003年8月3日(日)



#179 クリーム「BBCライヴ」(ユニバーサル/Polydor UICY-1167)

クリームのひさびさのアルバム。ベストものを除けば、実に31年ぶりのリリースだ。

英国のBBCにおいて、7回にわたり録音・オンエアされたスタジオ・ライヴ集で、(10)と(26)の2トラックを除いて、すべて未発表音源だから、ファンとしてはもう、興味津々。

クリームも、先週のヤーディーズ同様、説明不要のビッグ・グループで、筆者にとっても大のフェイヴァリット。

すでに過去のオリジナル・アルバムはすべて(とベスト1枚)レヴューしてきたので、そちらもぜひお読みいただきたい。(「ロックアルバムで聴くブルース」と当コーナー2001年9月、11月、2002年2月、8月の項。)

<筆者の私的ベスト5>

5位「LAWDY MAMA」

これは実は未発表音源ではなく、エリック・クラプトンのコンピレーション・ボックス「Crossroads」で既に発表されているのだが、個人的に好みなので取り上げてしまう。トラディショナル・ブルースをクラプトンがアレンジした作品。

「ライヴ・クリーム」に唯一のスタジオ録音として収録されたときは、まったりとしたミディアムスロー・テンポだったが、ここでは小気味いいアップ・テンポのナンバーに変身。

クラプトンのいなたいヴォーカルも、妙に曲にハマっていてよろしい。

2分足らずの小曲だが、「これぞシャッフル!」というノリの良さ。クラプトンの泣きのギターはいうまでもないが、ブルースのベース・プレイもまたいい。

4位「CROSSROADS」

「WHEELS OF FIRE」でのライヴが歴史的名演との誉れの高い、あの「クロスロード」である。

その、フィルモア&ウィンターランドでのライヴ(68年3月)に先立つこと16か月ほど前、66年11月に録音、翌月末にオンエアされたのが本盤収録のトラック。

その名曲のプロトタイプが聴けるとあれば、ファンならずとも、興味が湧かないわけがないだろう。

で、どんな感じかというと、さすがにまだ荒削りな感じ。ギター・ソロも、あの完璧に構成された「WHEELS OF FIRE」版に比べると、凡庸な印象はぬぐえない。

音質がいまイチで、イントロ部をカットして、いきなり歌から始まるのも、いささか残念。

だが、クラプトンの決して上手くはないが、一途なヴォーカルには、心打たれるものがある。未完成なりに、愛すべき一曲である。

3位「STEPPIN' OUT」

「ライヴ・クリームVOL.2」でも演奏していた、メンフィス・スリムのナンバー。

本盤にも、2テイクが収録されている。66年11月に録音・オンエアされたヴァージョンと、68年1月に録音・オンエアのヴァージョンがそれだ。

その中でも、後者が筆者のオキニ。番組向きに3分37秒と「ライヴVOL.2」版よりかなりコンパクトにまとめているが、その迫力ではまったくヒケをとっていない。

クラプトンにとっては、ブルースブレイカーズ以来のレパートリーということで、何年も弾き込んでおり、完全に自分のものとして消化しているのがよくわかる。

そのフレーズのひとつひとつに、彼のブルース・スピリットが横溢している。

クラプトン、ブルース、そしてベイカー。全員の気迫みなぎったプレイにノックアウトされて欲しい。

2位「I'M SO GLAD」

「フレッシュ・クリーム」で初出、「グッバイ・クリーム」でライヴ・ヴァージョンを披露したナンバー。スキップ・ジェイムズの作品。

「グッバイ」同様、一発録りライヴでキメてくれている。これが実にカッコいい。

時間的には4分22秒と、「グッバイ」版よりはかなり短めだが、そんなことを感じさせない熱演。

特にギュッと凝縮された中間のソロ部分が、聴きもの。

「グッバイ」版のようにタレ流し的に長くなく、進行も微妙に違うのが面白い。

まあ、論より証拠、実際に聴いていただくのが一番だろう。

1位「BORN UNDER A BAD SIGN」

個人的には、このアルバート・キングのカヴァー曲が一番のオキニだ。

オーバーダブにより、ギターを2本にしているのだが、ヘヴィーなリフと、それに絡むねちこいリードが実にごキゲン。

もちろん、ジャック・ブルースの粘りのあるヴォーカルも、素晴らしい。

ファンキー・へヴィー・ロックとでもいうべき、オリジナルなブルース・ロックを生み出している。

コンサートではまず聴けなかったであろうナンバー。BBCの番組ならではの企画で、一聴をおススメである。

本盤、22トラックに加えて、クラプトンへのインタビューも4回分収録されているので、そちらにも大注目。

大半の曲を書き、歌っていたのはブルースなのに、毎回引っ張り出されていたのは、どちらかといえば寡黙なクラプトンだったというのは、興味深い。

これはまさに、クリームがデビュー当初から「エリック・クラプトンという"スター"を擁するバンド」としてマスメディアから把握されていたという証左ではないだろうか。

ブルースには申し訳ないが、やはり、生まれついての「華」があるのはクラプトンなのだ。

実際、番組の収録風景をとった写真など見ても、クラプトンばかりメチャカッコいい。ミュージシャンとしてもすぐれているが、それ以上に彼は「スター」なのだ。

歌わずとも、そのギターを弾く姿だけで、皆を魅了したクラプトン。

この11~12月にはまた来日公演を行うという彼の、人気の秘密がよくわかる一枚。

録音状態、演奏の出来にかなりばらつきがあるのがいささか残念だが、ファンならぜひ押さえて欲しいね。


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