落書き 2015/1/26
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わけがわからないという顔つきで政が何か言おうとした時、鉄が政の足を突っついた。何食わぬ顔で鉄が喋る
鉄「いやぁ~、これで一安心ですね。どうなるかと心配してましたよ」
政「しかし・・・」
鉄「しかし? なんでぇ」
政「却下当日に放送された叔父貴のインタビューじゃぁ、誰が見たってこれで終わりって雰囲気でしたが・・兄貴もご覧になっているでしょう」
鉄「ばぁか、 終わりにできるわけがないだろう。ねぇ 旦那」
鉄は旦那に顔を向けた。
旦那は女将に軽く頭を下げながら、二人の前に座った
旦「あの放送を見て終わったと思ったのは私達だけじゃないのですが、この事件を知っている多くの人がこのままではいけないと感じてくれたようですよ。いろんな人から励ましが叔父貴に寄せられてましてね・・・」
鉄「その中の一人が布川の親分さんなんですか」
旦那は政から自前の盃に酒を注いでもらいながら頷いた。
政「しかし、旦那、申し訳ないですが、私の耳に入る話じゃ・・」
鉄「政、今日のてめぇは「しかし」ばかりだな。とにかくは即時抗告は提出されると決まったんだから、ぐだぐだ言ってんじゃねぇぞ」
鉄が政を言葉を遮るが政は止まらない
政「いや 兄貴 そうはいきませんぜ。この先のこともあります。旦那ぁ どうして、叔父貴は放送の中で『悔いはない』というセリフを言ったんですかい。あれは終結宣言と取られても当たり前じゃねぇですか」
納得がいかないと政が強い口調で話した。
旦「私も再審却下が決まった時点で叔父貴は終りにする気だったと思いますよ。どうして、叔父貴がそんな考えを持ったのかは想像になるので控えますが、その責任の一つは私と支援する会にあるのは間違いないでしょう」
鉄「旦那、その話は今日はいいじゃねぇですか。へたすりゃ 叔父貴や支援する会の悪口になっちまいます。会のもめごともいろいろあったと聞いてますが、とにかくは即時抗告提出が決定ならよしとしましょう。まさか、叔父貴がしぶしぶ提出するんじゃねぇンでしょう」
鉄は旦那に顔を向けて話してはいるが、横にいる政に向けても話ていた。
旦「あははは それはないですね。提出決定後の叔父貴はやる気満々です」
鉄「旦那 そりゃぁ、雨降って地固まるでところですね」
鉄はにやりと盃を旦那に差し出した。
しかし、旦那は黙ってその盃を受けた。
政「叔父貴だけでなく、支援する会も仕切り直しってところですか」
旦「ですね。仕切り直しは年明けには始まりますよ」
今度は明るい声で旦那が応じて、政に盃を差し出した。
政はその言葉に納得したように盃を空けたが、すっきりとした気分にはなれなかった。
南国土佐とはいえ雪は降るが、今年の降雪は例年にない降り始めだった。12月にこの積雪は珍しい。しかし、この土地の古老は雪が早い年は春も早いと言う。この事件とこの三人に春が来るのはいつのことだろう。
続く
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