goo blog サービス終了のお知らせ 
マオ猫日記
「リヨン気まま倶楽部」編集日記
 




(写真)フランス陸軍のマーク

 報道によると、サルコジ(Nikolas SARKOZY)フランス大統領とメルケル(Angela MERKEL)ドイツ首相は2月4日、フランスの北大西洋条約機構(NATO)復帰への流れの一環として、フランスの新聞「ル・モンド」とドイツの新聞「南ドイツ新聞」に共同論文を寄稿し、独仏合同旅団のドイツ軍部隊をフランス本土に駐留させることで合意したことを発表したそうです。

 報道されたモラン(Herve MORIN)国防相の発言によると、仏本土に駐留するのは、独仏合同旅団に属する、偵察中隊、歩兵中隊及び隊本部からなる600~700人の規模の部隊で、駐屯地はアルザス(Alsace)州の州都(バ・ラン(Bas-Rhin)県県都)ストラスブール(Strasbourg)市近郊の人口2万5000人の自治体イルキルヒ=グラッフェンシュターデン(Illkirch-Graffenstaden)を予定。2009年中にも駐留を開始し、兵員数を徐々に増やしていく予定だそうです。

(写真)独仏国境のライン川にかかる橋。左側がフランス、右側がドイツ。

 戦後、ドイツ連邦共和国が発足してから、60周年である今年。二度の世界大戦を通じて戦火を交えた「宿敵」の独仏両国が和解し、侵略を受けた側のフランスがドイツの陸軍部隊の駐留を受け入れるのは確かに画期的なことで、仏本土にドイツ軍部隊が常駐するのは1945年以来64年ぶりのことだとか。もっとも、既に両国は第二次世界大戦後、共通の敵である旧ソ連に備えるため和解と連携を強め、最近では欧州連合(EU)の枠でも協力関係を深めており、パリ祭(フランス革命記念日)の軍事パレードでは、既に何度も武装したドイツ軍部隊が分列行進した実績もあります(最近では、2007年7月14日に、EU各国軍隊が行進した例があり、ドイツからはザール空挺旅団が参加。)。また、両国は、1987年11月13日にミッテラン(Francois MITTERRAND)仏大統領とコール(Helmut KOHL)独首相との間の合意に基づき、1989年10月2日にドイツ・バーデン=ヴェルテンベルク州(Land Baden-Wurttemeberg)ミュールハイム(Mullheim)に5400人規模の独仏合同旅団を創設しており、独仏混成の部隊(独軍指揮官の下に仏軍部隊が入ることもある。)を運用する実績を20年以上に渡って積み重ねています。その意味では、今回の決定も、歴史的な意義を有するとはいえ、また駐留先のアルザス州は独仏両国間の対立を生んだ地域とはいえ、既に独仏両国にとっては、政治的にはそれほど驚くべきことではないのかもしれません。実際、本件について、サルコジ大統領は2月7日、ドイツ・ミュンヘンで開催された第45回ミュンヘン安全保障会議において、ドイツ軍の駐留受け入れは「歴史的な出来事」であり、「フランスは、ドイツ連邦共和国の兵士をフランス共和国領土内に迎えることを栄誉とする。」と発言。また、メルケル独首相も、「第二次世界大戦以来初めてのことに我々にとっても栄誉かつ祝賀すべきことであり、フランスは独仏合同旅団がドイツのみならずフランスにも駐留すると宣言した。」と発言しているそうです。

(写真)国防改革を発表するサルコジ大統領(2008年6月17日)

 独仏合同旅団は、独仏混成の旅団司令部指揮・支援大隊のほか、独軍から第295砲兵大隊第292猟兵大隊(Jagerbataillon)、第550機甲工兵中隊が、仏軍から第110歩兵連隊第3驃騎兵(hussard)連隊(軽機甲部隊)が参加し、現段階では全ての部隊はドイツ領内に駐留しています。このうち、第110歩兵連隊は1692年創設と古い歴史を持つ部隊で、戦後の1953年からドイツに駐留。現在の駐留地であるドイツ・バーデン=ヴェルテンベルク州(Land Baden-Wurttemeberg)(仏アルザス州に隣接する州。州都シュトゥットガルト)ドナウエッシンゲン(Donaueschingen。人口約2万1000人で「ドナウ川の源泉」の一つとされる町)には1964年に第3機甲師団の一部として移駐し、1989年独仏合同旅団に所属換えとなっています。また、第3驃騎兵連隊も、1764年創設と古い歴史を持つ部隊で、1996年に現在の所在地であるイメンディンゲン(Immendingen)に移駐していますが、フランスの国防改革の一環で、2012年以降に解隊される予定です(独仏合同旅団には別部隊を指定。)。

 もっとも、今回の移駐決定の背景の一つは、2008年7月に公表されたフランス軍の国防計画も影響しているようです。同計画では、経費節減と装備近代化のため国内の部隊と駐屯地の削減を打ち出しており、サルコジ大統領は伝統ある仏陸軍各部隊の廃止・解隊も決定。これに対して、人口減に繋がる駐屯地所在自治体は反対姿勢を示しており(フランスの基礎自治体は、日本とは異なり昔から市町村合併をほとんどしていないため、規模がかなり小さい。)、その調整が仏国防省の一つの課題となっています(このあたりは、日本の陸上自衛隊も似た問題を抱えているらしいです。)。実は、独軍が駐留する予定のイルキルヒ=グラッフェンシュターデンの「ルクレール駐屯地」には、1814年創設のこれまた由緒ある仏陸軍第1工兵連隊が駐屯しているのですが、この部隊も国防改革の一環で2010年以降に解隊予定であり、独軍部隊は事実上その後継として駐留。こうすることで、部隊廃止に伴う地元への影響を最小限にしたいとの思惑もあるのではないかと思われます。



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )



« 小渕少子化相... お願い猫(マオ) »
 
コメント(10/1 コメント投稿終了予定)
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。