木村長人(きむらながと)。皆さんとつくる地域の政治。

1964年(昭和39年)千葉生まれ。元江戸川区議(4期)。無所属。

学校給食をめぐる対応の改善を(9月30日一般質問 その3)

2011-10-03 00:29:36 | 地方自治
 一般質問の続きです。今日で最後です。内容はすべて教育委員会に向けられたもので、学校給食の対応改善にをめぐり、①サンプリング調査の実施、②食材の産地表示、③弁当、水筒の持ち込みの許可などの点について尋ねました。

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(以下、一般質問)

 次に、教育委員会にお尋ねします。

 放射性物質の拡散による、牛肉をはじめとした食品の汚染が判明して以来、大人よりその健康リスクが2~3倍高いと言われる子どもたちが食べることになる学校給食のあり方をめぐって、保護者から大きな不安の声とともに、仕組みの改善を求める声があがっています。放射性セシウムに汚染された稲わらを食べていないとみられる牛の肉からも、8月に放射性物質が検出されたことは、その不安を具体的なものとしました。個体識別番号の確認だけで食品提供の安全性はコントロールできるとしてきた国の理屈には明らかなほころびが生じました。学校に子どもたちを通わせる保護者が不安を増大させたとしても無理はないと言えます。子どもたちの命を差し出すことはできないという保護者の立場を考えれば、理屈以前に、親としてごく自然な改善の欲求であると言えます。

 以下、学校給食をめぐる三つの点についてお尋ねします。

 第一に、給食食材のサンプリング調査についてです。生産地において危険な食材がないかどうか検査するというのが現在の国の食品検査の基本です。この仕組みの基本構造を否定するものではありません。しかし、現行の仕組みでは、放射性物質の汚染に関する限り、十分にカバーしきれていないのも事実であり、結果的に、消費者に近い立場にある自治体側が対応を迫られる事態になっています。まず、生産都道府県による検査という現行の国の食品検査体制にほころびが見られる状況下では、消費者側でもある各学校が調理前に食材のサンプリング調査を行うべきと考えますが、いかがでしょうか。杉並区、市川市、宇都宮市など、独自検査に乗り出している自治体が少なくありません。

 一日およそ千種ある食材全てを検査せよとは申しません。それは不可能に近いことです。できるところからでよいと思います。文科省も都道府県が給食食材の線量検査機器を購入する際に、その経費の半額程度を助成する方針を決めたといいます。また、国の食品検査だけでは消費者の信頼をかちとれないとし、民間では大手牛肉チェーン店、焼肉チェーン店、大手スーパー各社が独自の食品検査実施を開始しています。こうした現状も考慮し、サンプリング調査に対する教育長の考えをお聞かせください。

 第二に、食材の安全性および信頼性確保と保護者の心理的不安を軽減する意味でも、食材の産地表示を徹底し、詳細をホームページなどで提供するという対応についてです。すでに、9月5日から瑞江小学校では朝9時半にその日の給食食材を学校の掲示板に表示する対応が開始されました。大変大きな前進ではありますが、これは学校単独の対応であって、区内小中学校全体の対応ではありません。給食への信頼性確保と保護者の不安解消のため、教育委員会のイニシアチブにおいて食材の産地表示を推進して頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。考えをお聞かせください。

 最後に、弁当や水筒の持ち込みについてです。現在、区内小中学校においては給食食材のサンプリング調査も食材の産地表示も統一的には実施されていません。しかし一方で、現行の食品検査にも問題があります。もちろん、食品検査はまちのスーパーマーケットに出回っている食材に対しても同じ仕組みが適用されています。「弁当を自宅で作っても、結局は同じじゃないか」という声があります。しかし、ここには大きな見落としがあります。

 まちのスーパーマーケットではほぼすべてに産地表示がなされています。これは放射能問題以前から、輸入食材の残留農薬問題に対する消費者の不安にこたえるためなどの理由から、実施されてきました。産地表示がなされていれば、消費者は少なくとも食材の選択が可能であり、不安なものは自分の判断で避けることができます。給食が教育の一環として取り入れられていることは承知していますが、危険性が疑われる汚染食材を食べることは教育にふさわしいとは言えません。

 現在、ほころびの見られる国の食品検査の下、市場の民間業者の間では消費者の要望にこたえるため、独自のサンプリング検査を実施し、また産地表示することが広まっています。しかし、江戸川区の給食では統一的にそのどちらも実施されていません。食材の選択が可能で、透明性の確保されている、自宅で作った弁当と、サンプリング調査も産地表示もされない給食とでは、ここに大きな違いがあります。

 次に、水筒についてです。現在は、熱中症対策という位置づけもあり、水筒持ち込みの要望が個別にあれば、学校ごとの判断で認めていると聞きます。しかし、これも決して統一的な対応ではありません。3月の、放射性ヨウ素検出の発表以来、今のところ都内の水の汚染は確認されていません。私自身も東京都の水には不安は持っておりませんので、そのまま利用しています。しかし、子どもに飲ませることに不安を感じる方もいます。そうであれば、選択権の一つとして持ち込みを希望する子どもたちのため、統一的に水筒持参を認めても、水行政の大義が崩れるとは思いません。

 国の食品検査の改善を今日明日のうちに見込むことは困難です。また、区ではサンプリング調査も産地表示も実施していません。そうであれば、少なくとも、子どもたちの選択権と健康に生きる権利を確保するためにも、弁当や水筒の持ち込みは緊急避難的に認めるべきと考えます。教育長の考えをお聞かせください。

(以上)
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(以下、教育長の答弁抄録)

 全小中学校あわせて一日の給食食材は約千種類ある。それらを昼までに調理しなければならない。また、それら全ての食材の放射能汚染を調査することはできない。できたとしてもごく限られた量のサンプリング調査になってしまうだろう。現実には難しいと考える。サンプリング調査は考えていない。

 民間のスーパーマーケットのようなところで産地表示することの意味は分かる。消費者は産地表示を見て、食材の選択ができる。しかし、給食で産地表示をしても、調理するものを子どもたちが選別できるという次元の話にはならない。学校が仕入れの段階で安全な食材を購入しているので、産地表示の必要はないと考える。

 学校給食の安全性をめぐって、保護者の方々の間に大きな不安があることは理解している。栄養士をはじめ学校側も努力をしながら安全な給食の提供に努めている中、このまま相互に不信感が募っていくとしたら、大変不幸な話である。そのことを危惧しなければならない。これまでも安全な給食ということで提供してきていることには変わりはないが、弁当や水筒の持ち込みについては多少、柔軟に対応していくことを考えたい。
 
(以上)
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 昨日、一昨日も申し上げました通り、私の記憶に頼ったメモですので、教育長答弁の言葉一つ一つが絶対的に正確だとは言い切れません。(これは正式な議事録ではありませんし。)ですが、だいたいこういった趣旨の答弁だったと思います。その上での、以下のコメントです。

 食材のサンプリング調査については、毎日、千種の食材すべてを午前中に検査することはそもそも要望していません。わざわざ「それは不可能に近いこと」とまでことわっています。だから、「できるところからでよいと思います。」と最初の質問で申し上げたのです。例えば、NaIシンチレーションサーベイメータを2、3個購入して、本当に限られた校数と種類数になると思いますが、できるところからの検査でもよいと思うのです。そして機器の数は限られているので、あとは各校を巡回して検査すればいいのです。科学的に安全性を証明する方法としては、決して効率的とは言えないかもしれません。しかし、学校側が巡回でサンプリング調査を実施するだけでも、保護者の不安感除去に寄与する効果は大きいと思います。

 それから、NaIシンチレーションサーベイメータは約50万円くらいから入手できます。食材の放射能汚染を測るため機会は、なにも、都道府県が持っている何千万円もするような危機ばかりではありません。

 産地表示については、確かに、教育長の説くように、給食食材の産地表示の実施によってその食材を選別することについては、スーパーマーケットにおけるそのような場合よりも効果は薄いかもしれません。給食はそもそも残すことは前提にしてもいません。しかし、汚染が疑われる食材がすでに提供されてきたという事実があります。その点を指摘しているのです。○×産の肉と事前に分かれば、食べる食べないの選択ができるようになります。汚染食材が混入しているかもしれないという緊急事態下においては、給食を残す、残さないの問題以前に、食材の情報をできるだけ提供し、選択権を区民に保障しておくことが優先されるべきだと思います。

 また、放射線問題がなかったとしても、食育の観点からは産地表示はぜひ実施していくべき事項であると考えます。というのは、食材の産地表示をすることで食材と生産者、生産地について子どもたちが学習する機会が増大することが期待されるからです。(注1)

 9月30日の私の一般質問の中で、最後に取り上げた弁当と水筒の持ち込み許可の議論が、唯一、行政側とかみあったものと言えそうです。もっとも、私は、国の食品検査に不備があり、区はサンプリング調査も産地表示も実施していないので、子どもたちの選択権と健康権を確保するために弁当・水筒の持ち込みを認めるべきだと申し上げました。しかし、教育長は直接それには触れていなかったと思います。

 そうではなく、教育長は、給食に不安感を募らせる保護者側と安全な給食の提供に努力している学校側との間に不信感が募ることに危機感を抱き、弁当・水筒の持ち込みについて弾力的に考えたいという話でした。弁当・水筒の持ち込みを認めるにいたった背景は微妙に違うようですので、複雑な気もいたしますが、ともあれ、弁当・水筒の持ち込みを認める方向性を答弁で示してくれた教育長には感謝したいと思います。結果的には、子どもたちがどちらかを選ぶという選択権は確保されたことになるのですから。

 以上、9月30日の一般質問について、3回にわたって報告してまいりました。


(注1)学校給食法第2条「学校給食の目的」の第1項の6に次のようにあります。「我が国や各地域の優れた伝統的な食文化についての理解を深めること。」と。産地表示はこの学習目標に近づくために役立つと思います。




江戸川区議会議員 木村ながと
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