お疲れ様でございます。今日は、日曜日。リフレッシュはできましたでしょうか。ダメ娘は、相変わらずの昼寝です。
起こすと、こうなります。目が少し怒っております。
『年金生活なのに私を扶養家族にしてくれてありがとう』なんて、ぜったいに言ワンです。犬との愛は、言葉が通じないことにより成立しております。爺さんは、昨日は町内会役員会、今日は、校区での公園の清掃作業と、危惧していたように走るタイミングを失しております。
前回、高村薫さんからみで、空海(弘法大師)のことを書きましたが、”犬と空海”って、いつか何かで読んだなぁ、と探してみましたら、ありました。
辻一(つじ・まこと)さんの画文集『山で一泊』のあとがきにある話。
「まだ1歳半というのに溌溂たるところがなく、知らぬ人間をみるとウルサク吠えるくせに、表情は鈍くて、すぐゴロリと横になる。無芸大食の甘ったれペット」(うちのダメ娘!)を知人から託されて、飼ってくれるであろう甲州の山小屋の若夫婦のところへ連れていく。
「温泉で一晩泊まって翌朝山を登るのが順だが、秋の夜道も悪くないからトミ(犬の名前)二人で歩き始めた。尾根を一本越して次の尾根にかかる途中に池がある。そこで焚火をして夜食をしたためた。風がすこしでてきてススキなんぞがゆれるとそのたびにトミは”キューキュー”というような変な声をだす。火勢が弱まるとだんだん私にすり寄ってくる。首筋をなでてやると、寒くもないのに細かく震えている。生まれてはじめて山へ来て、この夜の自然が、どうやら怖い様子だった。」
「、、、、思わず眠りこけて、はっと目をさましたら、焚火は消えかかり、、、月は池の向こうの森に沈みかけ、蒼い影が風景を先刻よりは沈鬱にしていた。私のまわりにトミの姿がなかった。」
「枯れ枝をくべて火を調え、もう一ぺんコーヒーを温めた。ビスケットをだして、トミ、トミと呼んでみた。すぐに枯草を鳴らして池の方からトミが戻ってきた。ビスケットを私の手からたべるトミはもう震えてはいなかった。ちょっと私が居眠りをしている間に一体何があったか知らないが、トミは今までとは違って引き締まった様子にみえた。」
「その後、トミは兎狩りくらいならけっこう役に立つほどになったそうだ。」
「私はそれから弘法大師のことを知りたくなった。、、、真言秘密の法もなにもちっとも知らないけれど、いろいろと想像するところ、どうもこの空海という人はトミのめざめのようなものをよく知っていたのじゃないかと思うのである。四国八十八箇所を歩いてくると人間だってトミのような経験を一度ぐらいするかも知れない。、、、ペット暮らしを抜けてみて、はじめて野良犬本来の生活のうちに本性を見たトミの経験は無意識ながら私にもおもいあたるところがないわけでもない。今の四国八十八箇所はもはや弘法大師の奨めたコースのようなチャンスを含んではいないだろう。」
爺さんだって、萩往還の山道や、橘湾の海沿いを、星を見上げながらふ~っとため息をつくとき、野性の証明に触れたような気がするのですよ。うちのダメ娘は、もう手遅れでしょうが。
なお、この辻まことさんの本は、昭和53年に(爺さん29歳)に買ったもので、たぶん、読もうと思っても難しいと思われますので、長々と引用しました。辻まことさんについては、次回に少し書きます。
では、暑さとコロナにお気を付けください。

起こすと、こうなります。目が少し怒っております。

『年金生活なのに私を扶養家族にしてくれてありがとう』なんて、ぜったいに言ワンです。犬との愛は、言葉が通じないことにより成立しております。爺さんは、昨日は町内会役員会、今日は、校区での公園の清掃作業と、危惧していたように走るタイミングを失しております。
前回、高村薫さんからみで、空海(弘法大師)のことを書きましたが、”犬と空海”って、いつか何かで読んだなぁ、と探してみましたら、ありました。

辻一(つじ・まこと)さんの画文集『山で一泊』のあとがきにある話。
「まだ1歳半というのに溌溂たるところがなく、知らぬ人間をみるとウルサク吠えるくせに、表情は鈍くて、すぐゴロリと横になる。無芸大食の甘ったれペット」(うちのダメ娘!)を知人から託されて、飼ってくれるであろう甲州の山小屋の若夫婦のところへ連れていく。
「温泉で一晩泊まって翌朝山を登るのが順だが、秋の夜道も悪くないからトミ(犬の名前)二人で歩き始めた。尾根を一本越して次の尾根にかかる途中に池がある。そこで焚火をして夜食をしたためた。風がすこしでてきてススキなんぞがゆれるとそのたびにトミは”キューキュー”というような変な声をだす。火勢が弱まるとだんだん私にすり寄ってくる。首筋をなでてやると、寒くもないのに細かく震えている。生まれてはじめて山へ来て、この夜の自然が、どうやら怖い様子だった。」
「、、、、思わず眠りこけて、はっと目をさましたら、焚火は消えかかり、、、月は池の向こうの森に沈みかけ、蒼い影が風景を先刻よりは沈鬱にしていた。私のまわりにトミの姿がなかった。」
「枯れ枝をくべて火を調え、もう一ぺんコーヒーを温めた。ビスケットをだして、トミ、トミと呼んでみた。すぐに枯草を鳴らして池の方からトミが戻ってきた。ビスケットを私の手からたべるトミはもう震えてはいなかった。ちょっと私が居眠りをしている間に一体何があったか知らないが、トミは今までとは違って引き締まった様子にみえた。」
「その後、トミは兎狩りくらいならけっこう役に立つほどになったそうだ。」
「私はそれから弘法大師のことを知りたくなった。、、、真言秘密の法もなにもちっとも知らないけれど、いろいろと想像するところ、どうもこの空海という人はトミのめざめのようなものをよく知っていたのじゃないかと思うのである。四国八十八箇所を歩いてくると人間だってトミのような経験を一度ぐらいするかも知れない。、、、ペット暮らしを抜けてみて、はじめて野良犬本来の生活のうちに本性を見たトミの経験は無意識ながら私にもおもいあたるところがないわけでもない。今の四国八十八箇所はもはや弘法大師の奨めたコースのようなチャンスを含んではいないだろう。」
爺さんだって、萩往還の山道や、橘湾の海沿いを、星を見上げながらふ~っとため息をつくとき、野性の証明に触れたような気がするのですよ。うちのダメ娘は、もう手遅れでしょうが。
なお、この辻まことさんの本は、昭和53年に(爺さん29歳)に買ったもので、たぶん、読もうと思っても難しいと思われますので、長々と引用しました。辻まことさんについては、次回に少し書きます。
では、暑さとコロナにお気を付けください。