象が転んだ

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大国のジレンマ〜”ブタペスト覚書”と日米同盟

2023年01月27日 12時48分16秒 | 戦争・歴史ドキュメント

 アメリカを傲慢にし、プーチンを狂人化させ、更にウクライナを骨抜きにした1994年の”ブタペスト覚書”。
 今回のロシア=ウクライナ戦争では、(ドンバス戦争の停止に関する)ミンスク合意(2014)のもつれが尾を引いた結果の悲劇とされている。が、本当の要因は、その20年前に交わされたブタペスト覚書という空約束にあった様に思う。
 この覚書を一言で表せば、米露両”大国のジレンマ”となろうか。
 因みにジレンマとは、相反する2つの選択肢からどちらか一方を選ぶ必要に迫られた時、そのどちらを選んでも不利益を被りかねない状態の事で、”板挟み”を意味する。 

 この覚書により、アメリカとロシアが主導した平和合意の結果、ウクライナ(ベラルシ、カザフスタン含む)は核兵器を放棄(ロシアに移転)した。が、それまでウクライナは(運用こそしてないが)世界3位の核兵保有国でした。
 しかしプーチンは掌を返し、この覚書を無効にするかの様に、骨抜きになりつつあったウクライナからクリミアを一方的に併合し、ウクライナ東部のドンバス地域を占拠します(2014)。
 これが2度に渡るミンスク合意(1914、1915)を生み、プーチンにより一方的に破棄され、今回のロシア=ウクライナ戦争(2022〜)に繋がってる事は明らかですね。
 しかしプーチンは、それだけでなくブタペスト覚書をも破棄してしまった。つまり、この時点でロシアとウクライナは実質上の絶縁状態となる。今更、”ウクライナはロシアの領土だ”と侵攻を正当化できる筈もない。

 事実、今回の戦争が起きた時、ウクライナ外相は”アメリカとロシアがウクライナの核兵器を奪わなかったら、賢明な選択が出来たかもしれない”と述べた。
 結局、米露にとって最適利得となる筈だったブタペスト覚書こそが、今回のロシア=ウクライナ戦争という世界経済をも巻き込んだ最悪の結果を生んだと言える。
 一方で、核兵器放棄の見返りとしてのアメリカとロシアの安全保障の確約は得られず、ウクライナは両大国とブダペスト覚書に裏切られる形となった。
 プーチンは最初から、アメリカがウクライナに安全保障を履行する能力(と気持ち)がない事を見抜いていた。


ブタペスト覚書と日米同盟

 そして今、日本でも同じ様な悲劇が繰り返されようとしている。つまり、ブタペスト覚書の日本版が日米同盟と考えると、これからの展開も大方だが読めてくる。
 骨抜きになったウクライナは以降、プーチンにいい様に侵略された様に、日本も台湾有事を名目に大国中国にいいようにあしらわれるのだろうか。
 まるで”囚人のジレンマ”の令和版とも言えるが、(ゲーム理論では)終わりのある繰り返しゲームでは、この悲しいジレンマが延々と続く事が証明されている。逆に終わりの見えないゲームでは、両大国が悲しいジレンマを中断させ、駆け引きを講じる事も証明されている。
 今は後者を願うしかないが、事実、キューバ危機(1962)の時の原子力委員長のフォン・ノイマン(米)は自身のゲーム理論を用いて、最悪の危機を脱したとされる。

 当時のウォールストリート・ジャーナルの社説「ブダペスト覚書に裏切られたウクライナ」では、以下の様な警鐘を鳴らした。
 ”ブダペスト覚書は、独裁者たちが<力は正義だ>と考える世界にて、文書化された約束を信頼する愚かさを改めて示した。
 更に有害なのは、核兵器を放棄する際は自国の危険を覚悟する必要があるというメッセージだ。それは北朝鮮が学んだ教訓であり、イランが核兵器開発の凍結を約束したにも開発を画策してるのも同様の戦略だ。
 アメリカにブダペスト覚書の約束を実施する能力がない事は、アメリカの軍事的保証に依存する同盟国政府にも影響を及ぼすだろう。日本や韓国が自前の核抑止力を持とうとしても驚くには当たらない。アメリカ人がウクライナ問題に注意を払うべき理由を知りたいと言うならば、それは核の拡散だ。
 裏切り行為は結果をもたらす。世界はそれを厳しい形で再び学ぶ運命にある”

 これに対し、国際政治学者のアンドリー・グレンコは”なぜ、あんな(覚書の)いい加減な内容を信じのか?当時のウクライナの指導者も国民も、何かあった時にはアメリカがいるから大丈夫くらいの認識だった。それで、核兵器をロシアに渡してもいいと思った。当時のウクライナ社会では核兵器に関する認識が絶望的になく、その無知ゆえに核兵器を安易に放棄した。
 つまり、同盟国のアメリカが核や武器を持ってるからいらないと、物事の本質を見ず(覚書の)条文をイメージで信じてしまった。簡単に言うと<平和ボケ>していた。そこがウクライナの教訓だ”
と主張した。


最後に〜平和の本質とゲーム理論

 この事は、今の日本にも言える。
 だが、今更自前の核兵器で武装し、軍備を増強してもすでに遅いし、無謀すぎる。
 アメリカが”今の俺たちでは君たちを守る力はない”と漏らしたとしても、それなら日本は徹底して平和的に行動すべきである。それこそが真の平和外交であり、日本が進むべき道ではないか。
 平和と平和ボケは違うし、岸田政権は平和の本質を履き違えてる様に思える。少なくとも、平和は税金と軍事力で買えるもんではない。
 ”戦争の裏返しが平和である”という大国の論理が真であるなら、大国のジレンマにより、とっくに人類は死滅してる筈だ。つまり、平和とは戦争とは無縁の領域に存在する。
 しかし、岸田政権はその真逆を行っている。まるで勝ち目のない太平洋戦争に突入していった様に・・・

 ゲーム理論で言えばだが、今の日本は最悪の結果を招こうとしている。
 独裁者も権力も永遠ではない。同じ様に、戦争も平和も永遠ではない。
 今はアメリカ従属よりも、中国を含めたアジア全体の調和を優先する方が最適選択のような気がする。
 勿論、中国共産党の独裁と傲慢が永遠でないという条件付きではあるが・・・

 我々はいま、危険な海の中を漂流している。だったら、その危険の本質を探り、注意深く排除するのが、真の意味での平和的行動ではないか。
 かつてリーマンが素数定理を複素領域の世界で解析し、素数の本質に迫ったように・・・
 ”戦争反対!平和が一番!”と戦争と平和を同じ領域と次元で考え、そして慢性的に叫ぶだけでは、結果的に平和どころか最悪の事態を招きかねない。
 同じ様に、平和の本質を注意深く見抜くのも我ら大衆の責務かもしれない。

 ただ、そうした数学的な調和思考が岸田総理にあるとは、とても思えない。
 日本の破滅もそうだが、数学的思考が欠如した岸田内閣陣の慢性的に腐った思考も恐ろしいもんである。



6 コメント

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Unknown (1948219suisen)
2023-01-27 14:22:53
この記事を読ませてもらうと、北朝鮮の金正恩は賢いということになりますね。日本もウクライナを他山の石としてもっと賢くならないとウクライナの二の舞い、いやもっと酷い裏切りに遇う可能性大ですね。第二次世界大戦でもロシアに不可侵条約を反故にされていますから、今はどこの国も信じてはいけないと悟るべきでしょう。
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ビコさん (象が転んだ)
2023-01-27 15:21:34
賢いというかバカというか・・
危険な選択には変わりはないんですが。
でも、安倍や岸田よりかは狡猾さはあるみたいです。

国家間の条約や同盟には裏切りが存在しますが、その裏切りは最悪の事態をもたらす。
日米同盟も不透明な点が多く、最悪のケースも考える必要がありますね。
本来なら、アジア各国の安全保障はアジア全体で考える必要があります。

でも、岸田内閣は数学的思考を無視し、アメリカ従属に舵を切りつつある。北の核開発よりもこっちの方が危険かもですね。

それと、ビコさんの所は凍結が酷かったそうで、こういう時は外出は控えた方がいいですね。
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戦争と平和 (腹打て)
2023-01-27 18:53:07
戦争による平和なら
ごく一部の人間が裕福になるが
戦争抜きの平和なら
生活の質と量をずっと落とすしかないから
みんな貧乏だろうな。
それこそが転んだ君が目指す穏やかな人類みな総貧乏の時代。

それでも戦争で地球の裏側の住人が悲惨な目に遭うよりかはマシだけど。
ただこれまで散々贅沢してきた一部の民は、そんなのには耐えれんだろう。
だから戦争はなくならない。
案外、金持ちを排除したほうが戦争撲滅の近道かもしれないけど
富を得るための戦争はいつしか富を手放す戦争になり、戦争そのものが富を奪い去り、金持ちを死滅させるかもしれない。 
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腹打てサン (象が転んだ)
2023-01-28 00:55:49
戦争が富を奪い去り、金持ちを死滅させる。
そういうシナリオも考えられますね。
従来は領土的野心や賠償金目当ての金儲けの為の戦争でしたが、これからは損失と犠牲しか生み出さない戦争です。

国家間の同盟と言うより、国家間の調和の時代。調和を保つ事で結果的に平和をもたらす。
貧乏でもいいから互いの調和を目指す世界になってほしいです。
つまり、平和の本質は調和にあるのかもしれません。
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数学と平和 (#114)
2023-01-28 16:09:27
確かに
数学的思考がないと
平和外交なんて夢のまた夢
そういう事を岸田内閣は理解してるのか

キューバ危機の本質が
囚人のジレンマにあると見抜いた
フォンノイマンも凄いけど
それを受け入れた
ケネディもフルシチョフも凄いといえる

数学は調和を大切にするから
平和外交では力を発揮するけど
超大国は力を誇りたがるから
強行外交に傾き国家間は分断する

つまり
戦争と平和ではなく
数学と平和というか数学と調和
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#114さん (象が転んだ)
2023-01-29 01:47:41
権力者も独裁者も
超大国の指導者というのは、永久的な絶対的な力を追い求めます。
一方で、数学は常に調和を追求する。
調和こそが平和の本質なんですね。
平和外交と言うより調和外交の時代。

囚人のジレンマも互いの利得ではなく互いの調和を優先すれば、裏切りの連鎖は防げる筈です。
数学に疎い人種からすれば、数学で何ができる?たかが机上の理論じゃねーかって言われそうですが
その机上の理論が宇宙や自然の神秘を次々と解き明かしてる事実を垣間見れば、歴史や現実というゲームも解き明かす確率は非常に高い。

私が数学的思考が重要だというのは、そういう所なんですよね。
でもなかなか上手く伝わらない。
伝わったとしても、ごく一部だけです。
悲しい事ですが、これも現実なんですよね。
同意のコメントありがとございます。
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