NEST OF BLUESMANIA

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音曲日誌「一日一曲」#462 シスター・ロゼッタ・サープ「That’s All」(Decca)

2024-07-11 07:33:00 | Weblog
2024年7月11日(木)

#462 シスター・ロゼッタ・サープ「That’s All」(Decca)






米国の黒人女性シンガー/ギタリスト、シスター・ロゼッタ・サープ、1938年リリースのシングル・ヒット曲。ワシントン・フィリップスの作品。

シスター・ロゼッタ・サープは1915年3月、アーカンソー州コットンプラントにてロゼッタ・ヌービン(またはアトキンス)として生まれる。教会の歌手であった母親の強い影響でサープも6歳から歌とギターを始め、音楽の神童と呼ばれた。

1920年代半ばに母と共にシカゴに移住、ロバーツ寺院で宗教コンサート活動を行い、地方へもツアーする。1934年、19歳で説教師トーマス・サープと結婚。芸名をシスター・ロゼッタ・サープとする。38年に離婚、ニューヨークに移住する。

その地でサープの大きな飛躍が始まる。デッカレーベルと契約して、10月に初レコーディングを行う。その4曲のうちの1曲が、本日取り上げた「That’s All」である。

この曲はもともとゴスペルシンガー、ワシントン・フィリップス(1880年テキサス生まれ)が1917年に作り歌ったゴスペル・ブルース「Denomination Blues」であった。AB面にまたがる長尺の曲で、8000枚余りが売れ、当時としては結構なヒットとなった。内容はいたって宗教的なものだった。

サープはこの曲を「That’s All」と改題、歌詞も少し手直ししてレコーディングしている。デッカレーベルとしては、最初に録音したゴスペル曲だった(他の3曲「Rock Me」なども同様)。

ゴスペルとはいえ、バックにはジャズ楽団を配して、いかにも世俗的なムードのアレンジを施した本曲は、まもなくヒットして新人サープの名を大いに広めた。

サープの、ゴスペル仕込みのパンチの効いたボーカルはもちろんだが、時折り聴かれる彼女の流暢なギターフレーズが、リスナーのハートをしっかりと掴んだのである。

1930年代という、ギターはもっぱら男性が弾くべき楽器とされ、女性がギターを弾くことが極めて珍しかった時代に、サープは何の躊躇もなく、人前でその確かな腕前を披露したのだから、そりゃあ目立つ。「まるで男性のようにギターのうまい女性がいる」と評判が広まったのである。

サープのギタープレイには、都会的なブルースと、トラディショナル・フォークの両方のセンスが溶け込んでおり、その強靭なビート感覚には舌を巻く。

今聴いてみても、古さはほとんど感じさせない。38年録音というのに、50年代のロックンロールと並べてみても聴き劣りしないくらいの先進性がある。

後にこの曲は40年代に、アコースティック・ギターからエレクトリック・ギターに持ち替えたサープによって、テンポも少しアップして演奏されるようになる。

これがエルヴィス・プレスリー、チャック・ベリーーリトル・リチャードといったロックンロールのパイオニア達を大いに刺激したのである。ベリーは「オレは、キャリアを通じてずっと彼女の真似をしていただけさ」と語っていたぐらいである。

女性シンガーでは、アレサ・フランクリン、ティナ・ターナーらにも大きな影響を与えている。

歌とギター、両方でロックンロールの誕生に大きく寄与したロゼッタ・サープは、「ロックンロールのゴッドマザー」「元祖ソウル・シスター」の異名を取るようになる。

73年、58歳の若さで亡くなるまで精力的な活動を続けた、ロゼッタ・サープ。今も残っているパフォーマンス映像を観るに、そのステージは圧倒的な迫力がある。

新旧ふたつのスタジオ版、そしてライブ版の「That’s All」で、彼女というミュージシャンの桁外れのパワー、スゴさに触れてほしい。




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