マオ猫日記
「リヨン気まま倶楽部」編集日記
 




(写真)コソボの新国旗

 既に速報したとおり、セルビア共和国コソボ・メトヒヤ自治州を暫定統治する国連コソボ暫定行政団(UNMIK)のコソボ暫定自治機構(PISG)議会は2月17日午後3時49分、出席した109人(定数は120議席)の議員全員の賛成を以って独立宣言を採択。「コソボ共和国」としてセルビアからの一方的独立を宣言しました。

(写真)独立宣言を朗読するサチ首相

(写真)コソボの位置

 17日に独立宣言が行われるとの観測は既にその前の週から報道されはじめ、週末に入ると現地は祝賀準備ムード一色に。16日(土)は前夜祭のようになり、アルバニア系住民がアルバニア国旗を多数掲揚し、独立を強く支援してきたアメリカに感謝するためか星条旗も多く見られました(EU旗やイギリス旗、ドイツ旗は少数)。

(写真)独立を祝うコソボ・アルバニア系市民

 もっとも、コソボ議会が正式に採択した国旗(写真一番上)は、青地にコソボの領域を示す黄色い地図、更に6つの星(コソボに住む6民族を象徴)を配置した図案で、どちらかというとボスニア・ヘルツェゴビナの国旗に類似しています。報道によれば、新国旗制定の過程で、新国家は民族間の平等を実現し、かつ非宗教国家であるべきとの観点から、アルバニア国旗の色使いやデザイン(黒い双頭の鷲)等、特定の民族や宗教を示唆するデザインは回避されることとなり、最終的に現在のPISGの紋章(写真下)を発展させたような現在の国旗に落ち着いたようです。

(写真)コソボ暫定自治機構(PISG)のこれまでの記章。なお、国連暫定統治下にあった時代は、国連旗が「国旗」の代わりになっていた。

(写真)ボスニア・ヘルツェゴヴィナの国旗。星印は欧州連合(EU)加盟への展望を示している。もっとも、ボスニア独立後、国際社会側が提案した案を採用したためか、当のボスニア国民にはあまり受け入れられておらず、現地ではセルビア系国民はセルビアの、クロアチア系国民はクロアチアの旗をよく掲揚している。

(写真)アルバニア国旗。「双頭の鷲」のデザインはロシアやセルビアといったスラブ系諸国に通じるものがある。コソボの首都プリシュティナでアルバニア系住民が持っていたのは、一番上の写真の新国旗ではなく、このアルバニア国旗であった。

(写真)こちらはコソボ新国旗の制定検討過程で検討された案の一つ。アルバニア国旗の色を採用しつつも、民族的な色彩を排すべく「双頭の鷲」は採用されていない。

 一方、独立宣言を受けてセルビアは、コシュトゥーニツァ首相が午後4時から記者会見を行い、独立の無効を宣言。首都ベオグラードのアメリカ大使館前には抗議のデモ群衆約2000が押しかけ、一部は興奮して大使館に投石したり、発炎筒を投擲。警察の機動隊500人と睨み合いになっている他、スロベニア(EU議長国)大使館、フランス大使館も防護されているようです(さすがにセルビアとしても外国大使館の保護はウイーン外交関係条約上の義務なので、治安部隊を出動させている)(その他、「マクドナルド」も襲撃された模様)。セルビア系住民が多いコソボ北部でも、独立宣言に反対し、あるいは今後の生活を不安視する住民の一部が街頭に出ているようです。

(写真)独立宣言無効を説明するセルビア本国のコシュトゥーニツァ首相

 事態を受けて、アメリカは、コソボ地位問題を早期に幕引きするため、コソボの独立を速やかに承認する予定の他、欧州連合(EU)は、2月18日の総務・対外関係理事会において、対応を協議する見込みですが、EU加盟国の一部(キプロス、ギリシャ、ルーマニア、ブルガリア、スペイン)は、国内に分離独立問題を抱えるため、EU全体として独立コソボの国家承認をすんなりと勧告できるかどうかは不透明な情勢です。EUはまた、欧州防衛・安全保障政策(ESDP)「法の支配」ミッション「EULEXコソボ」(2000人規模の派遣団で、警察官、裁判官、検察官、税関職員を含み、新国家において直接司法権を行使する)を派遣する他、近日中に設立される国際文民事務所(ICO。トップは国際文民代表(ICR)が務め、独立コソボで直接統治権を有する)への貢献を通じて、実質的にコソボを管理。疲弊した経済の再建やかつて敵対したアルバニア系・セルビア系住民が安心して生活できる社会、制度作りを支援していきます。

 もっとも、独立に反対するセルビア、ロシアは緊急の国連安全保障理事会の開催を要求、独立を無効としていることから、新国家が確固たる法的基盤を確保し、国連に加盟するには相当の期間待たなくてはならないでしょう(国連加盟は安保理の勧告に基づき国連総会において加盟国の3分の2以上の賛成が必要)。EULEX部隊にしても、現在の国連コソボ暫定行政団が縮小・撤退しないことには展開しづらく、今後、米欧諸国は、セルビア側の対コソボ制裁措置やコソボ承認国に対する対抗措置を見ながら、独立の既成事実化を進めていくものと見られます。

 



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