新検査、8月から臨床研究…国立がんセンター
2017年07月24日 11:38
国立がん研究センター(東京都)などは、血液1滴で乳がんなど13種類のがんを早期発見する新しい検査法を開発し、来月から臨床研究を始める。同センターの研究倫理審査委員会が今月中旬、実施を許可した。早ければ3年以内に国に事業化の申請を行う。
一度に複数の種類のがんを早期発見できる検査法はこれまでなく、人間ドックなどに導入されれば、がんによる死亡を減らせる可能性がある。
検査法では、細胞から血液中に分泌される、遺伝子の働きを調節する微小物質「マイクロRNA」を活用する。がん細胞と正常な細胞ではマイクロRNAの種類が異なり、一定期間分解されない。
同センターや検査技術を持つ東レなどは、がん患者ら約4万人の保存血液から、乳房や肺、胃、大腸、食道、肝臓、 膵臓すいぞう など13種類のがんで、それぞれ固有のマイクロRNAを特定した。血液1滴で、がんの「病期(ステージ)」が比較的早い「1期」を含め、すべてのがんで95%以上の確率で診断できた。乳がんは97%だった。
ただ、保存血液ではマイクロRNAが変質している可能性もある。臨床研究では、患者や健康な人約3000人から提供してもらった新しい血液を使う。
乳房や胃、肺、大腸などのがんの早期発見では、エックス線や内視鏡などによる検診が有効とされるが、部位ごとに検査を受ける必要がある。
今回の検査法では、診断の確定に精密検査が必要になるが、同センター研究所の落谷孝広分野長は「いくつものがん検診を受けなくて済む。いずれは、がんのステージや特徴も分かるようになるだろう」と話している。
黒田雅彦・東京医科大主任教授(分子病理学)の話「欧米でもマイクロRNAを使った病気の早期発見を目指す研究が盛んだが、今回ほど多数の患者で解析した例はなく、非常に有用だ」