ヒマジンの独白録(美術、読書、写真、ときには錯覚)

田舎オジサンの書くブログです。様々な分野で目に付いた事柄を書いていこうと思っています。

「鑑定士と顔のない依頼人」を観る。

2017年05月07日 10時53分40秒 | 映画
ジュゼッペ・トルナトーレが制作する映画には二つの路線があります。

今日話題にする「鑑定士と顔のない依頼人」のようなミステリー仕立ての物語がひとつの路線です。
この路線のものには本作品以外には「ある天文学者の恋文」があります。ともに、ラブ・ミステリーとも言うべきジャンルです。
もう一つの路線は「ニュー・シネマ・パラダイス」に代表される路線です。この路線に連なるものとしては、「マレーナ」、「海の上のピアニスト」などがあげられると思います。

「鑑定士と顔のない依頼人」は老練な美術鑑定人がある依頼人より親の残した家具などの美術的価値のある遺品の処分をたのまれる、というお話です。たぐいまれなる審美眼の持ち主の鑑定人は美術の業界では有名なオークッショニアでもあったのです。彼自身も美人画のコレクションを多数秘蔵していました。

さて、不思議なことに頼んだ依頼人の女は、鑑定士に顔を合わせることをしないのです。
電話による依頼と部屋の扉越しの会話だけが鑑定士と依頼人とのコミニュケーションなのです。
このことを不思議に思った鑑定士は、屋敷を退出する振りをして依頼人の正体を見ようとします。
そして彼は依頼人が美しい若い女性である事を知ってしまうのです。
これからストーリーは思わぬ方向へと進行します。
老練な鑑定人はその美貌の女性に惹かれて行き、そうしてついには恋仲になってゆき、一緒に暮らすようになります。

鑑定士のオールドマンが最後の仕事でロンドンに行ってる間に、衝撃的な出来事が起こるのですが、これに関してはネタバレになってしまいますのでここでは明らかにしません。その場面を一つだけお見せしましょう。これです。


興味を持たれた方はDVDなどを観るとよいでしょう。

この映画で気になった事を一つ。
トルナトーレがこの映画で描く男女間のつながりに注目したいと思います。
この映画での主人公は老練な鑑定士と若い美貌の女性です。
以前観た「ある天文学者の恋文」では死期の迫った初老の天文学者とその教え子の若い女性が主人公でした。
また、、「マレーナ」では美貌の人妻を慕う少年から見た彼女の半生がモチーフでした。
「ニュー・シネマ・パラダイス」では老映写技師と映画好きの少年が登場しています。

トルナトーレの映画には「歳の離れた人の間の交流」が描かれたものが多いのに気が付きました。
彼の撮る映画は時にはミステリー、そしてまた別の路線の映画ではシリアスな内容なのですが、いずれの作品でも「歳の離れた人の間の交流」が映画の通底にあるような気がしています。

それがどうしてそうなのかの結論はここでは述べません。トルナトーレの他の作品もじっくり観たうえで考えてみたいと思います。

トルナトーレが映画の中で顔のない依頼人クレアに語らせた鑑定人の言葉が気になりました。
これです。


結末を知ってしまった私からすれば、この言葉は「うーん?」とうなってしまうところです。















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