(写真)中央道の側道から高速道路の旧道へと入るところ
先日(といっても数カ月前ですが・・・)、山梨県内にある、中央自動車道の廃止された旧道区間なるものを見学に入って来ました。
中央自動車道は、東京都杉並区の高井戸インターチェンジと愛知県小牧市の小牧ジャンクションとの間を結ぶ全長366.8キロの高速自動車国道(左記の長さは、大月ジャンクションから富士吉田インターチェンジまでの富士吉田線を含む。)で、1967年12月15日に最初の調布IC~八王子ICが開通し、1982年11月10日の勝沼IC~甲府昭和ICの開通で全線開通となりました。
しかし、当初は片側1車線の対面通行方式での暫定開業で、その後はさすがに全線で片側2車線化されたものの、今でも東京近辺はそのまま片側2車線で、東京を起点とする主な高速自動車国道がいずれも片側3車線に拡幅されているのに、中央道だけは狭いままで、渋滞の温床になっています。ドライバーや周辺自治体の中には拡幅を求める声もあるようですが、現実問題として、高井戸~八王子あたりを拡幅するのは、新道路を地下にでも建設しない限り不可能でしょうから、この区間の渋滞解消は、他道路の整備や、いわゆる「3環状」高速道路の開通で対応することとなるのでしょう。
そんな中で、旧日本道路公団は、せめて山梨県内で片側3~4車線化を進めようと、渋滞の多発地帯となっていた談合坂ザービスエリア前後の上野原IC~大月ジャンクションを改築。これが2003年3月16日に完了し、それまで隘路となっていた片側2車線区間が片側3車線~4車線になるとともに、一部区間ではカーブを改良するため現道の拡幅ではなく新道を建設し、旧道を廃止しました。今回見に行ったのはこの「廃止された区間」で、既にインターネット上では紹介されていたのですが、改めて現地を見に行こうと思った次第です。
(写真)カーブが続く旧道区間。塗装が新しいのは、側道として現役の旧上り線(手前が東京方面)で、もちろん双方通行。
(写真)旧道の東側(上野原側)開始区間。右側の上り線(手前が東京方面)が側道として使用中で、左手の路盤は旧下り線。
現場は、中央自動車道・上野原インターチェンジを降り、国道20号線をしばらく走った後、さらに旧国道と思われる県道に入り、そこから市道を使えばアクセスできます。このあたりの中央自動車道は、両側に側道が整備され、そのうち中央道北側にある側道を走っていると、これがそのまま中央道の旧道へとつながっています。すなわち、上野原側から接近すると、側道が右にカーブして中央道から離れ、そしてそのまま旧道上の区間を走るようになります。
(写真)旧道東側区間の開始地点を東京方面を向いて撮影した写真。画面正面が東京方面(上野原IC方面)で、立っているのは旧道下り線の路盤上。この場所だけは、柵で囲まれておらず、誰でも自動車で立ち入ることができる。旧道はこのまま左へカーブしながら中央道へとつながっていた。
(写真)上の写真を撮影した地点から、小牧方面(大月方面)を向いて撮影した写真。旧道下り線は、低い高さながら柵で覆われ、施錠されたゲートが設置されている。
側道は、中央道旧道の上り線を利用していますが、高速道路時代の路面を改良して新たに舗装工事と塗装工事をしてあり、旧道そのものを走れるわけではありませんでした(もっとも、高速道路時代に使われていたと思われる、「速度注意」という看板が、撤去されずにそのまま使われていましたが)。
(写真)ゲートの上から旧下り線を撮影。カーブしている状況がわかる。廃止から既に7年近くが経過しているが、塗装はかなり残っており、雑草等もあまり無いので、今でも現役の道路として使えそうな様子。
(写真)旧道区間のほぼ中央あたりから、側道として使われている旧上り線を見る。黄色い「速度注意」の看板は、明らかに高速道路時代のものをそのまま流用している。
他方、下り線側は、廃止されたあとそのままの形で残されていましたが、こちらはフェンスに囲まれ、道路としてはもはや使用されていません。立派な路面だけに、なんだか惜しい気もします。もっとも、これだけカーブが続いている区間というのは、やはり高速道路としては「不適格」で、実際、中央道の新道と旧道が分岐するあたりに立つと、旧道がいかに曲がりくねっていたのかがよくわかります。今では、この新道区間を走っていても、そこから旧道が分岐していたということは、普通のドライバーにはわからないほど自然に整形されています。
(写真)旧道東側地点の近くにある神社から見た旧道。
(写真)旧道区間の中央付近。手前の柵は、旧道上り線の追い越し車線上に設置されていて、かつての中央分離帯のガードレールは撤去されており、そこから雑草が伸びている。
側道をそのまま走ると、旧道が再び新道と合流する箇所の手前で、側道は終了。急角度で右折する道となり、そのまま右回りで旧道そして新道を越える道路橋につながっています。
アウトバーンを戦前からいち早く整備してきたドイツなどはともかく(ちなみに、ドイツで初めて開通したアウトバーンを走行したことがありますが、今では昔の面影を全く留めないほど近代化改良されています。また、ベルギーには、建築計画が中止されて放置されている立派なインターチェンジがある)、高速道路建設が戦後に始まった日本では、高速道路時代が短い区間でも廃止されたところはごく一部(中央道のこの区間のほか、名神高速道路や北陸自動車道などにある)なので、珍しい風景でした。