昭和１７年７月１７日

１７日　晴れ　涼し

退屈な一日。神武屯に凱旋してまだ、忙しい筈なのに、自分
の家に帰ったのでもうすっかり落ちついてしまふ。今日は兵舎
内外の整理をやらせる。指揮班長は官舎へ泊ってゐて、
今朝は十時頃出勤して来る。まだ、Ｒ本部だけが
来ただけなのでのんびりしてゐる。
将校室は一日中退屈で雑誌等を読んで日を暮す。
今日は日直勤務を取る。今は司令も居らず、呑気な
日直士官だ。点呼を取るだけで、その報告に行く事もない。
日夕点呼を八時に取る。日が長くてまだ明るい。
将校連中、退屈してゐるので今夜山を降りやうと言ふ。
僕は日直なんだが日直司令も誰もゐないのをいい事に
して出かけてしまふ。巡察の積りだ。鈴木、新井、岩本
中尉等と四人。遠い所を踏み切りを越えて、深川、
柳屋、一富士と三軒へ寄る。物資不足か、何も飲食
するものがなし。十一時半頃帰途に着き今夜引越
したと言ふ、合同官舎の妣屋へ寄ってみる。素見する積
りで寄った所聯隊長に見つかってしまひ、座敷へ上げられて
しまふ。比島から持参のビールを鈴木さんが取りに行って
そのまゝ逃げ帰ってしまふ。三人でＲ長のお相手。Ｒ長
は無理にも泊って行けと言ってゐたが酔って眠ったすきに
帰ってしまふ。神武屯にも大きな妣屋が出来たものだ。
就寝三時。
今日野淵少尉は事務連絡に孫呉に出張。一泊の予
定。
後の部隊は明朝２時頃到着の筈、今頃は着いて
ゐるかも知れない。

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＊　妣屋＝ピー屋（慰安所）？