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「絶滅の危機から救え!アホウドリ」~口語短歌と写真で綴る「世界文化紀行」

「絶滅の危機から救え!アホウドリ」~口語短歌と写真で綴る「世界文化紀行」
日本で絶滅の恐れがある野生動物は1446種。そうした生きものたちを救おうと様々なプロジェクトが行われています。70年前、絶滅寸前まで追いつめられた伊豆諸島、鳥島のアホウドリを6200羽以上にまで回復させた取り組みを紹介します。

口語短歌
「悠然と グライダーごとく 上空を 爽やか滑空 オキノタユウ」


東京から南へ580キロ。鳥島はアホウドリの楽園である。
アホウドリは、翼を広げると2メートルを超える大型の海鳥だ。グライダーのように悠然と上空を滑空する姿からオキノタユウ(沖の太夫)とも呼ばれる。世界には、近縁種を含めて22種類が生息しているが、意外なことにアホウドリは、今では日本の近海、それも伊豆諸島の最南部の鳥島と尖閣諸島でしか繁殖していない。しかも、一時は絶滅寸前にまで追いこまれていた。

口語短歌
「アホウドリ 羽毛ビジネスの 被害に 乱獲捕殺で 絶滅寸前」


原因は羽毛を目的にした乱獲だ。アホウドリの羽毛は質がよく、羽毛布団の材料として好適だった。明治維新で西洋との交易が始まり、羽毛が高く売れると目をつけた商人がアホウドリを捕獲し、少なくとも約500万羽が捕殺されたという。
加えて一大繁殖地だった鳥島で火山が大噴火を起こし、捕獲のために入植していた島民は全滅、アホウドリのコロニー(集団営巣地)も壊滅的な打撃を受けた。

口語短歌
「アホウドリ 絶滅すれば 日本の 動物学者 超笑い物」



1951年、絶滅したと思われていたアホウドリが見つかったというニュースが流れた。中央気象台(当時)の測候所員が、火山活動を調査するために立ち寄った鳥島の南東端に位置する燕崎で、わずか10羽ほどのアホウドリが生息していた。その後、本格的な調査が行なわれ、アホウドリは1962年に特別天然記念物に指定され、徐々に数を増やし始めた。
長谷川(下記参照)は、生粋の「ハンター」だった。京都大学に入学して昆虫学研究室で個体群生態学、大学院では動物学教室で生態学を学んだ。その過程でトキとならんで絶滅が心配されているアホウドリに触れる機会があり、いつかは自分で見てみたいという思いを抱くようになった。しかし、長谷川氏は、「トキが絶滅して、アホウドリも絶滅させてしまったら、日本の動物学者はいったい何をしているのだとよその国から笑い者になりかねない。一生後悔すると思った」と世の流れをはねつけた。

口語短歌
「繁殖に ひなを育てる 環境を 整えてやる 巣作り支援」





長谷川氏がはじめてアホウドリの数を確認したとき、鳥島にいたのは71羽とひな15羽。特別天然記念物に指定され、保護が行なわれた結果、少しずつ数を増やしてはいた。だが、ひながたった15羽という数は、危うい状況であることには変わりはなかった。繁殖には、継続的な調査と保護が必要だった。アホウドリの数を増やすには、ひなを育てる環境を整えてやる必要がある。また、アホウドリは飛び立つのに助走が必要で、上昇気流を受けると有利である。そのため、コロニーは角度のある斜面に限られた。そこで、コロニーの中に巣の材料となる草を移植して巣作りを支援。デコイと呼ばれる模型と録音した音声を再生して、なだらかな斜面に新しいコロニーの形成を促す作業も続けた。

口語短歌
「絶滅の 危機をのり越え 復活へ 飛べアホウドリ さあ大空へ」



その活動は、ゆっくりではあるが確実に実を結ぶ。1999年には、鳥島のアホウドリは1000羽、2008年には2000羽を超えた。同年、鳥島からさらに350キロ南の聟島に、新たなコロニーを形成するため鳥島からひなを移し、そこで野外飼育をする活動が開始され、移した10羽すべてが海に飛び立った。数年後には、聟島に生き延びたアホウドリが戻り、そこで新たな命を育むことになるはずだ。5月、南の島で、今年もアホウドリのひなが巣立ちを迎える。

東邦大学理学部生物学科(動物生態学研究室)教授
長谷川 博(はせがわ ひろし)
専門はアホウドリの保護研究、著書に『アホウドリに夢中』(新日本出版社)『風にのれ!アホウドリ』(フレーベル館)などがある。
参照
「https://www.shimadzu.co.jp/boomerang/20/02.html」
「https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/05/29/08.html」

「2021年軽井沢レイクガーデンに咲いた薔薇たち」
「ピーチ・ブロッサム」2021年8月7日撮影

コメント一覧

knsw0805
びこさん、おはようございます。
「信天翁は人間を恐れないから捕まえやすかった」これはNHKBS放送でも言っていました。羽毛ビジネスの被害鳥とはショックでした。ジョン万次郎も生きながらえたのですね。そうですか、それは知りませんでした。
結局絶滅の恐れがある野生動物たちは「人間の被害者」ですね。地球温暖化もありますが、それはやはり人間のエゴイズムですからね。人間は発明・発見・工夫していきますが、地球全体から見れば破壊者なんですね。こうした取り組み番組を見るにつけそのように思います。
knsw0805
すずさん、コメントありがとうございます。
過日NHKBS放送でやっていまして、私も絶句しまして取り上げたのです。それも羽毛ビジネスの被害鳥です。ちょっと淋しくなりましたね。でも長谷川博さんが偉かったですね。彼に感謝です。
びこ
西日本の?漁船が遭難すると潮の流れで鳥島に着くそうです。それで昔の漂流者達はこの信天翁を食べて生きながらえたそうですね。信天翁は人間を恐れないから捕まえやすかったそうです。土佐の漁師だったジョン万次郎も…。

信天翁達は、Kenchanさんにたくさん詠ってもらったから喜んているかもしれませんね。
goodbook_2007
Kenさん、おはようございます。
アホウドリを詠った短歌~どれも素晴らしいですね。👍
流石、作詞もされるので言葉のセンスが光っている感じが分かります。素人の私ですけど…

アホウドリ絶滅が危惧されているとは…
子供のころから余りにも馴染がある名前の鳥だけに、驚いてしまいます…(自分があまりにも無知なのですが💦)
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