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音盤日誌「一日一枚」#178 ザ・ヤードバーズ「バードランド」(ビクターエンタテインメント VICP-62289)

2022-05-11 04:59:00 | Weblog

2003年7月27日(日)



#178 ザ・ヤードバーズ「バードランド」(ビクターエンタテインメント VICP-62289)

ザ・ヤードバーズ、35年ぶりのニュー・アルバム。

68年に解散してからの、元メンバーたちの35年間の歩みをたどれば、それこそ単行本一冊分になってしまうから、ここではあえてそれにはふれない。皆さんもよくご存じのことであろうし。

ともあれ、ヤーディーズがビートルズ、ストーンズと肩を並べるくらい、特Aクラスのビッグ・グループであることは万人が認めるところだろう。

そんな彼らが再結成、35年ぶりに新作を出したとなれば、ヤーディーズ命!のワタシとしても聴かないわけにはいかない。

<筆者の私的ベスト5>

5位「MY BLIND LIFE」

今回のメンバーは、オリジナル・メンバーのジム・マッカーティ(ds)、クリス・ドレヤ(g)を中心に、新たにジピー・メイヨ(g、元ドクター・フィールグッド)、ジョン・アイダン(vo,b)、アラン・グレン(hca)を加えた五人。

これに曲によってはジェフ・バクスター、ジョー・サトリアーニ、スラッシュ、ブライアン・メイ、スティーヴ・ルカサー、そしてスティーヴ・ヴァイといった実力派ギタリストたちをゲストによんで、レコーディングしている。

で、日本盤の帯にはまったく書いてないので、見過ごされがちな事実なのだが、ジェフ・ベックも実は一曲だけ参加しているのである。

それがこれ。もちろん、メンバーとしてでなく、ゲストとしての扱いだ。

この曲ではベックはスライド・ギターを弾いているので、一聴として彼と判るようなプレイではないのだが、とにかく旧知の仲間たちとひさしぶりに再会、リラックスした雰囲気で演奏している感じが伝わってくるのがうれしい。

曲はドレヤの書き下ろし。粘っこいビートが特徴の、ハード・ブギ。

ここでなかなかいいプレイを聴かせてくれるのが、ハープのグレン。亡きキース・レルフにもまさるとも劣らぬ、本格派のブルース・ハープだ。

4位「HAPPENINGS TEN YEARS TIME AGO」

そう、日本でもおなじみのシングル曲、「幻の十年」である。

ヤーディーズよりは十年ほど下の世代に属する、TOTOのスティーヴ・ルカサーをフィーチャリングしての演奏。

アレンジは基本的には昔とほとんど変わっていないが、録音はオリジナルに比べて格段とよくなっている。さすがにデジタル技術の賜物なり。

注目すべきはもちろん、中間部やエンディングのルカサーのソロだが、音色もフレーズもベック&ペイジのスタイルを変に意識せず、いつもの自分流スタイルで弾いている感じなのがよい。

ツイン・リードが売りのオリジナル・ヴァージョンの素晴らしさは揺るぎないものがあるが、こちらもなかなかカッコよくまとまってます。

3位「CRYING OUT FOR LOVE」

当アルバムは15曲を収録。過去のレパートリーは8曲、オリジナルの新作は7曲である。

でも、基本的に昔ながらのギター・バンドとしてのスタイルは一貫しているので、新作・旧作がまったく違和感なく、シームレスに共存している感じだ。

で、ゲスト・プレイヤーの参加しているのは過去のレパートリーばかりで、聴き覚えがあるものだから、ついそちらに耳を奪われがちなのだが、どっこい、新作にもなかなかいいものがある。この曲もそれ。

ジム・マッカーティの作品。どこか「フォー・ユア・ラヴ」「スティル・アイム・サッド」を連想させる、哀愁あふれるマイナーのメロディ・ラインがいい。

ここでの聴きものは、あまり名の知られていないギタリスト、メイヨのギター・プレイ。これが実に端正で、周到に組み立てられたフレーズの連続。ハードに弾くのだけが、ロック・ギターではないと痛感。

緑神ことピーター・グリーンを彷彿とさせる才能で、思わず「やるのう、おぬし!」と叫んでしまうくらい。

こういう巧者がゴロゴロいるのだから、やはり海のむこうは層が厚いよな~。

2位「TRAIN KEPT A ROLLIN'」

このコーナーでも何度となく聴いてきたナンバー。ヤーディーズの十八番中の十八番。タイニー・ブラッドショー他の作品。

この「看板曲」をどう料理するか、誰もが注目するところだろうが、実に予想以上の大熱演。

リズム隊も張り切って、オリジナル以上にエキサイティングでタイトな演奏を聴かせてくれているし、グレンのアンプリファイド・ハープの響きも文句なしに素晴らしい。

そしてなんといっても、ゲストのジョー・サトリアーニ(元ディープ・パープル。スティーヴ・ヴァイの師匠格にあたるひと)のプレイが驚異的。

まずイントロのフレーズからして、ベックやペイジとはひと味違う。聴き手はここで「うむ?」と引きずり込まれる。

ソロ・パートでは、凡人には絶対コピー不可能な、超絶フレーズの連続、また連続。しかもただ速いだけじゃなく、リズムがビシッとキマっている。ベックのフリーキーなプレイを200%拡大コピーしたようなスゴさだ。

グレンのハイ・テンションなヴォーカルもレルフをしのぐ出来ばえ。新生ヤーディーズの面目ここにあり!ってな感じだ。

ただの「昔の名前で出ています」的、ビジネス最優先的再結成とはまるで違う、本人たちの「気合い」が伝わってくるね。

1位「SHAPES OF THINGS」

新生ヤーディーズのHP上で流れるテーマ曲としても使われているのが、これ。

第二期ヤーディーズを代表するヒット曲のひとつ。レルフ、マッカーティ、サミュエル・スミスの共作。

ゲスト・プレイヤーはスティーヴ・ヴァイ。彼は今回の新作をリリースした「FAVORED NATIONS」レーベルのオーナーでもあり、他のゲスト・ギタリストのアレンジメントをしたのも、彼だという。いわば陰の立役者。

そんな功労者ヴァイのプレイは、カッチョイイ!のひとこと。

愛用のワウ・ペダル「BAD HORSIE」を巧みに使った超高速プレイは、圧倒的のひとこと。

ベックもいまだに現役で、ヴォルテージの落ちない演奏をしているが、後続世代(ヴァイは60年生まれ)にも、着実にベックに迫る才能が育って来ているのがよくわかる。

残念ながらここでは取り上げなかったが、ジェフ・バクスター、ブライアン・メイ、スラッシュといった、他の後続ギタリストたちもなかなか気迫を感じさせるプレイをしとります。

こういった、多くの「子供たち(KIDS)」に影響を与えたザ・ヤードバーズって、やはりとてつもなくグレイトだったんだなと感じさせる一枚。

アルバムそのものの完成度としてはちょっと荒削りで、総花的な感じも否めないけど、ファンとしては実にうれしい贈り物でありました。

<独断評価>★★★☆


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