木村長人(きむらながと)。皆さんとつくる地域の政治。

1964年(昭和39年)千葉生まれ。元江戸川区議(4期)。無所属。

被ばくと子どもへの影響 (福士政広氏の講演 その2)

2011-09-19 03:15:04 | 地方自治
 福士氏による60分超の話はグラフや表を駆使した専門的内容も多く、多岐にわたっておりましたので、私の解釈でポイントだと思われる部分について文字に抽出し、抄録の形で綴ってみたいと思います。(資料として、われわれには同氏が準備してくれたパワーポイントのスライドを印刷したものが提供されましたが、著作権がありますので、ここにそのまま掲載することはできません。)

 以下、「●」で綴っている部分は福士氏の話。また、私からのちょっとしたコメントについては「⇒」で挿入しています。多少、長いコメントの場合には、改行をしています。

●放射線は目に見えず、耳に聞こえず、味も臭いも感触もなく、五感に感じない。

●「全てのものは毒である。毒でないものは存在しない。毒になるか薬になるかは正しい量であるかどうかで分かれる」(16世紀 パラケルスス)

●放射線の種類には、X線、α線、β-線、β+線、γ線、中性子線、電子線、陽子線、宇宙線などがあり、それらは電磁放射線、電荷を持った粒子線、電荷を持たない粒子線に分けられる。放射線をめぐる物質の吸収線量の単位をグレイ(Gy)といい、人体の線量当量をシーベルト(Sv)という。

●U-235(ウラン235)の核分裂生成物には、ヨウ素131、セシウム134、137、・・・などがある。

●放射性物質が大気中にでると雲のようになって流れる。これを放射性雲(放射性プルーム)という。また、地上に落ちていくそれらを放射性降下物(フォールアウト)という。

●自然界に存在する放射性物質であるウラン、トリウム、カリウムの化学図をみると、全国の分布や物質の濃淡が分かる。また、計算で求めたセシウムの自然放射線量を見ると、日本では西高東低になっているという傾向が一目瞭然で分かる。フォッサマグナを境に、東日本、北日本では放射線は低く、中部地方より西側に放射線が高い地域が多い。

●東京都内での自然放射線の分布をみると、奥多摩市、桧原村をはじめとした西部ほど高く、葛飾区や江戸川区をはじめとした23区の城東区部ほど低い。

●放射線の人体への影響は確定的影響と確率的影響に分けることができる。多量の放射線を一度に浴びた時には何らかの症状が現れる。その閾値(しきいち)を超えた時に現れる症状を確定的影響という。また、低線量の慢性的な被ばくなどで、損傷を受けた遺伝子が回復せずに増殖し、何年も後にがんとして症状が出ることがあり、これを確率的影響という。確率的な症状なので、何の症状も出ない人もいる。確率的影響の閾値ははっきりとは分かっていないので、低線量下でのがんの発生率は受けた線量に比例すると仮定されている。

⇒最後の仮定は「直線閾値なし仮説」のことです。後でまた詳しく出てきます。

 それから、もう勉強をされ、ご存じの方も多いと思いますが、確定的影響と確率的影響は放射線防護では必須の知識であると、ものの本にも書かれています。特に低線量下でのリスクを指す確率的影響は今の私たちが一番気にすべき事項の一つです。確率的影響としてはガンと遺伝的影響が典型例です。確定的影響については非確率的影響と呼ばれることもあるようで、皮膚障害や奇形などの例があるといいます。

●致死量とされる10グレイの放射線は体温を何度上昇させるエネルギーに相当するか。計算すると、10グレイ≒2.39×10-3Cal/gとなる。熱エネルギー的にみると、わずか2/1000℃の体温上昇にすぎず、実際には、熱くも痒くもない。

●米国デンバーの事例における、自然放射線と白血病の発生率の調査からは、高い放射線と白血病発生率の間には因果関係が認められない。

⇒資料にはグラフが掲載されていました。白血病に限らず、その他のさまざまな症例についても知りたいところです。

●チェルノブイリ原発事故によって汚染されたゴメリ(ベラルーシ)における4年間にわたる低線量被ばくと小児白血病のリスクに関する調査の結果については次のようになる。ちなみに、ゴメリにおける人の平均被ばく総量は50ミリシーベルトと推定される。ゴメリにおける小児白血病の年間発生率は、国際放射線防護委員会ICRPの直線閾値なし仮説の防護論に反し、事故後も倍増はせず、事故以前と同水準で推移した(1982年から1994年までの13年間の推移に着目した場合)。1平方メートルあたり50万ベクレルという高濃度のセシウム137によって被ばくしても、小児白血病は増加しないという確証が得られた。しかし、調査のグラフには年度による増減の変化があり、85年から86年、93年から94年のように白血病の増加している時期もあれば、一方で84年から85年、92年から93年のように減少している時期もあり、恣意的に異なった結論を導き出しやすい調査結果となっている。

⇒この調査結果については大いに議論と疑問があがるところでしょう。感情と偏見に基づいて、この結果を拒否するようなことはしませんが(たぶん、この調査も有効な実証データだろうと思います)、だからと言って、「はい、そうですか。被ばくと白血病には何の関係もないのですね。」と無邪気に受け入れる気にもなれません。

 そもそも、チェルノブイリ後にしばしば報道されていたウクライナの白血病に苦しむ子どもたちの映像はなんだったのでしょうか。ゴメリ調査の対象数は40万人とのことですが、この疫学調査の実施条件などの背後などについて詳しく調べてみないとなかなか納得しにくいものがあります。少なくとも、パワーポイントのスライド1枚では十分に納得はできませんでした。

●原爆による被爆者の調査結果からは、100ミリシーベルト以上の被爆では白血病の死亡率が明らかに上昇しているが、それ以下の線量の被爆では定かな因果関係が認められない。

●子どもは増殖細胞や未分化な幹細胞が多く、これらの細胞は放射線の影響を受けやすい。それゆえ、子どもを放射線から守る必要がある。

⇒そのとおりだと思います。

●しかし、一方で、子どもは新陳代謝がよいため、体内に入った放射性物質が排泄されていく期間は大人よりも短い。例えば、体内に取り込まれたセシウムの体内における半減期は、子どもは30日であるのに対し、大人は90日もかかる。

⇒子どもと大人における、同量の内服薬の排出期間の違いはよく知られています。上の指摘はその通りかもしれません。とすると、内部被ばくに関する限り、子どもは細胞が傷つきやすい反面、食した物質を早く排出もするということで、その影響の度合いは大人と大差ないということでしょうか? 福士氏はそこまでは述べていませんでした。実際に、実験など到底できる事象ではありませんから、この比較調査に関する実証データは乏しいのではないかと推測します。

●外部被ばくについては、子どもの方が大人よりも危険である。

⇒これも納得できます。吸引による被ばくも同じく子どもの方が危険なはずです。胃腸などの消化器官と違い、肺に取り込まれれば、排出できませんから。



(今日はここまでですが、まだ大事な話は続きます。明日、続きをアップする予定です。)