茶の湯 徒然日記

茶の湯との出会いと軌跡、お稽古のこと

炭所望

2010-07-03 23:44:00 | 茶道マメ知識
 炭手前の稽古の中で、炭所望というのがある。言葉通り、本来は亭主がすべき炭をつぐ部分を客に所望(お願い)するのである。炭所望は、茶事で、炭をつぐのが上手な客がいらしたり、雨で露地に出られず趣向に欠ける場合などに客に少しでも楽しんでもらうために行われることが多いそうだ。
 炭手前の経験の浅い私は時折先輩がする炭所望のお稽古を漫然と見て、自分も言われるがままにお稽古して、そういう趣向もあるのだという位の認識しかなかった。

 先日、先輩が先生に質問した。
「炭所望には3つしかありませんね、風炉では初炭のみ、炉では初炭と後炭。風炉で後炭所望がないのは壊れた灰形の中についで頂くのは失礼だから、またそもそもは炉の後炭所望が始まりということでしょうか。」
 不勉強な私はまず、炭所望が3つということ、初炭と後炭でどう違うのか、意識して考えたことがなかった。また、茶事での流れの中で炭所望となる場合についても考えたことがなかった。先輩と先生のやりとりを元に、家で改めて考えてみた。

 先輩の言った通り、風炉で後炭所望がないのは、壊れた灰形で行うことはしないため。

 初炭の所望について。考えてみると、炉も風炉も亭主が行うのと同じ形(基本形)に炭をつぐだけであり、ある意味面白味には欠けるし、炭の上手下手が出るとは思われない。また、炉の時期の茶事で初炭所望を行う場合、客は席入りしたばかりで、少々落ち着かないのではないか。
 そう考えると、後炭所望は、たけた炭の状態次第で客の炭のつぎ方が異なり、面白味もあり、上手下手もあらわれる。また、懐石も濃茶も終わって亭主も客も打ち解け、緊張感からも解放されて和やかな中で楽しめるように思う。

 味わいや趣向の観点から、炭所望は、もともとは炉の後炭から始まり、初炭の所望もあってもいいのではということで手前が生まれたのではないかというのが先輩の考えで、社中でもそう考えるとなるほど自然だと話し合ったのだが、実際のところはどうなのだろう。炭所望の歴史をご存知の方がいらしたら教えて頂きたい。
 
 個人的に思うには、所望の際は、連客もつがれた炭を拝見するわけだが、風炉の中を拝見するより、炉の中を拝見する方が味わいがある。風炉の時期は炭も小さいし、暑い時期で、炭に近づく喜びがなく、初炭なのでつぎ方にもかわり映えがしない。なるほど、きれいについであるなという位である。一方、炉の時期は炭も大きく、寒い時期なので、炭を拝見するだけでなんとなく囲炉裏を囲むようなほっこりとした気分になる。

 炭所望について色々考える機会を与えて下さった先輩と先生に感謝。ひとつひとつの点前のお稽古も大切だけれど、それが大きなくくりの中で、流れの中でどのような意味をもつのか、自分なりに考えることの大切さを教えて頂いた気がする。誰かが質問することで皆が考える機会ができ、お互いの知識が深まる。私も恥ずかしがらず疑問に思ったことは先生にぶつけ、先生の知識や先輩の知恵を頂いていきたいと思った。
 願わくばこのブログもそういう場になれば嬉しい限り。間違ったこともあるとは思いますが、現時点での自分の意見、考え、思いを書いていきたいし、それに対して皆さんの忌憚ないご意見を頂きたく、宜しくお願いします。
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8 コメント

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Unknown (たまな)
2010-07-04 05:29:53
ご無沙汰してました。お元気そうですね♪
先日稽古茶事があり、丁度、炭所望があったところです。
一応事前に打ち合わせの通り、お正客が炭を注ぎましたが、
普段は手順のお稽古をしていたものの、実際にお炭を注いだのは初めての方だったので、
とても感激していらしていました。
お稽古の場所などによって実際に火を使えないところもあり、
普段何気なく炭のお稽古をさせてもらっているのを改めて感謝したところです。
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点前も深いが炭も深い (ゴマ子)
2010-07-05 00:08:00
たまごさん、こんばんは。
蒸し暑い日々が続いていますが、お元気ですか?

さて、炭所望。おっしゃるとおり、なんとなく風炉の時期より炉の時期のほうが、炭の存在感増すというか、温かみがありがたく感じますね。

炭が白く尉になった光景が、しみじみ美しいなと眺められるになったのはつい最近のことです。
先生はじめ、社中の仲間といろいろ話し合える雰囲気、いいですね。
私自身は自分の勉強不足もあり、なかなか先生に質問する機会がないのですが
こうやってネット上でいろいろ考えるきっかけを与えていただくたまごさんのブログ、私にとっては大切な場所です。
こちらこそこれからもよろしくお願いします(^^)
返信する
炭所望・・・ (春旦)
2010-07-05 04:58:17
『炭所望』…表千家にも『習事』として稽古いたします
確かにお茶事では『初炭』…『後炭』はいたしますが『炭所望』までは、なかなか行うことはありません。
稽古としてお茶事の中に取り入れて行うことはありますが…
わたしもtamagoさま同様、何も考えず漫然と稽古していました
疑問を持つことは理解を深めることに一番ですし、見識が広まります
表千家も『炭所望』は炉だけで、やはり夏の暑い日に火に近づくのは、また客が火の回りに集まるのは暑苦しい、涼を求める趣向を凝らすときに逆行するからだと私も思っていました
ここでじっくり研究するのもいいですね
Tamagoさまのこのブログ、な~るほどと大変勉強になります…周りのみなさん研究熱心でうらやましいです
よりよいコメントが返ってくるといいなぁ~?
もちろんこのブログ…永久保存版に登録です
お弟子さんに話せる内容だと思っています
まだまだ自分自身不勉強なので、tamagoさまのブログで教えていただくばかり、これからもよろしくおねがいいたします
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ご無沙汰しています (m-tamago)
2010-07-07 23:10:06
たまなさん、こちらこそご無沙汰してすみません。なかなかパソコンを開く時間も限られて。コメント頂き嬉しいです。

茶事で炭所望、いいですね。
充実したお稽古をなさっているんでしょうね。

本当にお稽古場により、炭のお稽古をしたことがないということは多いようです。
本当に普段から炭のお稽古をさせてもらって感謝ですね~。最近は社中皆炭の稽古もするレベルになったので、基本的には順番を決めてやっています。なので、無駄にしないように~と真剣味が増しました。

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炭も深い (m-tamago)
2010-07-07 23:14:58
ゴマ子さん、こんばんは。
本当に毎日蒸し暑いですね、おかげさまで元気です。ゴマ子さんも元気よね?ご無沙汰してごめんなさい。

>炭が白く尉になった光景が、しみじみ美しいなと眺められる
確かに炭にまで目がいくようになるのってお稽古して随分経ってからのことでした。

先生に質問するって勇気がいることですけど、私は社中で若い方なので変なことを言っても許されると思って聞いちゃいます。最初はそんなことも知らなかったのかとあきれられることもしばしばでしたー。
言われないと気付かないことって多いですよね。ゴマ子さんとも色々言い合える仲になりたいと思っています♪
今後とも忌憚ないコメントをお待ちしています。
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炭所望 (m-tamago)
2010-07-07 23:28:52
春旦さん、こんばんは。
お茶事で炭所望まで行うというのはなかなか巡り合わなそうですよね。主客のレベルも相当でしょうし、そういう風に楽しめるほどのお仲間というのは年齢を重ねないととも思います。

>表千家も『炭所望』は炉だけで、
そうですか!これは貴重なことを伺いました。やはり炭所望の始まりは炉なのでしょうね。
裏千家は表千家に比べると点前の数も多いのですが、表千家と差別化を図るために変化させたり、増やしたりした点前も多いように感じるので、表がそうであれば、炭所望の始まりは炉かと思いました。

こちらこそ不勉強なので、今後とも宜しくお願い致します。ふとした疑問でも、考えていけるといいですよね。


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Unknown (Ms green tea)
2023-07-01 07:00:11
炭所望が、なんなのか参考になりました。ありがとうございます😊
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ありがとうございます (m-tamago)
2023-07-10 16:40:34
Ms green teaさん
古い記事にコメントをありがとうございます。
参考になったのでしたら、幸いです。

炭所望、コロナでしばらくやっていませんが、今年の冬は再開できるかなあ。。。。なんて考えました。
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