【中古流通 インフィル業界の戦略】住宅新報記事
20年までに中古市場の規模倍増を目指す国土交通省。その一環として、リフォームの価値評価をテーマに議論を進めている。そこでは、耐震性など住宅の性能向上に直結するスケルトン(基礎・躯体)に対して、インフィル(内装)とりわけ住宅設備機器は、どのように位置付けられているのか。また、供給事業者側からすると、従来のリフォーム需要といえば居住中の住まいが中心。今後、伸張が期待される『中古住宅購入に合わせたリフォーム』という新分野へのアプロー...チは、どう進めているのか。現状の政策と、設備メーカーを中心とするインフィル業界の〝対中古流通戦略〟を追う。 (鹿島香子)
価格査定や担保評価の場面では、税法上の耐用年数に倣い、木造戸建ての建物価値が築後20年程度でゼロとみなされるのが実態だ。
国交省主催の『中古住宅の流通促進・活用に関する検討会』は6月にまとめた報告書で、こうした市場慣行にとらわれず、使用実態を反映させた評価体系を構築する方向性を提示。これに関連して同省は現在、リフォームを含む中古の価値評価をテーマに据えた有識者会議を複数、並行して進めている。
更新で減価率が縮小
その1つ『中古住宅に係る建物評価手法の改善のあり方検討委員会』が、8月下旬に1回目の会合を開催。『基礎・躯体』と『それ以外』、つまりスケルトンとインフィルに分けたうえで、部位別の期待耐用年数の目安を算出する方針を確認した。そして後者に関する資料として示されたのが、「米国で不動産鑑定評価の教科書として活用されている」(国交省)という『ResidentialCostHandbook』のデータ(グラフ参照)。経年に伴う減価率の変動を、イメージとしてグラフに起こしたものだ。
これによると、修繕や改修の度に『実質的経過年数』が短縮し、特に築70年弱の時点で『キッチン・浴室の改修、電気・給排水設備の更新』を行った際は、減価率が大幅に縮小。「設備の交換を含めて、価値の回復に貢献している」(住宅政策課の武藤祥郎住宅投資推進官)ことが分かる。
委員会では、こうした海外の実例を参考にしつつ、インフィルの更新の効果を建物価値に反映させる手法を引き続き模索していく考えだ。
省エネ基準改正が波及か
10月初旬に第2回会合を開いた『既存住宅のリフォームによる性能向上・長期優良化に係る検討会』では、リフォーム後の性能評価を前提に、中古住宅版の長期優良住宅制度の構築に着手している。
事務局を務める住宅生産課によると、検討の対象部位はスケルトンが中心。新築の同制度が、耐震性など主に構造躯体に関わる項目を認定基準としており、中古もこれに準じるからだ。そのため、インフィルに含まれる設備は現時点で対象外。ただし、評価項目の1つである省エネルギー性に資する要素としてみなされることが、「将来的にはあり得る」(松野秀生住宅ストック活用・リフォーム推進官)という。
背景にあるのが、10月1日付で改正された新築の省エネ基準だ。住宅の場合、外壁などで構成される外皮の性能のみだった基準に、空調や給湯などの設備を含めた『1次エネルギー消費量』が加わった。これを受けて国交省は、新築の住宅性能表示制度も改正する予定。現行の『省エネ対策等級』を『断熱性能等級』と名称変更したうえで、『1次エネルギー消費量等級』を新設する。
新築の長期優良住宅制度について、新しい省エネ基準に準じた改正の議論は現時点で始まっていないが、来年度以降に着手する可能性はあるという。そして、現在構築中である中古版の同制度もこの流れに倣うとすれば、「新築(の長期優良制度)の改正と同じタイミング」(同)となる見込み。
実現を仮定した時、中古版にも1次エネ消費量の基準が導入される利点について、同課の中野秀也課長補佐は「(躯体に手を入れる)断熱改修には大掛かりな工事が必要だが、設備の更新なら簡易に済ますことができる」と話す。また、松野推進官は「外皮の性能確保が前提」としたうえで、「中古住宅の外皮に、高い性能を求めるのは難しい。それを設備でカバーする、という考え方はある」と述べる。
高性能の最新機器
実際、メーカー各社が繰り出す最新の設備は、高い省エネ性能を誇る。
TOTO(福岡県北九州市)が販売するトイレ機器は、最も節水できるタイプで1回の洗浄水量が3.8リットルだ。同社の従来品の水量は13リットルであり、約3分の1で済む計算になる。肝は、「加圧ポンプとボール面」(同社)。加圧された水が流れることで節水になり、更にボール面の形状によって「汚れが付きにくく、流れやすい」(同)設計だ。
設備の更新がリフォームの価値向上の一因になる、との前提に立ち、国交省はその評価の仕方を探っている段階にある。それは良質な住宅ストックの蓄積という意味合いが強いが、市場が活性化するには、中古住宅の購入頻度そのものが増す必要もある。消費者を引きつける要素として、設備はどれほどの効果を持つのか。
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私見ですが、
人口減少、世帯数の減少、高齢者の増加、中古住宅の増加、空室の増加、所得の減少、低所得者の増加。
住宅リフォームと設備の更新は、費用対効用の考察、『不動産市場とライフプランの検討』が必要でしょう。
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