さて、中国の外資系企業で広がるストライキについてどう考えるか。
このレポートはなかなかおもしろかった。
大和総研コンサルティング・インサイト
「中国工場での賃上げストライキは何故起こったのか」
20年前、天安門の血の弾圧から1年たった中国情勢を、このように分析していた。当時のメモより。
「スターリニスト反革命・トウ小平の〈改革開放〉政策は、中国経済の成長をもたらす一方で、内陸農村部と沿海部との収入格差という、新たな社会的=階級的矛盾をもたらした。農村部から都市部への自由な移動を制限する、人民管理制度である戸籍制度は有名無実化した。農村から都市部への人口移動は爆発に増加した。この数千万もの〈盲流〉といわれる民族大移動は、北京派と上海派の内部抗争を激化させ、中国スターリン主義を根底から崩壊させていくであろう……。」
数年間属した新左翼のセクトを離れて、肉体労働をやりながら、マルクス主義の批判的総括をめざしていた頃だ。あの頃は、まさか中国がグローバリズムの権化ともいうべき「赤い帝国」に変貌を遂げる未来など、思いもよらなかった。
「盲流」は差別的・侮蔑的ニュアンスを含むことから、現在は「農民工」という。かつての農民工たちは要するに出稼ぎ労働者であり、沿海地域の工場などで就業して、ある程度の蓄えができれば故郷の農村に戻るのが通常だった。しかし1980年代以降生まれの「新農民工」と呼ばれる世代は、便利な都市生活に馴染み、都市での定住を希望する者が増えている。
米ニューヨークタイムズ紙は、中国のストライキ情勢について、「安価な労働力とストライキの少なさで、中国は多国籍企業の製造業投資に最良の選択肢だったが、今回の事件はその前提を覆すものになった」と評した。
このストライキの背景には、さまざまな原因が指摘されている。
もちろん、労働者の権利意識の高まりもある(2008年1月に施行された「労働契約法」を背景にしたもの)
第2世代の新農民工も都市部に定着している。中国政府による「中西部大開発」政策や世界同時金融危機を背景とした4兆元(約52兆円)の景気対策で、内陸部の公共工事も増大している。農民たちはわざわざ沿海地域に出向く必要もなくなり、農村部からの安価な労働力供給も減少している。
しかしこのレポートで重要だと思われたのは、次のような指摘だ。
「中国を生産拠点としか捉えていない企業は、基本的に工場労働者をあたかも生産ラインの一部として扱い、期間毎に出稼ぎ労働者の入れ替えを繰り返すだけの経営を行ってきた。一方、中国を将来の市場と捉えた企業は自国の生産技術を徐々に中国にシフトし、同時に管理職についても現地の中国人を登用して現地化を進める方法を採る。将来的に巨大市場となった中国で事業を展開するには、現地化を進めて地元に根を下ろした企業の方が有利であるのは指摘するまでもない」
「今回ストが起きた企業の多くでは、工場長をはじめ管理職に至るまで全て外国人、ひどいところは通訳を付けなければ工場長と従業員の意思疎通が出来ない企業が含まれている可能性がある」
この指摘は確かに当たっているように思う。あるメーカー系列では、今のところストライキが起きていない。10年以上前から社員の中国語教育に力を入れていた会社だ。私はこのメーカーの依頼で、中国人スタッフと一緒に、工業用語辞典を作って納めたりした。市販のものよりわかりやすく便利だと好評だった。
ただ、中国人労働者がむやみに暴動を起こしているとか、反日感情がストを後押ししているといった報道は、一面的なものにすぎない。韓国の現代自動車系の部品工場でもストライキに突入したところがあるし、前述したように、ストライキが起きていない日本企業もあるからだ。日本系であれ韓国系であれ、企業の選別があり、どの企業を攻撃するかには、明確な政治的な意図がある。中国語教育に熱心なメーカーも、それがすべてとはいわないが、そういう「親中」的な企業が「攻撃」の対象にはなりにくいことは、逆の立場で考えてみたらわかるだろう。
何ごとも「リスク」と「ビジネスチャンス」を仕分けるノウハウを身につけること。その気になればお金もうけもできるかもしれないね。
このレポートはなかなかおもしろかった。
大和総研コンサルティング・インサイト
「中国工場での賃上げストライキは何故起こったのか」
20年前、天安門の血の弾圧から1年たった中国情勢を、このように分析していた。当時のメモより。
「スターリニスト反革命・トウ小平の〈改革開放〉政策は、中国経済の成長をもたらす一方で、内陸農村部と沿海部との収入格差という、新たな社会的=階級的矛盾をもたらした。農村部から都市部への自由な移動を制限する、人民管理制度である戸籍制度は有名無実化した。農村から都市部への人口移動は爆発に増加した。この数千万もの〈盲流〉といわれる民族大移動は、北京派と上海派の内部抗争を激化させ、中国スターリン主義を根底から崩壊させていくであろう……。」
数年間属した新左翼のセクトを離れて、肉体労働をやりながら、マルクス主義の批判的総括をめざしていた頃だ。あの頃は、まさか中国がグローバリズムの権化ともいうべき「赤い帝国」に変貌を遂げる未来など、思いもよらなかった。
「盲流」は差別的・侮蔑的ニュアンスを含むことから、現在は「農民工」という。かつての農民工たちは要するに出稼ぎ労働者であり、沿海地域の工場などで就業して、ある程度の蓄えができれば故郷の農村に戻るのが通常だった。しかし1980年代以降生まれの「新農民工」と呼ばれる世代は、便利な都市生活に馴染み、都市での定住を希望する者が増えている。
米ニューヨークタイムズ紙は、中国のストライキ情勢について、「安価な労働力とストライキの少なさで、中国は多国籍企業の製造業投資に最良の選択肢だったが、今回の事件はその前提を覆すものになった」と評した。
このストライキの背景には、さまざまな原因が指摘されている。
もちろん、労働者の権利意識の高まりもある(2008年1月に施行された「労働契約法」を背景にしたもの)
第2世代の新農民工も都市部に定着している。中国政府による「中西部大開発」政策や世界同時金融危機を背景とした4兆元(約52兆円)の景気対策で、内陸部の公共工事も増大している。農民たちはわざわざ沿海地域に出向く必要もなくなり、農村部からの安価な労働力供給も減少している。
しかしこのレポートで重要だと思われたのは、次のような指摘だ。
「中国を生産拠点としか捉えていない企業は、基本的に工場労働者をあたかも生産ラインの一部として扱い、期間毎に出稼ぎ労働者の入れ替えを繰り返すだけの経営を行ってきた。一方、中国を将来の市場と捉えた企業は自国の生産技術を徐々に中国にシフトし、同時に管理職についても現地の中国人を登用して現地化を進める方法を採る。将来的に巨大市場となった中国で事業を展開するには、現地化を進めて地元に根を下ろした企業の方が有利であるのは指摘するまでもない」
「今回ストが起きた企業の多くでは、工場長をはじめ管理職に至るまで全て外国人、ひどいところは通訳を付けなければ工場長と従業員の意思疎通が出来ない企業が含まれている可能性がある」
この指摘は確かに当たっているように思う。あるメーカー系列では、今のところストライキが起きていない。10年以上前から社員の中国語教育に力を入れていた会社だ。私はこのメーカーの依頼で、中国人スタッフと一緒に、工業用語辞典を作って納めたりした。市販のものよりわかりやすく便利だと好評だった。
ただ、中国人労働者がむやみに暴動を起こしているとか、反日感情がストを後押ししているといった報道は、一面的なものにすぎない。韓国の現代自動車系の部品工場でもストライキに突入したところがあるし、前述したように、ストライキが起きていない日本企業もあるからだ。日本系であれ韓国系であれ、企業の選別があり、どの企業を攻撃するかには、明確な政治的な意図がある。中国語教育に熱心なメーカーも、それがすべてとはいわないが、そういう「親中」的な企業が「攻撃」の対象にはなりにくいことは、逆の立場で考えてみたらわかるだろう。
何ごとも「リスク」と「ビジネスチャンス」を仕分けるノウハウを身につけること。その気になればお金もうけもできるかもしれないね。
人間を人間扱いしない工場や会社って、民族関係なくダメですね。
中国人が入社後、暴動に。
そのクライアントさん、納期も価格もエグイのですが、そう悪口は聞かないですね。新人営業時代、オレンジジュースが出て驚いたことがあります。仕事内容はハードでしたが、紳士淑女で、そういう社風は海外戦略でも出ますね。ストでしばかれている所は国内でもいろいろ問題ある所が多いと思います。