ちっちゃいチャニョル・3

2014-09-25 | ちっちゃい・シリーズ

「ちっちゃいチャニョルについて、これ以上、騒ぎ立ててはいけない」

と、スホヒョンが、僕らに、かん口令を出しました。

だから、マネヒョンたちにも内緒です。

だけど、同時にそれは、僕らに、自分たちの無力さもわからせる結果となりました。

だって、僕らだけでは、自由に動き回ることに、制限がありすぎて。

「 おうち」だって、どうやって探せばよいのやら。

 

「大丈夫。この子の仲間も、きっと探しているから」と、カイは言うけれど。

「もと居た場所に、置いてきたらどうですか」と、セフンが。

恐ろしいことを言うなぁ。

「これ、俺に似てないよ?」と、まだ言ってるやつもいる。

「耳とか、うるさいところとか、似てるよ」と、ディオに言われて落ち込んでる。

 

そんなこんなで、2日経ち、3日経ち、4日目の夜。

 

もう、ちっちゃいのもここに慣れてきたようで、コップのお風呂に入ったり、

キンパを砕いたのを食べたり、僕のベッドでくつろいだり。

 

そんなとき、突然、窓の外が光って、ちっちゃいチャニョルが、

慌てたように窓に向かって走り出しました。

そうか。

来ちゃったか、お迎えが。

 

大急ぎで皆を呼び、僕は、ちっちゃいのを掌に乗せて、窓辺に駆け寄った。

そして、窓を開けた。

光が、部屋中に満ちて、もう、なんにも、なんにも見えなくなった。

 

それが、最後だった。

 

僕の掌は、空っぽになった。

 

集まってきたメンバーの話では、やっぱり、光が眩しすぎて、何も見えなかったそうだ。

 

「…行っちゃったね」と、ディオが、ポツリと呟いて、僕の背中を撫でてくれた。

 

カイは、無言で僕を抱きしめた。

 

セフンは、僕に抱きつく振りをして、脇腹をくすぐってきた。

「なんだよ、大丈夫だよ」と、言うと、

「泣かないで、ヒョン」と、とどめを刺す。

「泣かないよ。たった4日じゃないか」

そう言うと、涙が出そうになって、慌てて窓を閉めに行った。

 

スホヒョンは、僕の肩を抱いて、「ゆっくりおやすみ」と言ってから、部屋を出て行った。

 

そうして、ひとり、ベッドの隅に座って、ぼんやりしてると、

あれ?そういえば。

一番うるさい、大きいのはどうしたんだ、いなかったのか、と思い立った。

まぁ、いたらいたで、うるさいから別にいいけど。

 

と、ドアを閉めようと目を転じて驚いた。

ぬぅ、と立つ人影がそこに居て。

こっちを心配そうに見てる。

「なんだよ、驚かすなよ」

「べつに、驚かすつもりじゃ…」

そう言って、まだ突っ立てるから、どうぞ、と、ベッドの横を指してやると、

大きな体を縮こませながら、隣に座った。

「さ、さみしくなるな」

…思ってもいないことを。

「でもさ、なんで、俺なの、あのちっちゃいのが」

まだ言うか。

僕の不機嫌さに負けそうになって、じゃあ、そろそろ、と立って行きそうになるやつの手を掴んで引き留める。

トン、と、ベッドに座り直すチャニョルは、とても軽やかだ。

 

「なんのためらいもなく、」と、空っぽの掌を見つめながら言った。

「え?」

「なんのためらいもなく、差し出す僕の手に乗ってきた」

「はぁ」

「それと、僕がやるものを、なんの疑いもなく、食った。

 それから、僕の前で、何の警戒もなく寝た。それから…」

「もう、いいよ、わかった。わかったよ、ベッキョン、わかったから」

そう言って、頭を撫でてくれるチャニョルの手は、大きかった。

 

泣くなんて、しないと思っていたのに。

 

チョコレート色の夜には、気をつけよう。

 

ちっちゃいチャニョルが落ちてるかもしれないから。

 

また見つけたら、きっと、拾ってしまうから。

 

 

(ちっちゃいチャニョル・Fin)

 

 

 

 

 



2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
スミマセン (パクパク)
2015-05-02 00:00:27
前のコメント間違って 同じの2度投稿
しちゃいました。削除の仕方わからなくて
なんか 色々スミマセン

チャンベク の話は、くすぐったいですね
笑えるけど、萌えどころもあって切ない
気持ちにもなりました。
チョコレート色の夜に不思議な拾いものを
したくて、下ばかりみそうです(^^)
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パクパクさま (KOKO)
2015-05-02 08:00:07
パクパクさん^^
わぁ♪ありがとうございます。。
自己満足で書いてるけど、こうしてコメントいただけると、嬉しいです(それこそくすぐったいけど^^)。

ふふ。これは稲垣足穂のショートショートを意識して書いてみました(なんていうと畏れ多いですが)。

どっかの夜道で落ちてたら、全力で拾いますよねぇ。。(しみじみ)
ポケットサイズのEXOちゃん。
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