教科書採択を考える会ブログ

愛媛県松山市内の中学の歴史教科書が「育鵬社」版に変わるのを機に発足した会です。教科書比較の学習会も行っています。

第2回学習会 「54 国会開設へ向けて・自由民権運動」「55 大日本帝国憲法の制定と帝国議会」

2016-02-24 12:40:39 | 学習会



2016年1月12日に、第2回学習会を開催しました。

参加者は22名。講師は、元中学校社会科教諭のMさん。

今回のテーマは「自由民権運動」(育鵬社版p182~)と「大日本帝国憲法の制定」(育鵬社版p184~)でした。


「自由民権運動」では、民撰議院設立の建白書が出された後、政府は新聞紙条例を出し、反政府言論の取り締まりを行いますが、“育鵬社版”には、その資料が載せられていません。

自由民権運動が高まるとともに、民衆は次々と厳しい弾圧を受けましたが、そのことを具体的な資料で分かりやすく示すべきです。

また、自由民権運動が高まる中で、民衆がたくさんの憲法草案を作ったことが、“学び舎版”では資料とともにていねいに説明されています。
草案は、残念ながら、政府の命令により一切検討されませんでしたが、後に日本国憲法の草案として参考にされたことも書かれています。


「第日本帝国憲法の制定」では、“育鵬社版”の2つの問題が浮かび上がりました。

1つ目は、天皇の政治的権限の行使に関する問題です。

“育鵬社版”教科書の本文横の注釈に、「天皇は、実際には政治的権限を行使することはなく、国家統治の精神的よりどころだった。実際の政治は、内閣の各大臣と憲法に規定のない元老とよばれる政治家たちが行った。(後略)」と書かれています。

しかし、天皇が政治的権限を行使しなかったということはありません。
天皇はさまざまな形で政治を動かしていたことは明らかにされています。




2つ目は、「教育勅語」に関する資料解釈の問題です。

原文の「(略)一旦緩急アレハ(略)天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ(略)」の部分を、

“東京書籍版”は、「(略)いったん国家に危険がせまれば、(略)天地とともにきわまりない皇室の運命を助けなければならない。」と訳しています。


一方、“育鵬社版”は「(略)もし、国や社会に危急のことがおきたならば、(略)永久に続く祖国を助けなさい。」と訳して載せています。


原文の「皇運」は、“東京書籍版”のように「皇室の運命」と訳すべきであり、“育鵬社版”の「祖国」と訳すと意味が違ってくると思われます。


本文の中でも、“東京書籍版”では「忠君愛国の道徳」であると説明されていますが、“育鵬社版”では「国民道徳の基盤」と書かれており、天皇への忠義を臣民に求めたことを伏せているように感じられます。

史料の扱いは、歴史教育のいのちであり、史料を正しく伝えない教科書では困ります。

教育勅語は、1890年に出され、51年後の太平洋戦争で「天皇陛下万歳」と言って死んでいった兵士たちの精神的支柱であったはずです。




県教委の頑なな態度に驚く!

2016-02-24 12:29:17 | 傍聴日記
教科書採択を考える会 ニュース No2(2015年12月15日発行)より、愛媛県教育委員会への要請に参加した方の感想を転載します。

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『県教委のかたくなな態度に驚く!』

先月末(2015年11月 筆者注)に、「えひめ母親大会からの要望」に対する回答が県庁でありました。
その中に、「ほとんどの教員が推薦していない育鵬社の教科書を採択しないでください」という要望事項がありました。

回答は、
・県立3校では、育鵬社の教科書は内容がいいと好評である。

・県立3校から教科書希望報告はとっておらず、調査部会は、各教科書がどういう内容かのみ報告し、県教委が採択している。県教委の決定は、文部省通達からも問題はない。

・展示期間の延長が行われている自治体があることは把握されておらず、その意向もないようであった。展示期間の延長の検討を要望する。

農業や福祉部門での回答では、要望に対して努力をしたいという柔軟な姿勢が見えたが、教育委員会の回答ぶりには、一切誠意が感じられなかった。

第1回学習会 「45 黒船来航の衝撃」

2016-02-24 12:07:59 | 学習会
2015年12月8日に、第1回の教科書学習会が教育会館(愛媛県松山市北持田町131-1 松山東警察署北側)で開かれました。

参加者は23名。

講師は、元中学校社会科教師のFさん、テーマは「明治維新」(育鵬社 p160~ 東京書籍p154~

学び舎p158~)でした。


育鵬社の幕末の記述を読むなかで、次の2点が問題点として指摘されました。

◯開国後の混乱の中で人々の生活が困窮し、一揆や打ちこわしが江戸時代を通して最大件数になったことが充分に記述されていない

◯それらの人々のたたかいが、武士たちの運動とあいまって倒幕へ大きな影響を与えたが、そういう記述もみえない

この2つの観点から、育鵬社・東京書籍・学び舎の教科書を読み比べてみると、大きな違いがありました。

育鵬社…庶民の生活の大変さは描かれず、「世直し一揆やええじゃないかの騒ぎが各地で起こりました」と簡単に4行だけの記述です。

東京書籍…開国の経済的影響で、「生活に行きづまる民衆が増え大規模な世直し一揆、打ちこわしやええじゃないかの騒ぎが起こり、幕府の権威を低下させることになりました」と、1ページ以上にわたって書かれています。

学び舎…「ドルと小判 ー開港と人びとの生活ー」という項を設けて、開港によってどれだけ人々の生活が苦しくなったかを、資料で分かりやすく説明しています。
打ちこわしや世直し一揆、ええじゃないかの騒動も具体的に描かれ、幕府の支配が崩れていったという記述もされています。


参加者の感想のなかから、他の教科書と比べて育鵬社版の教科書は、幕末だけでなく、どの単元においても人々の生活の様子が充分描かれていない、また、歴史を動かす者としての民衆の動きやたたかいの記述が不十分であるという意見が出てきました。

育鵬社版では、庶民の生活についての記述は少ないが、著名な人物や肖像画を多く載せており、人物を浮き彫りにしているという感想も出ました。

また、外国人から見た日本人の長所だけを列記しているページがあり、もっと多面的な記述であるべきだという指摘もありました。