(写真)イェレミッチ外相(1月に開催されたEU・セルビア外相会合にて)(撮影:欧州連合理事会総事務局)
コソボ独立問題で世界からその対応が注目されているセルビア。そのセルビアを外交面で牽引しているのが、同国のイェレミッチ(Vuk JEREMIC)外務大臣です(写真上)。
一見、若く見えるイェレミッチ外相ですが、それもそのはず。なんと同外相は1975年7月3日生まれの32歳で、2007年5月15日にコシュトゥーニツァ現内閣の外相に就任したときは、わずか31歳の「青年」でした。
タディッチ大統領と同じ中道左派の「民主党」(DS)に所属するイェレミッチ外相は、首都ベオグラードの高校を卒業後、ケンブリッジ大学に進学。理論物理学で単位を取得し、卒業後はロンドンの金融街で外国金融機関の社員として勤務。その後、渡米してハーバード大学ケネディ国政学院で修士号を取得しました。
ここまでは普通の「若者」の経歴ですが、ちょうと2000年に祖国・旧ユーゴスラビアが民主化したのを機会に政界に参入。2003年には国防省に入省し、2004年から2007年まではタディッチ現大統領(同大統領とは通信相、国防相時代からの付き合い)の首席外交政策顧問となり、更には民主党理事に昇格。あれよあれよという間に地位を高め、遂に昨年、セルビアの外務大臣になったという訳です。外務省をはじめとする日本の役所で言えば31歳ならキャリア官僚でも課長補佐級。26歳で政界入りした自民党の杉村太蔵衆議院議員(現在、28歳)も衆議院の役職は「決算行政監視委員会委員」ですから、日本とセルビアの国の規模の相違をとりあえず無視しても、相当の出世と言えます。但し、上の経歴からもわかるように、外相はセルビア議会の議席は持っておらず、選挙の洗礼は受けていないようです。
若いながらもケンブリッジ、ハーバードを卒業したイェレミッチ外相は、さすがに英語もネイティブなみに堪能(その他、セルビア語の他、ドイツ語も話す)。ブリュッセルでの欧州連合(EU)関係の記者会見では全て英語で発言・応答し、コソボ地位問題をはじめとするセルビアの外交課題を丁寧に説明。英語圏の諸国には極めて強い発信力があります。