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戦争は始めた方が必ず敗北する?〜イラン核施設攻撃の真相とトランプの失墜

2025年06月23日 16時54分50秒 | 戦争・歴史ドキュメント

 日曜報道「THE PRIME」では、米ハドソン研究所の長尾氏がアメリカの軍事介入の可能性について”多分やると思う”との見解を語った直後、アメリカがイランの核施設を攻撃。専門家にしては珍しく、予想が的中した。
 19日には、地下80mにあるイラン中部フォルドゥにある核施設の攻撃に”最新型で大型のバンカーバスター(GBU-57)の投下が検討されてる”と、ニュースなどで報じられてた。
 番組では、米国が核施設を攻撃する可能性について、同氏は”結構あると見ています。イランの核開発能力を残したまま、イスラエルの攻撃を終えてしまうと、イランはかなり早い段階核兵器保有に走る。アメリカはそれを徹底的に阻止する必要があり、もしイランが応じなければやる。だが、応じる雰囲気が今の所ないのでやると思う”と、自身の見解を述べた。
 そして、番組放送直後の22日午前9時頃、トランプはSNSで”イランの3つの核施設に対する攻撃を成功裏に完了した”と明らかにし、攻撃対象となったのはフォルドゥ・ナタンズ・イスファハンの3カ所の核施設で、B2ステルス爆撃機に搭載した”全ての爆弾を投下した”と説明。長尾氏の今回の予想が見事に的中した結果となった。 

 一部米メディアによると、ミズーリ州のアメリカ軍基地から直接、イランへの攻撃に向かった7機のB2が搭載したバンカーバスター14発のうち12発をフォルドゥへ、2発をナタンズへ投下。更に、ナタンズとイスファハンに対し、アラビア海に展開する米潜水艦からトマホーク30発の攻撃があった。
 因みに、米軍は現在全部で19機のB2を保有するが、そのうち15機(うち8機はグアムへ行くと見せかけた陽動の囮)を使った事で、今回の攻撃の本気度が伺える。事実、GBU-57が実戦で使われたのは初めてで、B2が参加した作戦では米軍の歴史で最大規模だったとされる。

 またNHKWEBによると、アメリカがイランと軍事的に直接対峙するのは歴史上初めての事だが、米国防省は”イラン政府の体制転換が目的ではなく、イランの核開発阻止が目的であり、作戦は大成功だった”胸を張った。
 バンス副大統領も”我々はイランではなく、イランの核開発と戦争してるのだ”と語気を強め、ルビオ国務長官も”今回の攻撃はイランが選択した事で、我々の選択ではないし、お陰で世界はより安全になった”と、今回の攻撃の成果を強調。更に、”我々には対話の用意があり、交渉の余地も残されてる”と、平和外交を仄めかした。
 これに対し、民主党からは”議会を通さず、中東での破滅的戦争に足を踏み入れた。これは米国民を戦争に巻き込む行為だ”と、真っ向から反発するが、英独仏は”イランが核を持つ事は絶対に許されない”と、今回の攻撃を支持。勿論、中露は”国際法違反だ”として、アメリカを強く非難した。 
 その一方で、当のイランは”アメリカは当然、報いを受けるべきだ。イランは何もしていないのに攻撃を受けた”と、世界に呼びかけて報復を示唆した。


戦争は始める方がずっと簡単だ

 但し、これより少し早い段階(6/18)で今回の攻撃を予測した人がいる。「Gゼロ後の世界」で名を馳せた国際政治学者のイアン・ブレマー氏だ。
 彼は自身のSNSで”トランプは平和の仲介者になりたがっている。だが、ロシア-ウクライナ、イスラエル-ガザ、イスラエル-イランなど、そのどこでも成果は出ていない。一方、インド-パキスタンの停戦では有益な役目を果たしたとされるが、モディ首相(印)は公の場でトランプの関与を否定し、恥をかかせた。
 仮に、イランでイスラエルが大勝利を収めるとして、トランプがそれをネタニヤフ一人のものだと言わせるとは思えない。これが、<米国がすぐに空爆に踏み切る>と私が考える理由だ”
と語っている。
 つまり、ブレマー氏は(先の)長尾氏とは異なり、”イランの核無力化”が真の目的ではなく、トランプ”自身の名声”の為だと考えた。

 確かに、イランの核無力化は元々米国防省のシナリオに過ぎず、今に始まった訳でもない。つまり、トランプが再選時に掲げた公約は関税や移民問題も含め、殆ど実現できておらず、ケツに火が着いて焦ったトランプが、核無力化を大義名分にイランへの直接攻撃に踏み切ったと見るべきであろう。
 更には、ネタニヤフが鬼の形相で掲げる”力による平和”が全くの愚論である様に、トランプによる和平工作は愚かな幻想とも言える。事実、ブレマー氏は”戦争は始める方が終わらせるよりもずっと簡単だ”と説く。
 その一方で、”イラン指導部はかなりの自制を見せ、イスラエルへの反撃のみに焦点を絞っている”と、イラン側の冷静さを評価。一方、もし米国がイランと直接戦争に関与する事になれば?とした上で、”地下深くに作られた核開発施設フォルドーの破壊だけなら、変化はない”とも予想する。
 但し、”結局、米国とイスラエルはイランの息の根を止めるだけの攻撃能力を持ち、それを保持している。だが、それはイラン指導部が協調を保ち、自暴自棄になった行動に出ていない事を意味する”と釘を刺す。

 このブレマー氏の考察には私も概ね同感だが、今回の攻撃ではフォルドーだけでなく、ナタンズとイスファハンを含む合計3箇所の核施設を全て破壊した。これをどう捉えるかはイラン次第だが、トランプの上から視線での発言には”力と脅し”によるイランへの宣戦布告にも受け取れる。
 つまり、トランプの傲慢さと強気の発言はそのまま自分に跳ね返る。事実トランプは、”アメリカに対するイランのいかなる報復も、今夜起こったものよりも遥かに大きな武力によって対応される”と、イランを強くけん制したが、この文節でアメリカをイランに置き換えれば、”アメリカのいかなる攻撃も、今夜起こったものよりも遥かに大きな(中東の)結束により報復される”となる。
 一方、トランプ政権は”彼らは無防備で自分の空域をコントロールし、守る事ができない”と、イラン軍を過小評価してる様だが、イスラム革命防衛隊は”アメリカ軍の基地の膨大な数や規模は強さではなく弱さでもある”とし、”アメリカによるテロ攻撃は侵略者側の計算を超えた選択肢へとイランを向かわせ、後悔させる対応が待ち受けている”と報復を誓った。

 
最後に〜真の勝者はどっちだ

 13日のイラン核施設へのイスラエルの攻撃を機に、両国による報復の応酬が続き、多数の死傷者を出した。
 一方でトランプは19日、軍事介入について”行動を起こすか否かを今後2週間以内に決断する”と、イランに猶予を与えたが、イランがイスラエルへ放った報復による弾道ミサイルの大半をアメリカが迎撃した時点で、今回のイラン核施設への攻撃は、既に計画されてた様に思える。
 つまり、13日のイスラエルによるイラン核施設への攻撃が、アメリカのシナリオ通りだとすれば、今回22日のイラン核施設への攻撃もその延長上にある。つまり、イスラエルと米国のイラン核施設への攻撃はセットとして考えるべきで、事実トランプは両国の連携による勝利を強調し、その結びつきの強さを世界にアピールした。
 勿論、イランの弾道ミサイルを迎撃した時点で、アメリカは実質的に軍事介入してる訳だが、今回の攻撃で軍事的にもイランとの直接対決という形になった。
 
 一方、先のブレマー氏の言葉を再現すれば、米国とイスラエルは今回の一連の攻撃でイランの息の根を止めるだけの攻撃能力を持つ事を実証したが、それはイラン指導部が協調を捨て、自暴自棄になる行動に出る事を意味する。
 今回、世界中の反発を食らいながらも、米国やイスラエルが一方的に引き起こした戦争は、人類が決して踏み入れてはならない領域に自らを追い詰めた事となった。
 少なくとも、米国とイスラエルが胸を張る様に”完全勝利”には程遠く、(イスラム革命軍が強調する様に)数と量と質で優るアメリカ軍の強さは同時に脆さでもある。
 つまり期待値で言えば、今回のアメリカの攻撃は一見大成功にも見えるが、ハイリスク・ノーリターンに近く、イランによる報復は一見テロ攻撃を暗示するが、ローリスク・ハイリターンに近いとも言える。

 言い換えれば、ブラックスワン(黒い白鳥)は今や満面の微笑みを浮かべて祝勝会を開いてるであろうアメリカやイスラエルではなく、アメリカに対抗する為の最後の砦でもあった核兵器を全て壊滅させられ、復讐の鬼と化したイランに微笑む様な気がするのだが・・・そう考えるのは私だけだろうか? 



12 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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LNG (タック(takx007))
2025-06-23 21:05:54
アメリカの狙いは、イランにホルムズ海峡を封鎖させ、ヨーロッパへのLNG供給をストップさせて、アメリカ産LNGを高く買わせるつもりなのでしょうか。
トランプさん、やりすぎです。
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タックさん (象が転んだ)
2025-06-23 23:40:47
シュールガスの件は
イラン側も既に見抜いてると思います。
故に、ホルムズ封鎖の件は薄いかなと・・

今回のイランは自ら仕掛けるでなく、自国を巧く制御し、イスラエルや米国に先制攻撃させ、イスラム国家の正義を世界にアピールする狙いも感じます。
過去の歴史が証明してる事ですが、大体において戦争は仕掛けた方が負けなんですよね。

そもそもトランプは、アメリカが分裂しようが丸焦げになろうが、自分が大儲けする事しか眼中に無い様にも思えます。
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アルマゲドン (UNICORN)
2025-06-24 06:56:03
トランプはイランを世界最大のテロ国家と言ってるけど、アメリカこそが最大のテロ国家であり、世界もそれに気付きつつある。
今回の攻撃で世界中に核拡散を促したのは、疑いもなくアメリカであり、独仏英もそれに呼応する危険な同盟とも言える。
今やトランプが正義と成果を主張する程に、世界はイスラム国家になびいていく。
トランプにとってアルマゲドンとはこの事であろう。
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イランに翼を下さい (tomas)
2025-06-24 11:35:19
翼を下さいという歌があったけど
今のイランに一番ほしいのは
その翼でしょう。 
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UNICORNさん (象が転んだ)
2025-06-24 13:11:37
世界の世論がどう動くか?ですよね。
勿論、イランも反撃の砦である核兵器施設を潰された訳で、表向きはキツい状態にあります。
一方で、米国もイスラエルもイランの核の驚異が去ったと言う事で、今は勝ち誇ってるでしょうねか。
でも、歴史が証明してる様に戦争は仕掛けた方が負けなんですよ。
事実、今回の攻撃でも短期的効果はあるが、中長期的には損失は少ないとされます。

勿論、トランプ側もイラン弱小化させ、交渉による無条件降伏を受け入れさせる為に、様々な策を練ってるとは思いますが
ここに来て、トランプの強引さと傲慢さは脆さを露呈し、アメリカの弱体化に繋る様にも思えます。
まるで、日本の戦国時代を見てる様で目が離せません。
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tomasさん (象が転んだ)
2025-06-24 13:13:30
結局、世界は
そういう方向に向かうんでしょうね。
アメリカの有権者も、今になってトランプに投票した事を悔やんでるでしょうか。
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橋下のバカっ面 (hitman)
2025-06-24 20:50:42
タダでさえイメージ悪いフジなのに
橋下を呼ぶ必要あんのか?
原理原則主義みたいな事ばかり言ってて
やってる事は人の話を折ってるだけ
嫌なんだよなぁ〜こうした開き直りの野蛮系は

それに
中村の婆さんは見ただけで吐き気がする
ギャラが安いから呼ぶんだろうけど
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hitmanさん (象が転んだ)
2025-06-24 23:10:09
フジTVも切羽づまってんですよね。
まともな知識人は拒否権を行使しますから
ただ、軍事研究家の長尾氏もブレマー氏の発言はネットで知ってたと思います。
でも、全く同じ事言うとバレバレだから、無難な意見で纏めた。
ひょっとしたら、トランプがいつイランを攻撃するか?賭け事の対象になってたかもですね。
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イラン核開発の歴史 (paulkuroneko)
2025-06-25 11:08:19
過去を遡れば
イラン革命以前は、アメリカがイランに核の平和利用を促し、核開発を援助・協力していました。
それがイラン革命で米国とイランが対立すると、今度は中露がイランへ核開発を援助・協力の条約を結び、今に至ります。
ですがオバマ大統領の時に核合意に達し、イランは核開発を平和利用のみに絞りますが、限界を感じたトランプ大統領は一方的に核合意から離脱し、米国とイランは再び対立します。

ところで米CNNは
今回のイラン核施設への攻撃はあまり効果がないとみてますね。
これは今回の攻撃がアメリカやイスラエルに実質的な効果をもたらさない事をも意味します。
イランは今のところ十分に自制が効いてますが、アメリカがイランに無条件降伏を交渉に持ち込むとしたら、再びイラン革命に近い事が起きるような気がします。
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トランプへの離反 (腹打て)
2025-06-25 20:42:49
米メディアは
今回のアメリカ軍によるイラン核開発施設への攻撃が思った程に効果的ではなかったと一部には報道されているが
トランプ政権内でも今回の攻撃の評価に対し、様々な意見があるようだ。
自分が思うに、敢えて攻撃の手を緩めたのか?
それとも、トランプに離反する側近らが事前にイラン側に情報を漏らし、有効な決定打を与えることが出来なかったのか?
前者のの可能性は低いが、後者の可能性は低いとは言い切れず、むしろ高いと思う。 
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