原題:Postia Pappi Jaakobille
2009年・フィンランド(75分)
製作:ラッセ・サーリネン、リスト・サロマー
監督・脚本:クラウス・ハロ
脚本・原案:ヤーナ・マッコネン
音楽:ダニ・ストロムベック
出演:カーリナ・ハザード、ヘイッキ・ノウシアイネン、ユッカ・ケノイネン ほか
鑑賞日:2011年2月1日 (銀座)
鑑賞前の期待度:★★★★
舞台は、1970年代のフィンランドの片田舎。
メールではなく、手紙の時代。
恩赦により12年ぶりに刑務所を出なければならなくなったレイラは、
所長からヤコブ牧師のところへ行くよう薦められる。
意に沿わないながらも、行く当てのないレイラは、
見ず知らずの牧師のもとへと向かう。
周囲には草が生い茂り、朽ちかけたような住まいに、
高齢で盲目のヤコブ牧師は暮らしていた。
レイラに与えられた仕事は、
郵便配達人が届けてきた手紙を音読し、返事を代筆すること。
ただ、それだけ。
自分を頼って毎日届く手紙に、生きがいを感じているヤコブ牧師。
渋々ながら、仕事を引き受けるレイラ。
そして、元受刑者のレイラに不審感を抱いている郵便配達人。
3人それぞれの本心は秘められたまま、
物語は白樺に囲まれた林の中で静かに語られていく・・・。
この作品は、上映時間も短い上に、セリフも冗長ではない。
ネタバレも、たった3行で書き切れる内容。
しかし、シンプルな物語が、細やかに、丁寧に描かれていて
スクリーンに映る画が、多くのことを語りかけてきました。
なぜ、レイラは刑に服していたのか?
なぜ、ヤコブ牧師はレイラを呼び寄せたのか?
郵便配達人は、なぜ配達に来なくなったのか?
牧師が手紙にこだわり続けたわけ。
レイラが人生に絶望していたわけ。
この作品を観ながら浮かんだ疑問から、目を離さなければ、
人が人を想う気持ちの深さ、
言葉に表れない本当の優しさに気づき、
ささやかながらも生きていくための希望の涙が、静かに頬を伝う。
冒頭であれほど険のあったレイラの顔つきが、
終幕では柔らかく変っていることに、観ているこちらが救われました。
ガエターノ・ブラーガ『天使のセレナーデ』
ショパンの『夜想曲第2番変ホ長調』
ベートーベンの『ト長調のメヌエット』
ジャック・オッフェンバック『ホフマンのフナウタ』
スクリーンから流れる美しい旋律も、
魂を昇華させてくれるように感じました。
レイラの心の変化度:★★★★★★★★★★★★
ヤコブ牧師の慈愛度:★★★★★★★★★★★★
フィンランドの風を感じる度:★★★★★★★★★★★★
大切な人へ手紙を書きたくなる度:★★★★★★★★★★★★★★★
鑑賞後の総合評価:★★★★
観終わった後、
自転車を漕ぎながらやって来る郵便配達人の
「ヤ~コ~ブ、手紙だよ。ヤ~コ~ブ。」の声が、
しばらくの間耳に残っていました。