長い弔問の行列と反対デモの間で・・・(更新)

　まるで出来過ぎた”ポルノ映画”を見てるようだった。
　というのも､私は小さい頃から葬儀がいや参列者の喪服が汚らわしく見えたからだ。今回の国葬も老いた娼婦の(趣味の悪い)黒い毛皮を眺めてるみたいで､吐き気がしたもんだ。
　一方で､国葬に参加した政府関係者らは皆(ワザとらしくもあったが)､腐った本性を隠し大人し目な弔問客を演じてた様にも思う。

　英国BBCは､安倍氏の国葬を”一般弔問の長い列と抗議の行進”と表現した。
　正直､ここまで多くの一般市民が安倍元首相の死を弔うとは思わなかった､と言ってはおこう。
　というのも､献花に訪れた一般客の大半が旧統一教会の信者である可能性も捨てきれないからだ。
　事実､(フォロワーの記事によれば)献花に来た一般人は2万人程とされるが､旧統一教会の信者数は6万人とも言われる。つまり､1/3の信者を動員すれば､一般参列者も長い行列を成したと､(国葬に不信感を抱く)多くの国民へ向けての宣伝にはなる。

国葬に群がるシロアリ

　しかし､この数キロに及ぶ一般参列者の長い列が､私には(言い方は悪いが)まるで腐った巨木に群がるシロアリに思えた。それは､今回の国葬に参加し､故安倍政権の巨悪に群がってきた自民党の議員たちも同様である。
　岸田首相は､”いちずな誠の人､熱い情けの人で､友人を大切にし､昭恵夫人を深く愛した良き夫でもあった”と(これまたウソっぽくて白々しくもあるが)最大級の褒め言葉で先頭を切る。更に(ダラダラと無駄に長い弔辞の最後には)､”あなたが敷いた土台の上に､持続的で全ての人が輝く包摂的な日本をつくっていく”と締め括った。
　しかし私には､”(あなたが築いた)巨悪の上に持続的で包摂的な自民党ををつくっていく”と聞こえた。事実､定型化しすぎた弔辞には､アクビや居眠りをする要人も目立ったという。
　一方で､菅元首相は”あらゆる苦楽を共にした7年8カ月。私は本当に幸せでした”と声を震わせたが。でも私には､”あらゆる巨悪を共にした”と聞こえてしまう。

　結果的には､天皇皇后両陛下を含む日本の皇族らが拝礼･供花し､ハリス米副大統領ら首脳級50人程度を含む210超の国や地域からの計700人程度が献花したとされる(日刊スポーツ)。しかし､進行の拙さも手伝ってか､海外の評価や評判は国葬の規模ほどには芳しくない。
　(TBSによると)仏メディアは､”緊張が高まった中での安倍元総理国葬開催”や”旧統一教会との危険な関係が指摘される元総理の国葬をめぐり､多くの日本人が批判”という見出しで報道。
　独メディアも”抗議が影を差す国葬”という見出しで報じ､安倍元総理や自民党と旧統一教会との関係について､”日本における国内政治の危機のクライマックスになりそうだ”と酷評した。
　更に､英国メディアは”エリザベス女王よりも高く付いた安倍氏の国葬”と揶揄した。　

ポルノ映画と国葬

　今回の安倍氏の国葬は(言い方は酷だが)そんな低俗なレベルかもしれない。
　しかし､ポルノビデオと安倍氏の国葬の決定的な違いは､(本質は同レベルでも)その制作費にある。
　ポルノ映画はほんの数十万円の費用で済むが(多分)､安倍氏の国葬は17億近い。これはエリザベス女王の13億よりも高くついた。しかも､エリザベス女王の国葬には世界中から超一級の要人が集結した。
　一方で､安倍氏の国葬は(参加した要人の数は多かったものの)グダグダ感や不平不満が満載で､お世辞にも国葬と呼べるものではなかったらしい。
　安倍氏の国葬に訪れた日本人を低俗呼ばわりするのは､多少は気が引けるが､6割の日本人は疑いと怪奇の目を持って見つめていたのは確かだろう。

　しかし､安倍氏の国葬は大きな暴動や混乱もなく無事に終わった方だと思う。ただ､安倍政権を引き継いだ(敗戦処理系の)菅と岸田の弔辞は”臭いものは蓋をする”的な脆弱で浅薄な賛美で､逆に多くの疑惑と課題を遺した結果となった。
　が､自民党にしてみれば､”俺たちに楯突いても何も変わりはしない。むしろ国民の結束を強固にするだけだ”と胸を張りたい所だろうが・・・
　確かに､権力に逆らってもルイ16世の恐怖政治の時代みたいに､最悪は絞首刑の犠牲になるだけである。それは､NHKを含めた主要メディアの今回の国葬の扱い方にも現れている。事実､大半のメディアは国葬を容認してる様に思えた。
　だが､ルイ16世を処刑したロベスピエールもギロチンで首を落とされた様に､権力に頼る者は権力によって淘汰される。やがてその権力も腐敗し､シロアリに食い潰される巨木の如く消滅するのかもしれない。

最後に

　今回の国葬も(出来のいいポルノ映画と同様に)すぐに風化し死滅するだろう。事実､有名人らの規模の大きい派手な結婚式はあっという間に忘れ去られる。
　結果として､日本だけでなく世界中が首を傾げる奇怪な国葬を自民党は強行してしまった。
　ただ､心の底から今回の国葬に反対した日本人がどれくらいいただろうか？
　東京オリンピックと同じで､心の底では巨大なイベントにあやかりたいという島国根性の的な色気が働いたのではないだろうか？

　最高裁は､”国葬に税金が支出されても思想と良心の自由を侵害するとは言えない”と国葬反対を掲げる市民団体の訴えを退けた。
　裁判所側は”国民を儀式に強制参加させるではなく､思想と良心の自由が侵害されるとはいえない”との理由だが､(自民党内部の閣議だけで)国葬を強行に決めた事こそが”侵害”に当たる。
　そういう事が解っていながら法もメディアも自民党の側につく。法の番人がこんな風では､裏ビデオも殺人も全て合法となる。ましてや､出来すぎたポルノ映画は国民の娯楽になりうるかもしれない。事実､ポルノサイトは未だに大人の娯楽の王者でもある。

　私は今の日本を”お行儀がいいだけの北朝鮮”と揶揄した事がある。が､今となってはあながち外れてはいない事が判った。
　以上､かなりキツく今回の安倍氏の国葬を揶揄したが､比較的静かに葬儀が行われた事だけが､唯一の救いでもあった様に思う。