新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

ハイキングに里山再生、れんちゃんとお父さんの日々。

ボタニカルとプラント

2024年03月07日 | 仕事/ビジネス
視力検査って、なんか運ゲーです。

調子のいいときは1.5、スカを引いたときは0.9。平均して、1.0から1.2のあいだで落ち着いています。

この年代では、比較的視力のいい方のはずですが、細かい文字は見えづらくなりました。校正の仕事には、老眼鏡と拡大鏡が欠かせません。

今日も、「ボタニカルデザイン」なることばが出てきました。

まさか、「ポタニカル」になっていないよな? 老眼鏡で覗きこみます。

最近の印刷物は、紙代やインキ代や版代などの値上がりもあって、少なくなった紙面に少しでも情報を詰めもうと、やたらと文字が小さくなりました。ルビの大きさは、もともと5.5ポイントだそうですが、最近の印刷物の本文書体の大きさは、ときにかつてのルビ以下?しかないなんてことも珍しくありません。「ボ」か「ポ」なのか、拡大しないとわかりっこありませんよ?

最近、「ボルネオ」が「ポルネオ」になっていたことがあって、油断なりません。「ボルネオの首狩り族」は、昭和の小学生男児の一般教養(?)であり、ボルネオは間違いようのない地名でした。詩人の吉本隆明の娘さん(長女のハルノ宵子さんか、ばななさんかわかりませんが)は、自分の父親のルーツを「ヤシの実と一緒に流れ着いたボルネオの首狩り族の子孫」といっていたそうですから、このことば自体は、昭和の小学生女児にも比較的知られていたはずです。

しかし、実際のところ、第二次大戦中、日本軍がボルネオに侵攻したころには、現地の人々のあいだで首狩りの風習は廃れていたそうです。差別に基づく誤解と偏見ですね。日本の首切りや腹切りだって、長い歴史に培われた宗教的文化的意味がありました。異文化に対する無理解は、イコール、自分の生まれ育った文化に対する無理解です。フットボールの起源だって、敵の大将の首を切り落として蹴り飛ばした風習に由来するそうじゃないですか。

PCの教えを受けて育った最近の若い人は、「首狩り族」なんてことばそのものを知らないのかもしれませんね。それ自体は素晴らしいことですが、「ボ」ルネオの認知度も落ちてしまったようです。

いやいや、私の英語や外来語の知識はいい加減なもので、間違っているのは私で、「ボタニカル」も、ほんとうは「ポタニカル」が正解?と不安になって、ウェブで検索をかけ、手元の辞書を引いて確認しました。

幸い、「ボ」タニカルで間違いありませんでした。botanyという単語の派生語のようです。

Botany
1.植物学 2.(ある地域の)植物 3.植物学書

まずはひと安心。


botanyの語源は、ギリシャ語の「botane(草、植物)」に由来するのだとか。

botaneは、農業や医学、哲学などの分野で、広く使用されていた言葉で、学問としての植物学を表す英単語として、18世紀に定着したそうです。

botanicalと同義のbotanicということばは、 植物園の名などに用いるだけでそれ以外には通例用いないのだそうです(SANSEIDO COLLEGE CROWN 第16刷による)

Botanicalは、「植物の」「植物学の」という形容詞で、名詞では「植物性薬品」という意味になるようです。

ギリシア語にルーツがあるだけあって、植物学・薬学など、アカデミック方面限定のことばのようですね。

村上春樹がエッセイで書いていたことですが、辞書は知りたいことがあるときにはそっけないものですが、こちらがひまつぶしに眺めているときは、「だんな、おもしろい話がありまっせ」ととたんに親切になるようです。

「Botany Bay」ということばがあるそうです。オーストラリア南東部 Sydney  南方の入江;もと英国の犯罪人植民地;Captain Cookがこの地域の植物の種類が多いのを見てこう命名したんだそうですよ。ジェームズ・クックって、16世紀か17世紀の人かと思っていたら、 1728年10月27日 生- 1779年2月14日 没で、botany が英語として定着した18世紀の人なんですね。

いや、キャプテン・クックは、botanyを今に至るも定着させた最大の功労者のひとりかもしれません。

SANSEIDO COLLEGE CROWN 第16刷には、Botany wool 〔yarn〕 オ ーストラリア産メリノ種の上質羊毛 [毛糸](もと Botany Bayから輸出された)なることばが収録されています。

このBotany woolは、上質ウールを表すことばとして現役のようですね。Botany woolを使った輸入セーターは、某サイトで2万5千円でした。

しかし、歴史的経緯を知らず、Botany woolなんていわれると、「植物ウール?」と、フェイクファーやフェイクレザーならぬ、植物由来のフェイクウールだと思ってしまう人もいそうですね。


Botanは、このBotany woolを除けば、植物学や薬学に関連した用法しか見当たらないようです。

「植物」といえばPLANTなのは、ネイティブにも、非英語話者にも、変わらないのかもしれません。「植物,草木」「苗」という意味から派生した「プランター」(植木鉢)ばかりでなく、「工場,設備,装置」という意味も日本語として定着しています。

plantには、俗語としては、「計略, 策略,詐欺,ごまかし」なんて意味もあるんですね。trick, swindleの同義語らしいです。かつては「スパイ」を示す隠語でもあったようです。

この用法には、日本の忍者が「草」と呼ばれたことを思い出させます。忍者には「草」とよばれる任務があり、「草」が忍者そのものを指すこともあったようなのです。「草」の任務は、一般人を装って、素性を完全に隠し、現地人と交流し、家族を作り、目標の土地に溶け込み、現地に定住するのが、その役目でした。英語圏でも、似たような語源だったのかな?

ボタニカル・デザインといえば、ウィリアム・モリスですね。見出しがぞに使った図案は、有名な「いちご泥棒」です。

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