NEST OF BLUESMANIA

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音曲日誌「一日一曲」#424 ザ・マッコイズ「Hang On Sloopy」(Bang)

2024-06-03 07:23:00 | Weblog
2024年6月3日(月)

#424 ザ・マッコイズ「Hang On Sloopy」(Bang)





ザ・マッコイズ、1965年7月リリースのシングル・ヒット曲。ウェス・ファレル、バート・バーンズの作品。ボブ・フェルドマン、ジェリー・ゴールドスタイン、リチャード・ゴッテラーによるプロデュース。

米国のロック・バンド、ザ・マッコイズは1962年、インディアナ州ユニオンシティで結成された。メンバーはボーカル、ギターのリック・デリンジャー(当初は本名のゼリンジャーだった)、ドラムスのリックの弟、ランディ・ゼリンジャー、ベースのランディ・ジョー・ホッブス、キーボードのロニー・ブランドン、サックスのショーン・マイケルズの5人。

バンド名の由来は、ザ・ベンチャーズのヒット曲「Walk Don’t Run」のB面曲「The McCoy」だ。当初のバンド名、リック・アンド・ザ・レイダーズよりデビュー時に変更している。

彼らが65年にレコードデビューしたシングル曲が、本日取り上げた一曲、「Hang On Sloopy」である。

この曲には、ちょっとした前史がある。もともとこの曲はソングライター・コンビ、ウェス・ファレルとバート・バーンズが64年に書いて、ソウル・ボーカル・グループ、ザ・ヴァイブレーションズに歌わせたナンバーだ。

アトランティックレーベルよりシングルリリースされ、全米26位のヒットとなった。歌詞内容はオハイオ州立大学に関連しており、のちにオハイオ州の公式ロックソングとなっている。

つまり、もともとは黒人のR&Bナンバーとしてヒットしたのだが、これに注目した白人ロック・バンドがいた。64年ニューヨーク結成の、ザ・ストレンジラブズである。

メンバーはボブ・フェルドマン、ジェリー・ゴールドスタイン、リチャード・ゴッテラーの3人。彼らは65年に「I Want Candy」という全米11位のヒットを出しており、それに続く曲を探していた。

ストレンジラブズはこの曲を気に入り、ステージで演奏するようになる。しかし、彼らと共にツアーをしていた英国の人気バンド、デイヴ・クラーク・ファイブもこの曲のリリースを予定していることが分かる。ストレンジラブズは、なんとかライバルより先にリリースしたいと考える。

だが、多忙のため次作のリリースにまで到底手がまわらなかった彼らは、自分たちがプロデュース・サイドにまわって、他のシンガーに歌わせる手を思いつく。

というのは7月のオハイオ州デイトン公演の時、前座で出演した、リック・アンド・ザ・レイダーズという新人バンドに着目したからである。それも、そのフロントマン、リック・ゼリンジャーに。

若く(当時17歳!)、ルックスも良く、音楽的にもしっかりしていたリックを次代のスターにするべく、ストレンジラブズは彼をニューヨークのスタジオに呼び、自分たちがすでに録音していたバック・トラックに合わせるかたちで歌わせたのである。

このスピード・レコーディングにより、7月中にデビューシングルがアトランティック傘下のバングレーベル(作曲者バーンズが創設)よりリリースされる。目論み通り、曲は大ヒットして、全米1位の輝かしい記録を打ち立てたのだった。

この後、マッコイズは同年の「Fever」でも全米7位のヒット、人気バンドとしての地位を固める。ヒット曲としては、最初の2曲を上回るものは出せなかったものの、翌年にはリッチー・ヴァレンスの「Come On, Let’s Go」で全米22位を獲得している。

バンドはその後69年まで続く。彼らは世間のバブルガム(女子供向け)・ロックという評価に不満を持ち、67年バングレーベルからマーキュリーに移籍して、サウンドもサイケデリック・ロックに変化したものの、商業的には成功せずに69年解散している。

だが、彼らの実力を知るビッグ・ネームのミュージシャンがいた。ジョニー・ウインターである。

1970年に、マッコイズのメンバーのうち、デリンジャー兄弟とホッブスが呼ばれて、ジョニー・ウインター・アンドが結成される。同年のスタジオ・アルバム、翌年のライブ・アルバムで、リック・デリンジャーは、実力派ミュージシャンとして注目されるようになり、その後のソロ、あるいはバンド、デリンジャーとしての活躍が始まるのである。

リック・デリンジャーの原点、ザ・マッコイズはちょっとした偶然でビッグ・チャンスを掴んだわけだが、もちろんそれは運を引き込むだけの魅力、実力があってのことだ。

「Hang On Sloopy」は曲自体にも、十分ヒット性がある。リッチー・ヴァレンスの「La Bamba」あるいはトップ・ノーツ、アイズリー・ブラザーズの「Twist and Shout」にも通ずる、循環コードを生かした陽気で華やかなノリの本曲は、たぶん他のアーティストが歌っても、そこそこヒットしたと思う。

だが、他のアーティストでは、マッコイズほどの超特大ヒットには決してならなかった、とも思う。

リック・デリンジャーの持つスター性、甘くそしてワイルドなボーカルの魅力は、唯一無二のものだ。

65年を代表するビッグ・ヒット。若きロック・スター、リック・デリンジャーの勇姿を、当時のミュージック・ビデオでチェックしてみよう。

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