Think Globally, Act Regionally:『言葉の背景、カルチャーからの解放、日本人はどこへ往く』

身のまわりに見受けられるようになった「グローバル化」と生きる上での大事な「こころの健康」。さまざまな観点から考えます。

●第6回「感性系の勝利(日本人の良さを見直す)」

2007-04-10 12:26:23 | ■日本人はどこへ往く?

●第6回「感性系の勝利(日本人の良さを見直す)」

どうも人間の能力(アビリティ)には、カルチャ系とインテリ系があるらしい。
カルチャ系とは、感性を基盤に行動する系統で、インテリ系とは、知性を土台に行動する系列としましょう。

ご存知のように、戦後日本は、アメリカン・カルチャーの影響を多大に受けてきた。ミュージック、若者文化、ファッションなどである。一方、知識人予備軍の多くは、アメリカへ留学し、当時の最新知識(技術、政治、経済、文化など)を獲得してきた。フルブライト奨学金を利用した数多くの人たちやアイビーリーグの大学院卒業者が、戦後日本の ザ・エスタブリッシュメント(権力の中枢)を構成していたのではないでしょうか。

今、日本のカルチャー、特に、Manga、ゲーム、ファッションなどがアジアの若者を中心に全世界に展開しています。この分野は、国内的に見ると、特に、規制というものがなく、感性の優れた日本人観客に対して、自由に、絶え間ない競争を通して、独自に発展してきたものと思えます。ファッションは、ヨーロッパ(特にフランスを中心に)、アメリカ双方の要因が強く影響しながら、伝統的な日本の美意識がうまく絡まったものだと考えられます。また、細かさを特徴とするデザインへの感覚だけでなく、グルメブームも手伝った味覚に対しての感覚も、個性的な洗練性を完成させてきたのではないかと思う。

日本のインテリ系はどうでしょう。インテリ系の評価の一つである、ノーべル賞の日本人受賞者では、文学賞・平和賞以外は、理工系の学問がほとんどで、社会科学系統の受賞者はいません。(だから、ノーベル賞がどうだという訳ではありませんが、専門の経営学の分野では、野中郁次郎博士くらいしか国際的に評価されている人は知りませんが。)

どうしてなのでしょうか。

理工医生物学分野と違って、社会科学の分野というのは、特に規制が強い分野なのかも知れません。学界から目を離してみましょう。たとえば、身近なTV、政治分野で考えてみると、ジャーナリストの未成熟と相俟って、この分野での真剣勝負は、田原総一郎氏を除いてあとは見当たらないようです。政府・行政からの産業界や市民への規制は、まだまだ、たくさ~んの見えない枠がありそうです。これまでの日本人の知識輸入元としては、時間軸から言うと、中国の儒教思想を取り入れ、その後、文化・社会面ではヨーロッパやアメリカから、経済・経営面ではアメリカから、というのが一般的な流れだったように思います。

感性を育んだカルチャーに限って言えば、規制がなく、激しい自由競争の中で、比較優位性が、結果的に確保されてきたのではないか、と推測しているのです。

さて、日本人の良さは何か?
他国の国民性と比較して、これらのことがよく言われています。コミュニケーションツールとしての英語を除き、日常文化的な側面、つまり、「きれいずき」、「繊細さ」、「時間にルーズではない」、「一定の文化・教養を備えている(特に、先ほど言った感性分野など)」、「階級や階層意識がなく、どのレベルとも分け隔てなく交流ができる」という特徴がありそうです。

では、日本人の弱さは何でしょうか?
世界の異なった価値に不明、日本以外の出来事を知らない(除く自然災害/大事件)、性善説に立つ傾向がある、セキュリティ分野に無頓着、積極的に表に出るタイプ(文化)ではない、等々。

さて、まとめ段階に入りかけていますが、
昨年から今年にかけて、日本の将来の国家戦略として、「グローバル経済戦略」(2006年4月経済産業省)、「イノベーション25」(2007年2月中間報告)、「アジア・ゲートウェイ構想」(2007年3月中間報告)が発表されています。すべてカタカナなのが興味深いですが。

「グローバル経済戦略」では、東アジア経済統合の推進と日本のイニシアティブを中心に、世界各地域への経済戦略が述べられており、「イノベーション25」では、日本をイノベーション立国(2025年を目標に科学技術・社会・人材の革新国家)とすべく、科学技術投資の拡充、環境技術分野を基盤とした経済成長と国際貢献、大学での英語による授業の実施などが提言されています。「アジア・ゲートウェイ構想」においては、アジアとの交流について、インフラ(航空、貿易手続)、人材ネットワーク、金融ネットワーク、農業変革・構造特区、研究ネットワーク分野の提言がなされています。

これらの戦略構想は、将来の日本・日本人にある枠を設定することですから、官邸・行政・シンクタンクとエスタブリッシュメントの方々だけではなく、日本人の全智を傾ける必要があると思うのは、私だけでしょうか。

※写真は、ヨーロッパ最大の日本カルチャーのイベント、「パリ・ジャパンエキスポ」のバーナーより。

参考
日本人ノーベル賞受賞者
http://www1.odn.ne.jp/haru/data-result/nobelsho.html
グローバル経済戦略
http://www.meti.go.jp/press/20060412001/g.senryaku-p.r.-set.pdf
イノベーション25中間とりまとめ(総理官邸)
http://www.kantei.go.jp/jp/innovation/chukan/chukan.pdf
アジア・ゲートウェイ構想(中間論点整理)(総理官邸)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/asia/ronten.html