(写真)タクシーの車内。昔は後席をシートカバーで覆ってベルトが使いづらいことが多かったのですが、最近では配慮している車も多いようです。最近では、乗車後、「シートベルトをおしめ下さい」との自動案内放送を流すタクシーも。
6月1日から、改正道路交通法が施行され、日本でも自動車の後席シートベルトの着用が義務化されました。警察は当面、違反者に対する反則の適用は運用上、高速自動車国道及び自動車専用道路のみとするようですが、これまでは努力義務であったものが、基本的にはすべての道路で義務となります。すでに、テレビ放送でも後席に座っているキャスターや登場人物がベルトを締めるようになっており、徐々に定着しつつあると思われます。
警察庁によれば、交通事故における後席シートベルト非着用者の致死率は着用者の9.4倍だそうで、また後席搭乗者がベルトを着用していない場合、前席搭乗者の頭部に重傷を負わせる可能性が高いそうです。
欧州では、後席着用はドイツでは1984年から、スウェーデンでは1986年から、フランスでも1990年から既に義務化されており、後席の3点式シートベルトも(中央席を含めて)普及しています。冷静に考えれば、交通事故の際の危険性は前席も後席もあまり変わらない訳で、私自身は、例えばタクシーや高速バスに乗車するときですらも、前からベルトを着用しています。さすがに一般の路線バスでは、そもそもベルトの装備が無いので、諦めていますが・・・。
(写真)首都高速道路を走る高速バス(東京空港交通の空港リムジンバス)。東京空港交通の車両には昔から座席には2点式シートベルトがあり、出発時には自動案内放送で着用を促している。
一部報道では、今回の法改正で観光バスのバスガイドさんが立ったままでの案内ができないであるとか、タクシーや高速・観光バスの乗客にベルト着用をお願いするのが難しいといった声もあるようですが、そもそもベルトは乗っている人自身の安全を、そしてその人の家族や友達の「幸せ」を確保するためのもの。法令を遵守しないような乗客には毅然とした対応で臨むべきであって、着装を拒否するなら、バスやタクシーの乗客といえど、また高速道路の途中であろうと、下車させるべきです(これは強硬論でもなんでもない、単に法令を遵守する行為)。ここで逡巡するようでは、業界全体の職業倫理が問われることとなります。巷には「選挙カーはどうするのか」といった声もあるようですが、ベルトを着用したまま窓から手を振るのは十分可能でしょう。後席ベルト反対論を報じる報道は、あたかも後席におけるベルト着用が過剰な規制であり、これに異議を申し立てることが正論であるかのように書きたてていますが、どうしてそんな議論が罷り通るのか、不思議で仕方がありません。
そういえば、今回の改正道路交通法では、75歳以上の高齢ドライバーに「もみじマーク」の掲出が義務付けられ、一部報道機関がそのことを「高齢者差別だ」「高齢の個人タクシー運転手は廃業を余儀なくされた」等と批判していますが、全く以って論点を摩り替えた、珍妙な議論です。