Think Globally, Act Regionally:『言葉の背景、カルチャーからの解放、日本人はどこへ往く』

身のまわりに見受けられるようになった「グローバル化」と生きる上での大事な「こころの健康」。さまざまな観点から考えます。

☆第55回「和心洋才(わしんようさい)のすすめ」★☆

2013-02-05 22:06:58 | ■カルチャからの解放
☆★☆第55回「和心洋才(わしんようさい)のすすめ」☆★☆

最近のスペシャル番組を見ると、バブル前の、日本の栄光時代の回想を基にした番組や懐古的な内容
(たとえば「メイドインジャパン」)が多く、日本の未来に向けての「励み」や「挑戦」となるメッセージが
見当たりません。
どうも、ここ10年~20年間は、「自国のアイデンティティ」喪失状態に陥っているようです。
アイデンティティ喪失とは、日本がなんぞやという存在を見失ったためらしい。 
そこで、日本のアイデンティティを見つめなおすために、日本しいては日本人の得意技(強み)を、その原点から考え直してみたい。

日本固有の精神あるいは日本人の魂と言えば、『大和魂』が有名です。
この言葉は、別に軍国主義時代の手垢にまみれた表現としてではなく、素直に原点に戻って解釈した言葉として、です。

紫式部の「才(当時は漢学による学識)を基本にしてこそ、実生活上の知恵・才能(大和魂)が世間で重んじられることも確実でしょう」(『源氏物語』第二十一帖「少女(乙女)」)と言っている意味で、です。

まず、「和心洋才」という言葉を提唱したい。

この場合の「和心」とは、式部の言う、「実生活上の知恵・才能」言い換えれば、実務処理能力(情緒を理解する能力を含む)という意味です。裏返して見れば、平安時代の頃から今日まで、日本人は、諸外国の学問を基にして、和を尊び、実務的に成功を収めてきた歴史があるということです。 

次に「洋才」に移りましょう。さて、式部の言う「才(ざえ=学問)」とは、今日、どんな学問を指すでしょう。
これこそ、漢学による学識でもなければ、米国流のMBAでもない。もっと古い、欧米の教育の原点にある、ギリシャ的な思考方法、
つまり、 critical thinking(クリティカル・シンキング)やdialogue(ダイアログ)を意味します。

実務処理能力(和心)を別の言葉に言い換えれば、
「勤勉さ、真面目さ、思いやり、美意識」となり、日本人の行動規範principleとなるものです。
和心については、蔡焜燦氏が、日本精神として「勤勉で正直で約束を守る」(台湾人と日本精神(リップンチェンシン)―日本人よ胸をはりなさい)を挙げていますが、現在の日本人には、「正直さ」がなくなってしまった。

また、洋才(現代の洋才は、critical thinkingやdialogue)を学ぶには、英語という武器で考えることも大事なことです。
大前研一氏は、実践ビジネス英語(上級)を習得する方法として、1.通常の英語学習(語彙増強など)->2.ロジカル・シンキング(クリティカル・シンキングの一部)による会話->3.EQを挙げています。特に日本人との兼ね合いで、ここで重視すべきは、EQです。

EQとは、「感情学習能力(EI)」のことで、日本人の得意(としている筈の)分野の一部です。
邦訳では、「心の知能指数」といった難解な訳語が当てられていて、逆に理解が難しくなっています。

さて、EQの具体的内容は何なのでしょう。
EQの提唱者ダニエル・ゴールマンによれば、1995年当初は、1.自己省察(自分自身を知ること、自覚)、2.自己統制(自己との対話、感情からの解放)、3.動機(モチベーション、仕事の達成感)、4.共感(エンパシー)と5.社会的スキル(良好な人間関係づくり、ネットワークづくり)となっていましたが、最近(2011年)では、3.の動機がなくなり、EQを次の4要素に整理しています。
1.自己省察、2.自己コントロール(特に感情コントロール)、3.社会性の自覚(共感、他人の感情を理解する)、そして4.良好な社会的関係づくり(思いやり、ポジィティブな感情づくりなど)です。日本人が肌で感じてきた、思いやりや他人への配慮などの感情管理が、ゴールマンの手にかかると、最新の脳心理学や神経科学の成果を基に解明されて行きます。

さて、日本人に不足しているEQの中で、気になる項目があります。
それは、1.の自己省察です。感情(情緒)を的確に把握するには、自分自身についてだけでなく、他人についての「正直さ」が重要だと述べています。正直さは、フランクな態度(率直さ)やオープンな(開放的な)姿勢と同意語です。どうも、昔の日本人にあった、この「正直さ」を取り戻すことで、過度に批判的にならず、非現実的な楽観さにもならない態度を保ちたいものです。

「和心洋才」。

つまり、本来日本に有った、「和心」(わごころ)=勤勉、真面目、思いやりと美意識を心に秘め、クリティカル・シンキングとダイアログ(次回に詳細を)といった「洋才」で武装した上で、グローバル時代に挑戦するのはいかがでしょうか。
もう、日本は、ユニーク(特殊)な国だという思い込みは捨てて、グローバルの荒波へ、危険を賭して乗り出しましょう。

【参 考】 
1.冷泉彰彦氏は、「和魂漢才」→「和魂洋才」のキーワードから、「洋魂和才」を提唱されている。
  from 911/USAレポートby 冷泉 彰彦 「第565回 洋魂和才の時代へ」

2.大前研一直伝、「無敵のビジネス英語」講座

3.Daniel Goleman(2004)What Makes a Leader? Harvard Business Review January 1,
  Daniel Goleman(2006) Emotional Intelligence: 10th Anniversary Edition; Why It Can Matter More Than I.
  ダニエル・ゴールマン(1998) EQこころの知能指数(講談社文庫)
  Daniel Goleman(2011)EQ Mastery, Leadership Excellence, June 2011
  ダニエル・ゴールマンが思いやりを語る(2007年)TED Talk
4.高校生のためのおもしろ歴史教室 32.大和魂について

※上記の写真は、Daniel Golemanの著作の表紙から、伝俵屋宗達「源氏物語図屏風残闕 葵」は、気まぐれ草子から



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