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『ゴッド・ブレス・アメリカ』 (R15+)切なさの残る過激なブラック・コメディ

2012年08月17日 | 笑っちゃった映画

原題:GOD BLESS AMERICA(R15+)
2011年・(104分)
               
製作:ジェフ・クロッタ、サラ・デ・サ・レゴ、リチャード・ケリー、
   ショーン・マッキトリック
監督&脚本: ボブキャット・ゴールドスウェイト  
音楽:マット・コラー
出演:ジョエル・マーレイ、タラ・リン・バー、マッケンジー・ブルーク・スミス、
   メリンダ・ペイジ・ハミルトン、リッチ・マクドナルド ほか


鑑賞日:2012年7月28日 (渋谷)

日本での上映が決まった時から楽しみにしていた作品。
ところが、公開直前の7月20日、
『ダークナイト・ライジング』を上映していたアメリカ・コロラド州の映画館で、
銃乱射事件が発生。

本作『ゴッド・ブレス・アメリカ』の中に、映画館内での発砲シーンがあるため、
もしかして公開延期か?と思いきや、
予定通りの公開となったので、顰蹙覚悟で初日に足を運んだ。

<ストーリー>
妻と小学生の娘に家を出て行かれた中年男フランクは、いまやひとり暮らし。
自宅では、テレビが唯一の相手。
会社からは突然リストラを言い渡され、
週末に会う予定の愛娘には、「つまらないから会わない!」と拒否られ、
医者からは不治の病を宣告される。

立て続けに起こる身の不幸に、生きていることの虚しさを感じたフランクは、
騒々しいばかりのテレビ番組を見ながら、(死んじゃおうかな・・・)と、
ひとりピストルを口にくわえる。
ところが、引き金を引く寸前、
リアリティー番組が映し出すセレブ小娘のあまりに傍若無人なわがまま振りに、その手を止めた。
(こんな小娘を生かしておいたら、世の中の為にならない。
 せめて、この小娘を殺してから自分も死のう。)

翌日、セレブ小娘を張り込むフランク。
ひとりとなったところを狙い、手筈とは違ったが、あっさりと射殺。
あとは自分が死ぬだけ。
だが、偶然その様子を目撃した女子高生ロキシーが、
彼の泊まっているモーテルまで追いかけ、
彼の行為をほめちぎり、自殺を思い止まるよう説得する。
「このまま死んだら、テレビ番組の女学生に恋した、ただのストーカー扱いよ。
 変態オヤジが彼女を殺して自殺。女をものにできなくてね。
 違うでしょ?
 世の中には、もっとぶっ殺すべき大勢の人間がいるんだから、
 続けるのよ。」
「たとえば?」
ロキシーの説得に自殺を思い止まったフランクは、
残りの命をロキシーとの旅にかけることに・・・。
  
気に入らないヤツらは、片っ端から射殺!
銃社会だからこそ成立する超過激なブラック・コメディに、
大いに笑った。

気に入らないと言っても、
フランクとロキシーが殺していくのは、
映画館の座席で、携帯電話の電源を切らないどころか、
堂々と電話をしたり、私語をやめない輩。
駐車場に斜め駐車しておきながら悪びれず、注意されて逆切れするヤツ。
過激なアジテートやアピールをし、世の中を扇動する連中。
つまりは、
周りの状況に構わず、他人への配慮が欠け、
自分のことしか考えず、
最低限のモラルさえ欠落している連中が、
フランクたちの手にかかって、あっさりと殺されていく。

躊躇なく銃を撃つシーンに、(ヒドイ!)と思う一方で、
(撃ちたくなる気持ちは分かる!)と、心のうちで拍手喝采。

結局のところ、フランクとロキシーが抱えているのは、
現代社会へのフラストレーションであり、
彼らの不満は、
リンジー・ローハン、アンジェリーナ・ジョリー、マイケル・ジャクソン、
ウッディ・アレンなどハリウッド・ゴシップネタや、
テレビドラマ『Glee』や、
視聴者投票によってアイドル・スターが決まる有名なオーディション番組など、
現実のTV番組へも向けられる。
(会話で交わされる彼らへの批評に、大笑い!)

脚本を書いたゴールドスウェイト監督は、
こうした番組やゴシップネタ、
煽情的なマスコミによって醸成される空気感までもが、
アメリカ社会をダメにしていると主張したかったのだろう。
「こんなアメリカは嫌だ!!そう思わないか?」と、
痛烈に問いかけてくる。


一方で、
この作品がただバイオレンスなコメディで終わらないのは、
自殺するつもりだった中年男フランクが、
次第に女子高生に心を開いていく過程が、
抒情的に描かれているからだろうか?

終盤、切なさにも似た想いを抱かされる。

本作は、本国アメリカでも物議を醸すほど、
アメリカ人が、アメリカ社会に向けて放った過激な映画ながら、
日本人にとっても頷ける点が多々あるブラック・コメディだった。


フランクの悲哀度:★★★★★★★★★★★★
ロキシーの愛嬌度:★★★★★★★★★★★★★★★★
爽快感度:★★★★★★★★★★
ブラックネタに笑える度:★★★★★★★★★★★★
アメリカに神の祝福を!度:★★★★★★★★★★

鑑賞後の総合評価:★★★★
     公開初日とあってか、
     上映後の劇場で、『ぴあ』がアンケートを取っていた。
     「100点満点で何点の作品ですか?」と尋ねられたので、
     「80点です。」と答えた。



ひとのふり見て我がふり直せ。
日本社会もこうならないよう、気をつけなくては。

それにしても、アメリカはいつまで経っても銃社会から抜け出せないなぁ。
これだけ悲劇が繰り返されているというのに・・・。

余談:
ボブキャット・ゴールドスウェイト 監督は、
かつて
『ポリス・アカデミー2/全員出動!」』('84)以降のシリーズにゼッド役で出演していた。
なんだか懐かしい。



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