秘密 (シウミンとルゥハン)

2014-09-01 | シウルゥ
ある日、罠にかかっていた鹿を助けたら、
その夜、鹿が僕を訪ねてきた。

「こんばんは。今夜は星が綺麗ですね」

と、星を閉じ込めたような瞳をした鹿がそう言うので、僕も、

「こんばんは、そうですね」と返した。

「こんな夜は、一人でいるのは、もったいない」

そう言って、ずかずかと、開けたドアから入り込むので、

ずいぶん図々しい鹿だな、と思った。

だって、僕は、たいそう自分のテリトリーというものにこだわる性分だから。

でも仕方ない。

鹿ってこういうものかしら、

そう思って、僕はコーヒーを淹れてあげることにした。

もしかしたら、昼間の恩返しに来たのかもしれないし。


二人分のマグカップを持って、リビングに戻ると、

鹿は、ずいぶんとくつろいだ格好で、ソファに座っていた。

当然のように僕からカップを受け取ると、

当然のように僕が淹れたコーヒーを飲んだ。

まるで、ずっと昔から、そうしていたかのように。


その日から、鹿は、僕の部屋にいついてしまった。


僕が出掛けるときは、僕の後ろからついて来たし、

僕が笑うと嬉しそうに笑い、

僕が泣くと悲しそうにうつむいた。

それはそれで、不満ではなかったけれど。


「ねぇ」

ある日、ついに、ずっと疑問に思っていたことを投げかけてみた。

「なに?」

綺麗な声。

「いつまで、ここにいるの?」

「…なんでそんなこと、きくの?」

「いや、僕は、てっきり、君は僕が助けたお礼かなにかで訪ねてきたのだと思って…」

「…うん、そう。でも、ぼく、特に何もできないし」

そして、鹿は、真っ直ぐに僕を見つめてこう言った。

「だから、君が、もういいよ、って言うまで、一緒にいようと思って」


そして、まるで花が咲いたように微笑むので

あれからずっと僕らは一緒にいる。


たぶん、これからも、ずっと。



(画像はシウミンのインスタより)


2 コメント

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この感じ好きです (パクパク)
2015-05-01 23:04:10
こんばんは
以前 小説を書いてるとブログで読んで
探して見に来てみました(^^)

この鹿と男の淡々とした話が、まるで
宮沢賢治みたいだと思って、事件が起こる
でなく、泣かせようとするでも無いのに…
温かい気持ちになりました。

今では、鹿晗の記事を読んでも涙する事も
無くなっていたのに、久々に涙が…
私も花の様に微笑む鹿晗が好きでした。
いつまでもカイ君の隣で綺麗な笑顔を見て
いたかった。 スミマセンU+1F4A6カイペンです。

他の小説をこれから読みにいきます。
またダラダラとコメント残すかもしれませんが
どうぞ スルーしてください(^^;
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パクパクさま (KOKO)
2015-05-02 07:53:48
うわぁTTパクパクさん~こんなところでお会いできるなんて…pq
先日は向こうのブログで変なテンションでお返事書いてしまい、申し訳ありませんでした^^;

読んでくださってありがとうございます。
これを書いたときは、まさか今のような事態が起きるとは夢にも思わない、「この時」が永遠に続くと信じていた幸せな時期でした…。

ほんとうにルゥは美しかった(あ、今もですが)。
あのWセンターの尊さをリアルタイムで見られただけでも幸せとしなくちゃかな…
パクパクさん、また向こうのお部屋でもカイちゃんについて語りにいらしてくださいね^^
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