Think Globally, Act Regionally:『言葉の背景、カルチャーからの解放、日本人はどこへ往く』

身のまわりに見受けられるようになった「グローバル化」と生きる上での大事な「こころの健康」。さまざまな観点から考えます。

●第9回「盗用問題について、もう一つの見方から」

2007-04-14 21:19:26 | ■日本人はどこへ往く?

●第9回「盗用問題について、もう一つの見方から」

学界の論文盗用から始まり、社説の盗用、テレビ番組の企画内容の盗用と、日本国内では、盗用が日常茶飯事のように行われている。

また、音楽界では、2006年の10月19日に、「松本零士氏、槇原敬之に歌詞パクられた」と日刊スポーツが松本氏の言い分をのせ、2007年3月23日には、「盗作の証拠出せ!」と槙原敬之氏が松本零士氏を提訴(日刊スポーツ)、2008年7月7日に両者出廷となっている。
ちなみに、問題の歌詞は以下の通り。

松本「時間は夢を裏切らない 夢も時間を裏切ってはならない」
槇原「夢は時間を裏切らない 時間も夢を決して裏切らない」

さて、今回は、この盗用問題自体ではなく、なぜ盗用が行われるのか?その背景を考えてみた。

盗用とは、ぬすんで使用すること。文章などでは、「剽窃」(ひょうせつ。他人の詩歌・文章などの文句または説をぬすみ取って、自分のものとして発表すること(広辞苑)、と言われている。

欧米の書き物文化では、剽窃(plagiarism)については、厳しくルールが設定されている。それも、「知ってやった(意図的)」と「知らないでやった(無知や不注意)」のどちらであっても、その責任は免除されない。だから、著作者は、一生懸命他の著作を勉強して、それを防ぐ。一方、日本では、どうも、その教育がなされていないようだ。

欧米では、盛んにplagiarismを避けるために何をするかが言われている。

1.直接引用(カッコやインデントで他人の文章・言葉を明示する)
2.パラフレーズ(自分の言葉に直して、言い換えをする)
3.サマリー(他人の言葉やアイデアを要約する) 
などである。

また、plagiarismではないことは、
1.自分自身の、考え・議論・理論・図表・研究成果
2.一般的な常識
3.一般的な参考文献からの引用
(例えば、教科書・辞書・百科事典など。明示すべし)
といわれている。

このため、書き物文化では、引用する場合の細かな表現法がルール化され、学界論文では、文末には参考文献リストが必要になってくる。

さて、ここまで厳格ではない、マスコミや一般社会ではどうなんだろうか?

以前、経営関係の書物を読んだ時に、ある著者(達)のずさんな原稿を見たことがある。いろんな関連の書物から、換骨奪胎、自分の記述はほとんどないと言ったくらい、寄せ集めも甚だしいものだった。参考文献のリストもない。出版社も、剽窃のチェックまでは行っていない。著者のモラルだけに頼っているのが実態ではないだろうか。これは、専門家だけでなく、一部のマスコミ人やテレビ制作者にも言えることではなかろうか。そうでなければ、上記のような盗作は、起こることは考えられないのだから。

以前、この種の事柄について、欧米文化の一端を垣間見たことがある。英国人のジャーナリストが書物を出版するに当たって、関係していたこちらの出版物から引用をしたいといって、20~30箇所の図表の掲載確認を求めてきたことがあった。当時は、何だこれはと思ったが、これが、やはり欧米文化では普通なのだなあと分かったのは、それから大部経ってからの事だった。

この、誰にもわかりはしない、分かったときに考えればいいや、との思いは、企業倫理にとどまらず、個人の倫理(モラル)までもが、知らずしらず破綻をきたしていることの兆候なのだろうか。

スピードが求められる社会の中で、脇目もふらず生きてきた日本人は、その代償として、ここまで、倫理観を喪失してしまったのだろうか。

※写真は、槇原氏の歌詞を収録している「約束の場所」のCDと松本氏の「銀河鉄道999」のDVDのタイトルより使用した。

■テレ朝がMBSに「酷似番組」謝罪(4月14日8時1分配信 スポーツ報知)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070414-00000005-sph-ent
■松本零士氏、槙原敬之に歌詞パクられた(日刊スポーツ2006年10月19日8時27分)
http://www.nikkansports.com/entertainment/p-et-tp0-20061019-105561.html
■「約束の場所」の歌詞
http://music.yahoo.co.jp/shop/p/53/266851/Y035960
■「盗作の証拠出せ!」 槙原敬之が松本零士氏を提訴(日刊スポーツ2007年3月23日7時23分)
http://www.nikkansports.com/entertainment/p-et-tp0-20070323-173630.html
■「槙原敬之vs松本零士氏が法廷で対決」(日刊スポーツ2008年7月8日9時0分)
http://www.nikkansports.com/entertainment/news/p-et-tp0-20080708-381095.html