
”ウクライナ危機”と聞いて、クリミア戦争をすぐに思い出した。
クリミア戦争(1853-1856)とは黒海沿岸の覇権をかけ、ロシアとオスマントルコが対立し、更にトルコを支援する仏英を中心とした欧州各国との間で起こった戦争である。
1853年7月にロシアがオスマントルコの配下にあったモルダヴィア公国(現ウクライナ)などに侵攻し、戦争が勃発した。
これと、全く同じ事が同じ場所で起きようとしている。実は、クリミア戦争で敗れたロシアは勢力を極東に向け、その50年後には日本と衝突し、日露戦争が勃発。更にその35年後にはノモンハン事件も勃発。世界は第二次世界大戦へと突き進む。
ロシアがウクライナ南部の一部(クリミア)を併合し、同国東部の広い範囲で紛争を起こした”分離派”を支援したのは、つい7年前の事だ(ウクライナ危機)。
ロシアは現在、軍事行動をちらつかせている。これに対しアメリカは、(ロシアが侵攻すれば)”前例のない規模の制裁で報復する”と言明している。
バイデンはプーチンを名指しで非難するが、ネオコン(軍需産業)と深い繋がりを持つバイデンの企みが、今ではメディアや動画を賑わせている。つまり、支持率低下を挽回する為にウクライナに軍需品を売り込んだが故、プーチンが警戒(逆ギレ)し、国境沿いに軍備を増強した、との噂もある。
事実、7年前のウクライナ危機もアメリカが介入した。が故に、ロシア軍の介入を許し、工作員の事前潜入など綿密な準備の上に軍事侵攻が移され、結果は、ロシア軍の勝利に終わり、クリミア併合を成し遂げた。
つまり、今回もロシアはウクライナ東部に住むロシア系住民の保護を目的に侵攻するのは明白で、既に多数の工作員が侵入してるとされる。
ロシアの要求は、”これ以上NATO加盟国を増やさない”事に尽きる。それさえ保証してくれれば、”国境地帯の軍を撤退させる”意向を示している。一方でアメリカは”NATOに加盟するかどうかは各主権国家が決める事で、他国が指図できるものではない”と主張してきた(JBpress)。
確かに、今回の”2022年版”ウクライナ危機に関しては、バイデンとプーチンのお互いの言い分と大義があるだろう。
しかし、どちらが正しくてどちらが悪いといった安直な結論を下せば、ウクライナの火種は第三次世界大戦に繋がるかもしれない。
ウクライナ危機から第三次世界大戦へ?
(地政学で言えば)ウクライナはEUとロシアの両方と国境を接し、旧ソ連の一部だった為、ロシアとは社会的・文化的にも繋りが深い。ロシア語も広い地域で使われてる。
以下、「ロシアはウクライナを侵攻するのか」(2021/12/24)より一部抜粋です。
その後、ウクライナは徐々にヨーロッパへと接近してきたが、ロシアは長年これに反対してきた。
ウクライナ危機(2014)では、親ロシアの大統領をウクライナ国民が追放した。するとロシアは、ウクライナ南部のクリミア半島を併合。特に東部のドンバスと呼ばれる2つの地域では、ロシアの後ろ盾を受けた分離派が広い範囲を掌握した。
ロシア政府は現在、西側のNATOに対し、”ウクライナの加盟を認めない”よう保証を要求している。
しかし、ウクライナ東部における衝突は2020年の停戦合意をよそに、今も続く。最も懸念されてるのは、ウクライナ国境外側のロシア軍だが、その規模は最大10万人に達すると西側はみる。
だが、差し迫った脅威は感じられない。プーチン大統領が侵攻を決断した訳でもない。ただ、”西側の攻撃的な姿勢が続けば、相応の報復的な軍事技術措置を取る”と表明した。
一方でロシアのリャブコフ外務次官は、緊張悪化によっては”キューバ危機(1962)の様な状況に陥る”と警告する。
事実、西側やウクライナ当局は、”今年の早い時期にも侵入や侵攻が起こり得る”とみている。CIAのW・バーンズ長官も、プーチン大統領がロシアの軍と治安部隊を一気に動ける場所に配置してるとみる。
一方で、こうしたロシアの動きは”自国の裏庭からNATO軍を追い払う為のポーズに過ぎない”との見方もあった。
しかし、ロシアがクリミアとウクライナ東部近くで、軍を増強してるのを示す衛星写真がある。その上プーチンは、”敵対的な動きには相応の軍事上の対応措置を取り、厳しく対処する”と警告した。
そのロシアはウクライナについて、”(軍の半数に当たる)12万5000人の兵士を東部に集結させてる”と非難。ロシアの支援を受ける(反政府の)分離派が支配する地域を”ウクライナが攻撃するつもりだ”と主張する。
一方のウクライナは、ロシアの言い分を”自分たちの計画を隠す為のバカげた主張だ”としている。
ロシアはまた、”NATOの国々がウクライナに武器を大量供給している”と批判を重ね、プーチンは”緊張をあおっているのはアメリカの方だ”と非難し、(ロシアにはこれ以上後退できる場所などない)”我々がただ手をこまねいて座視するとでも(アメリカは)思っているのか”と怒りを顕にした。
以上、BBCNewsJapanからでした。
プラハの冬
歴史は繰り返すと言うが、今回のウクライナにおけるロシアとEU(及びアメリカ)の対立を見てると、まさしくそれがピタリと当てはまる。
クリミア戦争(1853)→日露戦争(1903)→ノモンハン事件(1939)→第二次世界大戦(1941)→キューバ危機(1962)→ウクライナ危機(2014)→ウクライナ紛争(2022)?
これだけでも、歴史の繰返しをそのまま眺めてる様な気がする。
ロシアの南下政策こそが最初の引き金を引いた気もするが、旧ソ連が安定してた時はその属国であるウクライナもクリミアも平和であった筈だ。
まさに”クリミアの春”はそこまでやって来ていたのだ。
しかし、1991年に旧ソ連が崩壊すると、クリミア半島とそこに暮らすロシア系人たちはロシアから切り離された。つまり、ウクライナは南北に分裂してしまう。
民族主義が再び高まるなか、ロシアがヨーロッパ勢と対立してでもクリミアに特別な思い入れを持つ事もまた、自然な姿なのではある。
クリミア戦争の結果、パリ条約(1856)でロシアは、モルダヴィアに隣接するドナウ河沿岸地帯を失い、黒海の非武装化を余儀なくされた。後にロシアの黒海艦隊は復活したが、大きな犠牲を払いながらもそれ以上の南下を止められた為、ロシアからみてクリミア戦争とは、ヨーロッパ勢の介入による挫折と屈辱を意味するものになった。
クリミア半島はその後もロシア海軍の要衝であり続けたが、旧ソ連時代の1954年にロシアからウクライナに移譲された。しかし、ロシアとウクライナが共にソ連の一部であった為、大きな火種になる事はなかった(Wiki)。
一方で”プラハの春”とは、旧ソ連のスターリンの圧政に対し、1968年チェコスロヴァキアにおいて自由化運動が進められた時期の名称である。しかしこの“プラハの春”は、共産圏からのチェコスロヴァキアの離脱と旧ソ連の介入を招き、その年の夏にはワルシャワ条約機構軍がプラハに侵攻して武力弾圧を行った。
結局、プラハの春は僅か6ヶ月で鎮圧され、”プラハの冬”を迎える事になる。
そして今、(ウクライナの)キエフもクリミアも、ロシア軍とNATO軍(とアメリカ)の侵攻の板挟みにあい、それぞれの冬を迎えようとしている。
最後に〜クリミアの冬
小説「プラハの春」(春江一也 著)では、チェコスロバキアの首都プラハで、経済改革と自由化への気運を高めつつあったその最中、日本国大使館の堀江は(年上でありながら)ビーナスの様なカテリーナ嬢と出会う。
だが、彼女は東ドイツの反体制活動家であった。東西対立の最前線の地で葛藤する、禁断の愛を描いた作品である(Amazon)。
確かに、プラハの改革運動は旧ソ連に呆気なく潰された。時代は、必ずしも正義や良心に味方する訳ではない。同じ様に、純朴で美しい恋愛が必ず成就する訳でもない。
確かに、歴史から学ぶ事は多いが、その歴史が積み重ね続けた悲劇と矛盾には目をそらしたくもなる。しかし、それらを覆い尽くす純愛。
厳しい状況下であっても未来は存在するし、希望を持つ事はできる。
堀江は”権力の集中はやがて腐敗し、悪となる・・・共産主義もファシズムと変わらない”などの説得力ある言葉を残してるが、プラハの春を体験した人の言葉は美しく深みがある。
この作品では、旧共産主義諸国の政治の酷さと現状を(ナチスの生まれ変わりの様な)”ファシズムの双生児”とも揶揄されてる。が、今の自民党独裁の日本も同じ様な危険を孕んではいる。
”プラハの春”から”クリミアの冬”へと変わる時、その怒りと憎しみはウクライナの悲劇を生み、(キューバ危機の時に危惧された)第三次世界大戦をもたらすのだろうか?
歴史は繰り返すと言うが、悲劇を繰り返さない事も人類の叡智である。
とても楽しませてもらいました。
また、とても刺激をもらいました。
自身のブログ更新の励みになりました。
ありがとうございます。
末尾の一文---
“歴史は繰り返すと言うが、
悲劇を繰り返さない事も
人類の叡智である”
ウクライナ危機に叡智が働き、
平和的な収束を望みます。
しかし当分火種は燻り続けるでしょう。
プラハの春を蹂躙したソ連は既に消え、
ロシアになりましましたが、所詮、
「赤熊」が「白熊」になっただけ。
奴らはヤル気満々だと思います。
では、また。
ドイツはロシアからの天然ガスのパイプラインを断たれるから乗らない。
ほかのNATO諸国も積極的でない。
アメリカは自分の国土が戦場になるわけではないので積極的ですが。
プーチンの方がケンカが上手いという感じですね。
とは言え、ウクライナ、台湾が火種であることは確か。
中露が接近しているようですし、日本はどうするのでしょうね。
中露とアメリカを天秤にかけて、したたかに立ち回ってほしいものです。
もう少し優雅に纏めたかったんですが、歴史教科書の切り貼りみたいに、理屈っぽくなってしまいました(悲)。
コメントにもある様に、今回はロシアにどうも歩がありますね。バイデンがやろうとしてる事はプーチンには見え見えですから。
とにかく、キエフにもクリミアにも春が来る事を実に願います。
今回は、プーチンの方がバイデンよりも多くのカードを持ってます。
工作員も既に送りこんでる筈ですから、NATOの足元も見抜いてるでしょうね。
北京五輪を見てもわかる様に、中露はガッチリと手を組んでるみたいで、下手なマネすると”規定違反”なんて事も・・・
こういう時は、(政府だけでなく)大衆レベルでも過激化する傾向にあるので、過剰反応も怖いですよね。
ウクライナ危機と台湾問題はセットになって考えるべきです。
日本がどう振る舞えるのか?
これがとても大切になってきますが、アメリカのポチである自民党が中露にどう思われてるか?も大きな問題ですよね。
多分アベだったら、アメリカに引っ付いて台湾と日本は火の海になってるでしょうか・・・
一方で、ウクライナがNATOに入ればロシアとNATOの戦争になるともけん制した。
バイデンはショルツ(独)と会談し、ロシアが軍事侵攻した場合、露独を結ぶ天然ガスパイプライン計画を中止すると制裁を科すことで一致てますね。
これを見て解るように、プーチンは複数(3枚)のカードを持つとされる。一方でバイデンは戦争か否かの実質1枚のカードしかない。
つまり、米国の目的はロシアの封じ込めで、ウクライナはその手段でしかない。しかしロシアにとってウクライナは旧ソ連時代と同じく同胞であり、ロシアの愛国心を高揚させる手段でもある。
これだけを見ても、やはりプーチン有利に働くのか。7年前と同じく、アメリカが繰り出す手は全てプーチンに見透かされてるような気がする。
ロシアには何としてでもウクライナに侵攻してほしいんだよ。
でないと、アメリカはウクライナをNATOに引きずり込めない。ウクライナの次はベラルーシだから、そこまでNATOに組み込まれれば、ロシアはヨーロッパでは完全に孤立する。
でもプーチンから見れば、アメリカは軍需品だけを沢山送り、後はNATO軍に任せっきりという事が判ってるから、バイデンの牽制には乗らない。
NATOもここに来て足並みは揃わず、ドイツとフランスはロシア寄りで、EUから離脱した英国だけがアメリカ寄り。
そういう事もプーチンには判ってる。
バイデンの誤算とはこういう事なのかな。
プーチンからすれば、NATOにアメリカが次々に軍事物資を送りこむから、ウクライナ国内に動揺が走るのを危惧してますよね。
でも、7年前のウクライナ危機ではロシアはアメリカの手の内を完全に読んでました。
今回もプーチンはEU主要国との対話には柔軟に応じてる点を見ると、今回もプーチンが有利と見ます。
今回も7年前と同じく、アメリカの牽制には乗ってこないでしょう。
アメリカの多国関与主義にはウンザリですが、政府が軍需産業を頼りにするとろくな事はないですよね。