尼崎市武庫之荘の「女性センタートレピエ」で開催された、あまがさき女性フォーラム内のワークショップ『子どもの居場所づくりinあまがさき ~食を通じた居場所、学習支援を通じた居場所~』にて、「まあるい食卓」の事例発表の機会を頂きました。
私たちの他に登壇されたのは、
・「そのっこ夕やけ食堂」さん(尼崎市社会福祉協議会園田支部)
・「中高生世代の居場所づくり」さん(特定非営利活動法人スマイルひろば)
・「Viva~虹色のシャボン玉~」さん(尼崎市社会福祉協議会小田支部)
それぞれの皆さんが、子どもの居場所づくりに情熱を持って活動されている様子を、生の声でお聞きする貴重な機会となりました。
活動頻度や内容も様々で、いちど見学に伺ってみたいと思わずには居られない、楽しそうな様子が感じられました。
子どもさん達、ひいては社会全体の力になりたいと思ってる大人は、あちこちにたくさん居る!と勇気を感じる時間でもありました。
さて、今回発表の機会を頂いたことで、「まあるい食卓」のこれまでを、大まかではありますが振り返ることができました。
現時点での中間まとめという位置付けで、これからの変化の可能性も大いに含みつつ、発表させて頂いた内容を記載したいと思います。
【はじまり】
2015年の4月。
私たちの住む、尼崎市南部(長洲、金楽寺界隈)に、食事を十分に取れていない子どもが、少なくない数存在すると知りました。
自分の子ども時代を振り返っても、何があっても食事を与えられないということは、ありませんでした。
そのため、もしサポートを必要としている存在がいるなら、自分たちができる事で関わりたいと思うようになりました。
ところが、『食事を十分に取れていない子どもたち』の存在は、情報としては耳に入りましたが、実際には身近にいるのを目にすることは無く、どのようにサポートできるか想像もできませんでした。そこで、市の子育てコミュニティワーカー(CSW)さん、社会福祉協議会の相談員さんから、他の地域での取り組みなどのお話を聞き、「こども食堂」というものを始めてみようと考えました。
最初にしたことは、身近で興味を持ってくれそうな人に、考えていることを話すことでした。
すると、賛同してくれる人が集まり、すぐに5名のコアメンバーが固まりました。
次に、「こども食堂」を開催するための場所を探し始めましたが、これは難航しました。
今にして思えば、「ご飯をちゃんと食べていない子どもが、安心して食べられる場所を作りたい」という思いだけで、運営的なことは何もはっきりしないままのスタートでしたので、理解してもらえず、場所を使わせてもらえないのも最もなことだったと思います。
その後、メンバーからの紹介で、「喜楽苑地域ケアセンターあんしん24」の施設長(当時)を紹介して頂き、こちらの希望をお話ししたところ、すぐに賛同して頂き、毎月のイベント開催、およびミーティング、広報などにも全面的にご協力頂けるようになりました。ハード面だけでなくソフト面でも、全面的に支えて頂いています。
メンバーと場所が決まり、最初の運営資金はメンバーが出し合い、第一回目の「まあるい食卓」を開催しました。
2015年6月21日。
それ以来、毎月第3日曜日に、金楽寺の「あんしん24」にて「まあるい食卓」開催しています。
【活動の様子】
月に一度、第3日曜日の11~14時まで、金楽寺のあんしん24にて「まあるい食卓」開催。
提供される食材は、各地の生産者さんや八百屋さんなど、活動に賛同してくださる、直接顔の見える方から継続的に提供して頂いています。
一方通行にならないよう、お互いの様子や気持ちを伝え合う工夫をしていきたいと考えているところです。
また食材以外に必要な活動経費(チラシなど)は、協力店などに設置した募金箱への募金、およびイベント参加運営費(大人一人300円)から賄っています。
イベント当日は、調理スタッフによる調理、会場係によるセッティングなど、各担当に分かれて準備から片づけまでを行います。
この際、当日参加してくださったボランティアスタッフの方にも、大活躍して頂いています。
イベント参加者は、時間内に来て、準備されたご飯でおにぎりを握り、おかずとお味噌汁を受け取って、大テーブルで食事をします。
食後は各自、食器を洗って戻してから、各々好きな事をして過ごします。
月によっては、ボランティア出演者による出し物も。
また、各々が楽しんで過ごすと同時に、市内外の様々な場で支援活動をしている人たちや、これから支援活動をしたいと思っている人たちの横つながりの交流の場になっているといった面もあります。
【運営ポリシーについて】
☆「できる人が、できる時に、できることをする」
この活動を始めたいと思い模索を始めたころ、さる方より頂いたお言葉です。
これにより、よい意味で肩の力が抜け、気負わずに「まずはやってみよう」という気持ちになれました。
メンバーが集まってから、実際の開催までの期間が比較的短かったのは、この考え方によるところが大きいと思います。
また、この考えを守ることによって、メンバー間での率直なコミュニケーションや思いやりの関係が育ってきていると感じています。
☆「おたがいさま」の関係であること。
現時点では仮に、「支援」や「サポート」という言葉を使っていますが、なにかをしてもらう側、してあげる側、どちらに居ても同じ。
穏やかで自由で楽しい空気を、一緒に楽しむ。
上のポリシー「できる人が、できる時に、できることをする」にも関連しますが、得意なひとが得意なことをして、みんなで過ごす。
とてもシンプルな考え方です。
ふたたび「支援」という言葉を使いますが、それをする側も人間です。
あまり元気でない時もありますが、活動に参加して笑顔に触れることでまた元気を取り戻すということもあります。
まさに、おたがいさまの関係です。
☆人が大切にされること。
「まあるい食卓」の月に一度の開催では、食事の援助という意味ではあまりにも小さな力にしかなりません。
ここで受け取ってもらえるのは、「大切にされる」という経験だと思います。
小さい頃、周囲の大人たちから、声をかけてもらったり、世話を焼いてもらった記憶があります。その経験は、記憶のどこかに積み重なって、ずっと気持を温めるものになっていきます。
「まあるい食卓」の場では、できるだけ、「大切に扱われる」という経験をしてほしいと思っています。
参加してくれた子どもさんたちが、『自分はここにいていいんだ』という安心感をもって、ここを自分の居場所だと感じてもらえたら嬉しいです。
また、「人が大切にされること」の一つとして、食材の品質を指定させて頂き、イベント当日はスタッフが早くに集まって現地で調理して温かい食事を用意しています。
また食後には安全な環境で手作りのおもちゃで遊んだり、ボランティアの方からマッサージを受けたり。
「まあるい食卓」は名前が示すように、食を中心としたコミュニケーションの場です。そのため、食事を大切にするような意識づけも積極的に工夫しています。
・おにぎりマスター(お米を大切にするという意識づけに)
・食材提供者のパネル展示
・食卓での声かけ
など
【「こども食堂」から「地域食堂」へ】
「食事を十分に取れていない子どもに届けたい」
発足当初から、必要な子どもに、どうすれば届けられるのか話し合いを重ねました。
その結果、現在では、子どもに限定せずに地域のどなたにでも参加して頂ける、「地域食堂」へと方向を転換しました。
理由は3つあります。
・「ご飯を十分食べられていない子どもへ」という表現を前面に出すと、たとえ必要とされる方でも、入って来づらい。
・しんどい子どもの背景には、しんどい大人がいるのかも。できたら一緒に来て、一息ついてほしい。
・現時点では「必要」という訳ではなくても、子育てや仕事で忙しい方に一休みして頂くことにも、その先につながる意義があるのでは?
【さらに「たのしみ」の場へ】
・食にまつわるイベント・・・「クリスマスのアイシングクッキー(2015.12)」「みんなでお味噌仕込み(2016.2)」「テラスで焼きいも(2016.10)」
・桂あおばさんによる落語(2016.7)
・タッチケア支援センターの皆さんによるハンドマッサージ(2016.8~)
・ギター、鼻笛演奏
【私が考える「まあるい食卓」とは?】
☆「まず、メンバーありき。メンバーの気持ち・価値観を確認すること。」
様々な方から、ご厚意でたくさんのご意見やアドバイスを頂きます。
参考にさせて頂くことも多く、とてもありがたいと思う一方で、すべてのご意見を取り入れる訳にもいかず。。
そこで大切にしているのは、場を運営するメンバーの気持ちに沿っていること。
例え正しいことであっても、自分たちの気持ちにしっくり来ないままだと、せっかくの活動にも気持が込められません。
大切なのは、メンバーが納得してやりたくてやっていること。
ここがずれてしまって、曖昧なまま活動を続けるのは、メンバーには見えない疲れが溜まっていきますし、参加される方にも「よい記憶を持って帰ってもらう」ことに繋がりませんから。
(参加してくれた子どもたちに、「ここの大人は、行ってることと思ってることが違ってる」と不信感を持たれるのは、もっとも避けたいことです。)
主体であるメンバー間でのコンセンサスを得るために、できるだけ正直で率直なコミュニケーションを心がけています。
☆「女性が主体で、横並びの関係であること」
指示系統は持たずに、メンバー間のコミュニケーションによって様々なことを決めています。一度で納得する形にたどり着かなくても、やってみてしっくりこなければ方法を変えてみるといった、柔軟な姿勢が特徴です。
☆「地域や行政の職員さんのお力も活用させて頂くこと」
コアである自分たちの価値観・考えをしっかりまとめた上で、お力をお借りするようにしたいと思っています。
(文責:金岩日佐美)