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V.I.I.Mプロジェクト ─ 9台のプロジェクターと人間たちによる野蛮なる冒険の始まりに寄せて

1999-02-25 11:39:25 | text
V.I.I.Mプロジェクト ─ 9台のプロジェクターと人間たちによる野蛮なる冒険の始まりに寄せて
文:アート倉持(UPLINK、JACK、他)


 未だ決着がついていない現場を探し出すことが何よりも好きだ。と書くと、随分と底意地の悪い奴だと思われてしまいそうだが、勝敗無き闘いの様相を呈す現代の「表現の世界」に没入すればするほど、この感覚の有無こそがこの道を往く者たちの明暗を分けるのだと固く信じている自分がいる。

 殊に、大きな物語どころか小さな物語の数々までもが知らぬ間に虱潰しにされ、恰も予め無かったことのようにされてしまいがちな昨今の風潮においては、そういった現場自体の絶滅を危惧する心も一入だ。そしていつもがらんどうの空間だけが残され、我々に与えられるのである。「お前に何が出来るのだ」と言わんばかりに。

 ロカペニスと高橋啓祐。共に「BABY-Q」「ニブロール」といったダンスカンパニーで映像による演出を担う者。空間を常に客観的に見つめ、あわよくば映像を効果的に用いて人心を惑わせることを四六時中考えているような危険な男たちだ。9台のプロジェクターより照射される意志を持った映像群が空間を支配し、それを以て作品とするという発想は確かに画期的なのだが、実はそれは相当におっかないことなのではないか。

 決して越えてはならぬ一線を消失させ続ける映像が其処彼処を跋扈することにより、越境の果てに原型を失ってキマイラ化した虎や猫や音やダンスが大暴れ。そしてこの野蛮なる冒険に同行しなければならなくなったあなたの瞳孔は常に開きっぱなしで脳髄はヌレヌレに。六本木の地下で密かに行われるこの禁断の映像ショーの成功は、果たして我々の心に何を齎すのだろうか。秘鑰は既にあなたの手の中に。それでは良い旅を。





V.I.I.M project 001

■日時:7月20日(月・祝)、21(火)両日ともに19:30開場
    ◎20:00より作品A「ネコロール」(演出・映像:高橋啓祐)
    ◎21:30より作品B「TIGER.TIGER」(演出・映像:ロカペニス)
    
□料金:前売¥2,500/当日¥3,000
□会場:Super Deluxe
    http://www.super-deluxe.com/

ROKAPENISインタビューhttp://sdlx.blogspot.com/