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映画「ポチの告白」を地でいく汚職事件の顛末

2010-05-31 17:21:36 | 雑記録

映画「ポチの告白」を地でいく汚職事件の顛末

汚職警官の懲戒免職は重すぎるのか?キャバレー接待汚職の元巡査部長が退職金にありつけるのか?と高知新聞の記事を見て瞬間湯沸かし器に激高した。Twitterにも批判的なことを書いた。しかし、よくよく調べてみると、どうやら県警上層部が元巡査部長個人に罪をおっかぶせようとしていたようだ。なんてこったい。高知新聞の手口を批判しておきながら、県警が高新を通して流したリーク情報に乗せられそうになっていた。

●珍しくない警察の汚職事件だが
そもそも、この元巡査部長が懲戒免職処分となったのは、風俗店経営者から飲食接待を受けたり、プリペイドカード代5万円を立て替えさせるなどし、見返りに捜査情報を漏らしたなどとされる。誰が見ても、接待や金銭的な見返りに捜査情報をリークしたとされる贈収賄事件である。犯人扱いされた元巡査部長の懲戒免職処分が取り消され、停職1年に修正された。なんじゃそりゃ?である。
元窪川署巡査部長の贈収賄:「免職は重すぎる」県人事委、停職1年に修正

風俗店の取り締まりをめぐる汚職事件は珍しくない。ざっと調べても、2006年群馬県警巡査部長が収賄容疑で書類送検され懲戒免職。2009年には警視庁の複数の警察官が収賄容疑で懲戒免職など。これらは、わいろを受け取ったり、取り締まり対象から外したり、捜査情報漏えいの疑いなどである。捜査関係者の「ミイラ取りがミイラになる」事件が珍しくなく、あちこちの県警で起きている不祥事の十八番なのだ。これらの事件を見ると、高知県警の収賄事件も懲戒免職処分が特別重い処罰とは思えなくなる。

●県警を追及していた高知新聞だが
事件発覚当時、高知新聞はこういう記事を掲載していたようだ。

キャバレーに捜査情報 巡査部長を懲戒免職 県警http://www.kochinews.co.jp/0606/060603headline01.htm#shimen1(削除されている)

高岡郡窪川町(現四万十町)の外国人キャバレーを舞台にした窪川署員接待汚職事件で、県警は2日、収賄容疑で書類送検した元同署刑事生活安全課勤務で本山署警務課の巡査部長、■■■■容疑者(55)を懲戒免職としたほか、接待を受けた元窪川署刑事生活安全課長の警部(55)を停職3カ月とするなど計16人を処分した(いずれも2日付)。
同容疑者はキャバレー経営者=贈賄容疑で送検=に風俗店の捜査情報を漏らすなどした見返りにわいろを受け取っていたという。同容疑者と元課長以外で懲戒処分されたのは、同課員だった警部補(36)と巡査部長(36)を不適切な接待を受けていたとして戒告。14―15年度の窪川署長の警視を監督責任で戒告。ほか、元本山署長の警視3人など計11人を本部長注意などとした。
調べによると、■■容疑者は12年度に窪川署刑事生活安全課に配属。同課で風俗店の許認可事務を担当しながら、キャバレー経営者から頻繁に接待を受け、捜査情報を教えた見返りと知りながら、本山署に勤務していた昨年10―11月に3回、国際電話用のプリペイドカード代金として計5万円を借りるなどわいろを受け取った疑い。同容疑者は15―17年に5回、店の摘発を警戒する経営者に対し、店の周囲に止まっている車をナンバー照会して所有者を調べ、「捜査車じゃない」「摘発情報はない」などと教えていた。
同容疑者は「昨春まで数十回接待を受けた。5万円以外にもこれまで10回ほど計十数万円を借りた」と容疑を認めているという。同キャバレーの特定の外国人女性を目当てに足しげく通っていたといい、帰国した女性らにプリペイドカードで電話していたという。「(同容疑者らが)頻繁にキャバレーに出入りしている」という匿名の投書が14―15年に県警本部などに寄せられ、当時の署幹部が同容疑者らに注意したが、同容疑者や課員らは出入りをやめなかったという。

あだ名は「フィリピン刑事」
窪川署員らの外国人キャバレー通いは、地元客の間では有名だった。頻繁に接待を受ける署員らの姿には、風俗営業の許認可権限を持つ「官」の“たかりの構図”さえ浮かぶ。14年末に高知市で発覚した同じ外国人キャバレーを舞台にした警察官汚職事件を再び繰り返した県警。自浄力を失った県警組織の病巣の根深さがあらためて露呈した。
「ああ、あのフィリピン刑事(デカ)」―。同署刑事生活安全課員だった■■■■容疑者(55)の書類送検を知った地元客らはそうあだ名で呼び、「(キャバレーに)ずぶずぶに漬かっていた」と言い捨てた。同署員らは以前から、事件摘発の打ち上げや外部団体との懇親で、この外国人キャバレーを利用。1時間に3000―4000円前後は掛かる料金システムだが、経営者は代金を取らずに利用させることも多かったという。
同店はフィリピン人女性らをホステスとして働かせ違法な営業実態だった。署員らはそれを黙認状態で接客を受け、次第に「付け」と称してただで飲食するなど深みにはまっていった。中でも、■■容疑者の“たかりぶり”は突出していた。同容疑者は15年6月に長岡郡本山町の本山署に異動後も管内を抜け出し、キャバレー通いを続けた。「帰国したホステスを追いかけてフィリピンに行った」と聞かされた同僚もいるほどだ。県警は窪川署員らのキャバレー通いを14年に匿名の投書で把握しながら、当時は署長が口頭で注意しただけで、問題の悪質さを突き詰めなかった。
14年末に高知署員の外国人キャバレーでの汚職事件が発覚後、県警は警察官に職務倫理についての作文を提出させるなど、各署ごとに不祥事防止対策を取ったという。しかし、同容疑者は漫然と通い続けていた。村田達哉警務部長は2日の記者会見で「二度と起きないよう取り組んできたが、本当に特異な者がまだいた」と強調した。その一方で、「それ以上に、幹部が止められなかったことが大きな問題だ」と県警組織の構造的問題にも言及した。
現場警察官の中には「『だらしない個人の犯罪』として済ませられる問題ではない」「若い課員を引き連れていった課長の責任はもっと重いはずだ」と、今回の処分にさえ不満の声がある。不祥事を繰り返す県警の病巣はどこにあるのか。幹部と現場の警察官が一体になって考え、あしき体質に向き合わなければならない。

県警実名、署名明かさず
県警は2日発表した接待汚職事件の処分で、懲戒免職や停職処分などとした16人をすべて匿名とし、どこの署に所属しているのかも明らかにしなかった。
県警は「警察官以外の関係者もおり、警察庁の発表指針を基に個別に検討した結果だ」と説明。接待を受けたとして懲戒処分にした巡査部長ら4人についても、明らかにしたのは階級と所属課、年齢のみ。事件の舞台となった窪川署の名前も伏せた。懲戒免職を実名で公表している県や県教委の対応と大きな隔たりがある。高知新聞には2日、「これだけの不祥事を起こしておいて、なぜ匿名なのか」と県警の姿勢を批判する声が相次いだ。

組織に大きな問題
村田達哉警務部長の話 極めて遺憾で県民に深くおわびする。職員の意識改革が不十分で、幹部が止められなかったことに組織的な大きな問題があると思っている。今後は職務倫理や身上把握を徹底し、再発防止に全力で取り組みたい。


この記事は、県警の姿勢を厳しく追及する姿勢である事は間違いない。しかし、その後の2年ほどの間に、高知新聞の姿勢は大きく転換した。当時の記事で「フィリピン刑事」とか実名まで書いて煽っていたのに、今回の停職1年という処分にいたる経緯について何も言及していない。高知新聞がこれだけの記事を書くなら、捜査情報のリークが無かったなど、事件の経緯についてフォローアップすべきなのだ。書いたら書きっ放しの高知新聞は無責任すぎないか?

●贈賄側の調書をでっち上げていた高知県警
ところが、である。調べるうちに、キャバレー接待汚職事件が先に報道されていた事とずいぶん違うのではないか?ということが分かってきた。

というのも、贈賄したとされる男性が、事実とは違う調書を作られたとして、調書を作った警察官を虚偽公文書作成などの疑いで告訴していたからだ。おやおや、郵政不正事件でも問題になったでっち上げ調書がまた登場したぞ?コレは怪しい。

その調書を作った警察官は、男性に対して「書類は後で自分が作っておくから」と言って、白紙の調書に署名なつ印させ、その後、元巡査部長に便宜を図ってもらったという調書を作ったという。高知白バイ事件でも問題になっている調書捏造疑惑がここでもあったわけだ。この虚偽公文書作成事件はどうなったのか何も聞こえてこない。ということは、告訴が不受理となってもみ消されたのかもしれない。しかし、こういう事実がきちんと報道されてこなかった事も問題である。

さんさんTVの報道:窪川汚職事件 警官「起訴猶予」
高知地検は起訴猶予処分の理由として「提供した情報の内容はそれほど重大ではない」として賄賂性が低いことを挙げていますが、元巡査部長は「検察側から一度も取り調べを受けていないので納得がいかない」と話しているということです。

検察が容疑者を取り調べもせずに、起訴猶予処分にしたのは聞き捨てならんこと。これは県警と検察で最初からストーリーが決まっていたのだろう。そのストーリーに従って筋書きを作り上げるやり口だから、ヘタに調書を取ったり、取り調べたりして事実を言われても困るということだ。これらの事実から、高知県警のでっち上げ捜査だった確率が極めて高いのだ。

●「明るい警察を...」というフレーズに誤解
この事件を報道した高知新聞に、「元巡査部長を支援した『明るい警察を実現する全国ネットワーク』の弁護士が「警察組織のスケープゴート的な懲戒処分や見せしめ的な懲戒処分を否定し~」と書いているのが目にとまった。調べてみると、この「明るい警察を実現する全国ネットワーク」は、警察OBが発起人になっているようで、一見すると妙な違和感を覚えたのだ。

明るい警察を実現する全国ネットワーク

Twitterで思わず「うさん臭い組織」みたいなことを書いた。が、よくよく調べてみると、どうやら誤解していたことが分かってきた。その名称の「明るい警察~」では、懐かしい「明るい農村」(笑)みたいな内輪向きの印象を持ったからだ。タイトルだけで印象が左右されるから気をつけた方がいい(と責任逃れをしてみる)。

どうやら、元巡査部長が懲戒免職から停職1年という軽い処分になったのは、警察の調書捏造によって贈賄したとされる事実関係が揺らぎ、そのために収賄の事実も怪しくなったからだろう。この事件は映画「ポチの告白」を地でいくような警察組織の汚い手口だ。本来であれば、一緒にキャバレーに通っていた課長が責任を取るべきだが、巡査部長に罪をなすり付けたらしい。新聞記事に書かれていた弁護士の「警察組織のスケープゴート的な懲戒処分や見せしめ的な懲戒処分」という意味はこういう事だ。

「明るい警察を実現する全国ネットワーク」は、不当に処分された警察官を支援し、警察組織を追及する姿勢は確かだろう。その活動によって、正義感がある警官が安心して内部告発できるよう身分保障できれば社会が明るくなるというもの。

郵政不正事件でも、検察側の調書をでっち上げる汚い手口が曝かれている。調書をでっち上げる行為を虚偽公文書作成罪として処罰しないから捏造が繰り返されるのだ。権力を不当に行使し、無辜の人を意図的に処罰しようとしたものを厳罰に処するのが正義だろう。

●新聞記事に印象操作された
高知新聞5月28日夕刊記事
それにしても、高知県警の広報部たる高知新聞に欺されそうになった事に腹が立つ。とくに記事の「来春の定年まで警察官として過ごす考えを示した」という部分は明らかな印象操作だ。

この一文を読むと「懲戒免職から一転して退職金をもらえるのか」と感情的になる部分である。新聞記事としてはこのような部分を載せるべきではない。それより、贈賄したとされた男性が調書捏造で県警を告訴した顛末はどうなったのかを添えるべきだろう。この記事は、明らかに県警側に立った提灯記事である。

なお、「明るい警察を実現する全国ネットワーク」で知ったが、高知県警の元警察官の片岡壯起氏も不祥事の責任を押し付けられたという。こういう事例がいくつもあるということは、いかに高知県警が腐っているかよく分かるというもの。

高知県警にでっち上げられた冤罪被害者の方々に声援を送りたい。また、Twitterで誤解して書いた記事を削除するとともにお詫びしたい。

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