象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

「翔んで埼玉」に思う、”埼玉開放”の熱き思い〜”世界の埼玉”の全てが、この映画には実在する〜

2020年03月03日 06時35分23秒 | 映画&ドラマ

 思わず笑い転げてしまった。

 日本のコメディやお笑いは、今や世界でもトップクラスだが、ここまでお笑いに特化すれば、超辛口の映画評論家(私もだが)も一言も文句は言えまい。
 米アカデミー賞にコミカル部門があれば、間違いなくオスカーであろうか。
 そういう私は、北欧ミステリーや法廷モノ、Sキング系ホラーなどが大好物だが、この作品に関しては、手放しで褒め称えたい。

 ”埼玉開放”を本気で叫んだ107分の白熱したドラマには、とても充実した異色のコメディ、いやコメディの王道が実在した。
 62万部を突破した原作漫画も凄いが、映画としても評価も相当なもので、日本アカデミー賞では全15部門の内、最多12部門でノミネートを果たし、約38億円を売り上げた。その上、英語版のウィキでも紹介されるなど、国内外での評価も高い。
 そこで「翔んで埼玉」の実像と真相について迫ります。


たかが埼玉されど埼玉

 昨年2月に公開された映画「翔んで埼玉」は、魔夜峰央が書いた、僅かに3話の漫画「翔んで埼玉(宝島社)」を映画化したものだ。
 単に、“埼玉県に対する悪意のある作品となる”懸念から連載を中断し、未完の作品となっていた。しかし、”いま埼玉をディスれって言われても、(新潟出身の)私には本当は書けない。あれは一時的な気の迷いで、錯乱し、半狂乱で描いていた”と、魔夜氏は当時を振り返る。
 実は、彼が当時引っ越した所沢市には、編集長と編集部長が住んでて精神的拘留状態にあった。そんなギリギリの状況の中で「翔んで埼玉」が生まれ、その後、彼は横浜市に移った。
 つまり、ここで続きを描くと自虐いや悪口になるとの、”未完”の表向きの理由を魔夜氏は語るが、満更ウソではない様な気もする。

 1986年、白泉社より短編集の中に収録される形で刊行されたが、殆ど話題にならなかった。しかし発表から30年以上経った2015年に、SNSなどネット上で衝撃的な内容が話題になり、宝島社より復刊される事になる。
 その後、TV番組で取り上げられ、更に反響を呼び、2016年には発行部数が50万を突破した。埼玉県知事の上田清司も”悪名は無名に勝る”と、あえて肯定的なコメントを残した。
 魔夜氏は、発表30年以上を経た後の好反響について、”なぜ売れているのか分からない”と語る。

 昨年5月に、イタリアで開催されたウディネ•ファーイースト映画祭では、”マイムービーズ”賞(ネット投票の観客賞)を受賞した。
 “埼玉ディスり”が話題になった同作品は、シカゴ(米)で行われたアジアン•ポップアップ•シネマでも観客賞を獲得。”地域格差ネタ”は、埼玉を中軸とした日本だけでなく、海外の人たちにも大ウケだったのだ。
 メガホンをとった武内英樹監督は、”世界埼玉化計画が進行し、埼玉が地球上に浸透しているのを実感してます”と熱く語る。


地域格差を生き延びた埼玉県人

 私は九州の出身だから、こういった関東平野の地域差別の事はよくは解らない。だから”ダサイタマ”と言われても、笑うに笑えない。いや、なぜ埼玉が差別されるのかがあまり理解できなかった。
 しかし、私の(柳川>蒲池藩)も元々は微妙?に差別されてたから、バカにされる埼玉県民の気持ちは、他人事だが多少は理解できる。
 因みに、”柳川と蒲池藩”の関係については後にブログ立てるかもです。

 この映画では、東京都からの差別脱却の為に、埼玉解放戦線の必死の奮闘をユーモラスに描いてるが、逆に面白すぎて笑えない部分も確かにはあった。
 ”埼玉県民には、草でも食わせておけ!”の東京都民の罵声には、少しグッとくるものがある。

 笑えるけど笑えない。

 つまり、埼玉県民にしか理解できない言葉だ。勿論、私も含めて東京都民や横浜市民にも、この言葉の本当の意味は理解できないだろう。しかし、埼玉県民だけはこの言葉の真意を理解し、笑って過ごせるのだ。
 
 埼玉県民が東京へ行くには通行手形が必要だ。しかし勝手な行動は許されず、高級クラブにでも足を踏み入れれば”埼玉狩り”にあい、百叩きの上に埼玉に強制送還される。
 食堂でも東京都民とはメニューが分かれ、埼玉県民用のメニューは”残飯定食” ”犬のよだれご飯” ”雑草まぜご飯”など。
 これらは全て、原作の漫画「翔んで埼玉」でも描かれてる”埼玉いじり”の一部だが。
 さぞ埼玉県民は怒るに違いないと思いきや、実際には大笑いしてるのだ。埼玉県人でなくとも”怒りの鉄拳”となってもおかしくない状況だが、彼らは笑って済ませる事が出来る。

 毒蛇に噛まれても平気なラーテル(マングースの一種)の様に、そのラーテルが逆に毒蛇を好物にする様に、埼玉県人は”埼玉いじり”をいとも簡単に咀嚼し、食い尽くしてしまう。
 これが黒人と白人の差別だったらこうはいかない。”黒人にはドブ水を飲ませろ”なんてギャグが存在したら、第二次南北戦争に発展するだろう。


なぜ?埼玉だけが生き延びたのか?

 事実、魔夜峰央氏はこう語る。 
 ”都道府県を描いてもこうはいかない。絶対にもの凄い反感が来る。埼玉県の人たちは凄く心が広くて、自分の事を笑い飛ばせる様な度量がある。埼玉って便利な所で、農産物も豊富で何でもありますから。安心して自信があるから、おちょくられても笑い飛ばせるのかな”

 また、地方に注目が集まってる事も”ダサイタマ”人気を後押しした。
 地方自虐漫画を集めた「この”地方ディスマンガ”がひどい!」を発売した宝島社は、”青森県の様に、自虐ネタでPRを盛り上げてる地方も増え、多くの方がそれを楽しんでる。その流れで、他の地方ディス漫画作品も注目され、人気を呼んでる”と話す。

 事実、漫画「翔んで埼玉」の売上の3割は、埼玉県人で占められている。映画館での”埼玉賢人”の笑い声がここまで聞こえてきそうだ。

 最後に、魔夜峰央氏はこう締め括る。
 ”実は作品(原作)内で、埼玉県よりも田舎として、気の弱い女性は地名を聞いただけで卒倒すると、茨城県をディスってる。
 茨城は妻の実家という事もあり、身内感覚で適当に描きました。しかし、茨城はこんな酷い所ではないとクレームを頂いた(笑)。でも、それが普通の反応だと思うんです。
 出身地の新潟は、流石におちょくる気もないですが。とにかく一年中曇ってる。新潟は大きくて素敵な都市ですが、一年中暗い感じで、やはり県民性も若干重い。
 だから下手に新潟をディスると、決してガーガー文句は言わないでしょうが、黙って五寸釘で藁人形を打ってるんじゃないかと(笑)。
 おちょくり易いのは埼玉や千葉になるんでしょうが。千葉も危ない。「パタリロ!」で少しおちょくってはいますが、あれが限度ですね。千葉の人は埼玉よりも上だと思ってますから(笑)”

 
 つまり「翔んで埼玉」は、差別をする側の愚かさもギャグとして風刺し、単なる”埼玉いじめ”の構造で終わってはいない。その土地の事をよく理解してなければ描けないだけに、むしろ愛情を感じる作品に仕上がっているのかもしれない。
 以上、”AERAdot”の魔夜峰央さんのコメントを参考にしました。


最後に

 原作がしっかりしてるだけに、映画も”埼玉のそのまま”を継承していた。
 故に、とても純粋に純朴に原作者の埼玉に対する想いと、監督の地域差別に対する思いが等身大に伝わってきた。
 勿論、差別はイジメはいけない事だ。しかし、それらを吹き飛ばすくらいのエネルギーと、快活で乾燥した明るさも必要だと思った。
 繊細で傷付き易い現代人は、自分に都合の悪い言葉を突き付けられるとすぐに落ち込んでしまう。逆に少しでも褒められるとバカみたいに有頂天になる。
 今こそ、日本人は埼玉の県民性を見習うべきだ。多少の差別やイジメやパニックは笑って吹き飛ばす、大らかなでのんびりした逞しい性癖は、”世界の埼玉”構想が幻想でも夢でもない事を、我らに教えてくれる。

 つまり、”何もないけどいい所”ではなく、”何もないから良い所”なのだ。

 お陰で「翔んで埼玉」は、”埼玉は一日にしてならず”を、日本中にいや世界中に実証してくれた様な気がする。



6 コメント

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真面目?過ぎる〇🔴県 (不真面目です)
2020-03-03 08:34:50
そんなに面白いの
転象さんがこんなにも
ハシャギ過ぎるのだから
見てみたいぞなモシ
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不真面目さんへ (象が転んだ)
2020-03-03 13:36:02
基本的にはコメディは受け付けないんですが。この映画に関しては原作がしっかりしてるんで、とても完成度が高いと思いました。

世界が認めるだけあって、不真面目と同様にとてもユニークです(^^)v
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何もないという美学 (paulkuroneko)
2020-03-03 20:27:21
何もないようで何でも程々に揃ってる。
日常生活をする分には何の不自由もない。
東京にも近いし、隠れ埼玉人もゴマンといる。
大らかな気持ちでいればこれ程居心地の良い県はない。

要は気持ちの持ちようなんですが
色々と勉強になります。
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paulさんへ (象が転んだ)
2020-03-03 23:27:48
今、自分の地元の歴史をブログにしてんですが、故郷って知れば知るほどに愛着が湧くんですね。
私の田舎も何にもない所ですが、歴史だけを見ればNYにも負けない。そういうのを知るだけでも貴重な財産になる。
そういう意味でもこの映画は楽しかったです。
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古い原作だったのですね… (エリコ)
2020-03-05 17:08:22
こんにちは(^^)

この映画は、埼玉県人ではないので見ようかどうしようかと思っているうちに公開は終わってしまいました。

というのも、東京生まれ東京育ちの私の従妹が、千葉県生まれ千葉育ちの人と結婚をして埼玉県に家を買って住んでいます。
それを思うと見に行くのも何か複雑で…(笑)
ケーブルTV等の放送があった時には楽しみに見てみようと思います(^^)。
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Unknown (lemonwater2017)
2020-03-05 17:35:24
erikoさんへ、象が転んだです。
実は地域差別に近いのを経験した事があります。
露骨でもないんですが、歴史をよく調べてみると私の田舎(蒲池藩)は一番古く人(弥生人)が住み着いた地区だったんです。
もうビックリでした。そんな凄い歴史が判明したせいか、今では地域差別が全くないです。因みに松田聖子(蒲池法子)さんは蒲池藩の末裔です。

この映画も地域差別というより、純粋なギャクコメディですので安心して楽しめます。因みに、蒲池藩についてはブログ立てる予定です。
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